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かわいいコンニャク作り

こんにゃくは、はっきりいって地味だ。美味しいし大好きなのだが、食材としての派手さはほぼ皆無である。おでん、田楽、煮物、汁の具。料理に関わらずひっそりとそこにいるこんにゃく。

そんな素朴なところが良いといえばそうなのだが、もう少し派手にしてあげることはできないだろうか。

先日、こんにゃくの産地秩父を訪れた際(特集「こんにゃく旅行、秩父へ」)、こんにゃくの専門店で手作りこんにゃくキットというものを買ってきた。これを使って、かわいいこんにゃく作りにチャレンジしたい!

(text by 古賀及子

まさかこんにゃくが自分で作れるとは

こんにゃくはこんにゃく芋からできている。それは分かっているのだが、あのプルプルした弾力性物質の原料がなんでまた芋なのか、その仕組みはさっぱり分からない。

仕組みがわからなければ、作り方もまるで分からず、まさか手作りできるような代物だとは思っても見なかった。

買ってきたこんにゃく手作りキット

こんにゃく専門店で手作りキットを見つけたとき、だからその中身が粉なので驚いた。「これ、粉じゃん! 芋じゃないじゃん!」と思ったのだ。

よく読むと、キットに入っている粉は精粉と石灰の2種類。この精粉の方がこんにゃく芋を粉にしたもののことなんだそう。やっぱり芋なんだ。なるほど。だが、そうなると気になるのはもう一方。石灰。石灰ってあなた、校庭にドッチボールのコート書いたりするあれじゃないか。

説明書のイラストがやけにこ慣れた筆致

大まかに言うと、こんにゃくはこんにゃく芋(粉)に水を加えて練り、それを石灰で凝固させたのち石灰を抜いたものらしい。またアクロバティックな製法である。最初に考えた人は一体何がそうさせたんだろうという工夫ぶり。

こんにゃくの新しい一面に触れ驚かされつつ、それでは製作していきましょう。今回は最終的に「かわいいこんにゃく」を作るのが目的だが、まずは普通に行程を追っていく。


ぬるま湯に精粉を投入。粉100gに対して水3.5リットル。うっかりいっぺんに作ることにしたが、余りの大量にひるむ

最初、粉は何の気配もなくサラっと水に混ざる が、混ぜ始めるとおもしろいようにどんどんとろみが

糊状になったら40分ぐらい休ませる 休ませている間に石灰を水にといておく 40分後。かなり固まった。

ここで石灰投入。説明書によると「全体的にキョロキョロしてきますが、構わず混ぜてください」とある。キョロキョロってなんだ。こんにゃく業界用語?

とにかく大量なので木べらではうまく混ざらない「手でもみ込むようにしてもよい」という説明書にしたがい、手、突っ込む。確かに「キョロキョロ」した手触り

きっちり混ぜたら型にうつす。バットが1台しかなかったので家中の鍋という鍋を型代わりにした

かわいいこんにゃく作戦

上記の作業のあと15分ほどでこんにゃくは固まった。もそっとしたテクスチャがツルツルのプリプリになっている。ここいらから、本日の肝、こんにゃくを可愛くする作戦を決行していきたい。

なお、石灰を本体に混ぜたあたりで強烈なこんにゃくのにおいがあたりを包み、後の作業はすべてあのこんにゃくのにおいをかぎながら行われた。たちこめるにおいのなかで、いかに私はこんにゃくを可愛くしたのか。ご覧ください。

こんにゃくを可愛くするグッズ

今回、可愛くするために以上のような道具を用意した。シャーベットを作るための型、クッキーを抜くための型、また、生地に目をつけて顔みたいにしてみたらどうかと豆も用意した。お菓子を作るテンションでこんにゃくを作ろうという魂胆だ。


型に流す前に玉こんにゃくの要領でハート形に

ちょっといびつになりつつも型取り成功! 小さいハートも作ったぜ

バットに平べったく整形した生地は型抜き こちらは豆を埋めて固めたもの。顔……

他にもジンジャーマンクッキーの型などを使い可愛いこんにゃくを量産した。のだが、これ、どうでしょうか。可愛くなっておりますでしょうか。

何しろあたりがこんにゃくのにおいに包まれているので、可愛く作っていても気分が可愛くならないのだ。作ったものが可愛いのかもよくわからない。

ああ、もういい。とにかく最後まで作ろう。あとは茹でて灰汁を抜くだけだ。


ゆだるファンシーこんにゃく ちなみにこのこんにゃくキット、テレフォンサポートつき。煮時間について質問したら事務所の方が出て丁寧に対応してくれました

そうして煮ること40分。ついに手作りの可愛いこんにゃくが完成した。

どん

どうでしょう。かわいいこんにゃくたち。一見これがこんにゃくだとは思わないのではないか。しかし、手に取るとプルプルして、それ以前に匂いで明らかにこんにゃくであることがわかるのだ。

一部想定外だったのは、ゆでることで埋めた豆がとれたり膨らんで形が一層ぶさいくになってしまったこと。けれどそれすらも子供のお菓子作りだと思うと余計可愛く感じられませんか。ねえ、ねえってば。


普通の玉こんにゃくの味噌がけのようですが 一つ一つはハート形なんですの。きゅーん

可愛いというか、ウマい

と、まあ今回のテーマである可愛いこんにゃく云々について語ってみたが、実は本当にいいたいことは別にある。

手作りこんにゃく、すごい美味しいよ!

そうなのだ。茹でたて、あつあつのこんにゃくの美味しいこと。先日秩父で食べたこんにゃくを思い出すほどのできばえであった。コリコリ、サクサクだ。

小さく整形したハートのこんにゃくより、大きい顔のこんにゃくの方が美味しかった

可愛いこんにゃくという可能性を探る、それがテーマの今回だったが、その前にこんにゃく製作時は非常に強い匂いがするということ、また作り立てのこんにゃくは非常に美味しいということがビッグインパクトとして残った結果となった。

なお、今回は精粉だけを使ったため色が白くなっております。生芋を使ったり海藻を混ぜると例の灰色のこんにゃくになるそう。それで可愛い形にしたら「こんにゃくがまさか可愛い!」という感動もより大きいかもしれない。

今度はワンランクアップ、生芋からのこんにゃく作りにも挑んでみたい。可愛いとか、可愛くないとかじゃなく、本心から普通に作ってみたいです。もう本当、自分がここまでこんにゃくのこと好きになるなんて思ってもみなかったよ。

豆がとれちゃった顔。高瀬さん作の呪いのZくんに通じるものが
 

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