川崎市内を南北につなぐ尻手黒川道路沿い、東名川崎インターの近くでは次の様な光景を目にする事が出来る。
車のスピードが速くて確認しずらいが、駐車場の誘導員が踊っているのだ。
何で?
以前からずっと気にかかっていたので、踊る誘導員のいるパチンコ店「吉兆東名川崎店」に問い合わせてみた。
(text by 住 正徳)
ーー「そちらの駐車場で踊ってる人がいると思うんですけど」 吉兆「ええ。踊ってますね」 ーー「いつも踊ってるんでしょうか?」 吉兆「ええ。毎日踊ってます」 ーー「何でですか?」 吉兆「詳しい事は警備会社の方に問い合わせてください」
駐車場の警備は別会社に委託しているという。踊っているのは吉兆の店員さんではないのだ。
警備会社の担当者をご紹介いただき、実際に現場で踊りを見ながらお話を伺った。対応してくれたのは、株式会社エスピーユニオン・ジャパン、営業本部の村山さんだ。
「私たちは、警備の仕事を請け負っているというよりも、お客様が買い物を楽しんでいただく為のお手伝いをしているという認識なんです。もちろん警備員の資格を持ってやってはいますが」 と村山さん。
名刺には「お客様に徹底的にお買い物をお楽しみ頂く、異空間創りのパイオニア」とある。
駐車場の誘導をエンターテインしている、という事だろうか。都内近郊では、ここ「吉兆東名川崎店」以外にも10カ所ほどで踊る誘導をしているという。
村山さん「踊ってるスタッフがいかに自分を楽しめるか。そこが重要で、その事が結果的にお客様を楽しませる事につながるものと信じています」
村山さん「大きな量販店などでは、店内に入ると丁寧な対応だけど、駐車場ではぞんざいな扱いを受ける事が多いと思うんです。それはおかしいんじゃないか、そこがこの踊りの始まりです。駐車場から丁寧に接したい、そう思っています」
確かに、ここまで丁寧に愛想良く誘導してくれる駐車場はそうそうない。
踊りにマニュアルはなく、個人の気持ちに任せているとか。その為、踊り方も人によって全然違う。以前ここで踊る誘導員を見かけた時は、男性スタッフがユーロビート風な踊りを繰り出していた。
この日踊っていた男性スタッフの澤村さんから話を聞いた。
ーー「その踊りは、何かお手本みたいなものがあるんですか?」 澤村さん「いいえ、自己流です」 ーー「踊りながら音楽を思い浮かべたり、してますか?」 澤村さん「いえ、そういう事はしてませんね」 ーー「気持ちいいですか?」 澤村さん「ええ、それはもう」
少し照れながら僕の質問に答えてくれた澤村さん。 踊っていない時は、とてもシャイだった。
パチンコに負けてイライラしているお客さんから怒られた事はないのだろうか? 村山さんに聞いてみた。
「今までにそういったトラブルはないです。皆さん本当に楽しんでくれてるのだと思います」
ダンスは人をハッピーにさせる。 踊り続ける二人を見ていて、今度機会があったら踊りながら車を誘導してみたい、そんな風に思った訳です。
取材協力
吉兆東名川崎店 https://www.kiccho.co.jp/tenpo/toumei.html
株式会社エスピーユニオン・ジャパン https://www.spujapan.com/