「VIP=Very Important Person」。政府の要人だったり貴族だったり、とにかく凄く偉いので特別待遇を受ける人物。
今回は、そんなVIP気分を味わってみようと思います。設定は、「石油の出る国の要人が東京にやって来た」という事でよろしくお願いします。
(text by 住 正徳)
VIPと言われてまず思い浮かぶのは、あの赤絨毯ではないだろうか。赤絨毯の上を颯爽と歩くVery Important Person。その姿はまさしくVIPといえよう。
そんなVIP気分を味わう為に、色々な所で赤絨毯の上を歩いてみようと考え、幅90センチ、長さ4メートルの赤絨毯を調達した。
本当は本格的な赤絨毯が欲しかったのだが、それは1メートル2万円近くもする。VIP気分を味わう為だけに8万円も出せないので、メートル980円のフエルト生地で代用する事にした。
スーッと転がして敷ける様に、赤絨毯のエンド部分に固めの芯を取り付けた。これなら芯の重みがうまく作用して、路上でもまっすぐに敷く事が出来る。
で、まずはタクシーだ。普段は何となく慌ただしくタクシーから降りる事が多いのだが、今日の僕は「石油の出る国の要人」。後ろで待っている車の事など気にせずに、ゆったりと降りて赤絨毯の上を歩いてみせよう。
頭の中で『威風堂々』を流しつつ颯爽と歩いたつもりだが、こうして写真を見るとその猫背っぷりにビックリだ。石油の出る国の要人からは程遠い。
まあ、赤絨毯の上を歩くのはこれが初めてな訳で、ハナから威風堂々と行くのは難しい。とりあえず街に出て色々な所で赤絨毯を敷き、その感覚に慣れていこうと思う。
駄目だ。覇気がない。 やはり、赤絨毯の上を歩くのは気が引けるのだ。気が引ける分、態度が小さくなり猫背に磨きがかかってしまう。
もうちょっと試します。
という写真を撮っていたら、駅員さんが飛んで来た。
駅員「ちょっと! 何やってんの?」 要人「あ、あの、VIPがトイレに、って設定で、その、写真を…」 駅員「????」 要人「いえ、すみません。すぐに撤収します」
トイレの前で赤絨毯を素早く巻き上げながら、この姿はVIPとは対極だって事に気付いた。
赤絨毯の上を歩く、という事だけにVIP気分を求めてみたが、そこにはいくつかの間違いがあった。
・VIPは自ら赤絨毯を敷かない。 ・VIPは自ら赤絨毯を巻き上げない。 ・VIPは駅員さんから怒られない。
と、そう簡単にはVIP気分は味わえない、って事で。 ごきげんよう、さようなら。