リカちゃん人形マニアから「聖地」と崇められるお城が福島県に存在する。
その名も「リカちゃんキャッスル」。
人形を実際に作っている工程を見学できたり、レア物のリカちゃんが陳列してあったりと、それはもう夢のような楽園であるらしい。
ぼくはリカちゃん人形にまったく思い入れがないのだが、「聖地」を巡るのは大好きである。なんだか妙なエネルギーをもらえるような気がするから。
そこで今回は 福島県の小野新町にある、リカちゃんキャッスルを巡礼してまいりました。もうリカちゃんだらけ。前回紹介した蕪島のウミネコに勝るとも劣らない繁殖ぶりでありまして。
めくるめくリカちゃんワールドを、とくとご覧あれ。
(text by ステッグマイヤー名倉)
JR郡山駅から列車に揺られること50分、最寄り駅である小野新町に到着する。
あたり一面に広がる畑、点在する民家。ぽかぽか陽気のほがらかさも手伝って、なんとも牧歌的な気分になってくる。
こんな長閑な片田舎に、本当に「聖地」が存在するんだろうか…。少々不安を覚えつつ足をすすめる。
地図のとおりに10分ほど歩いていたら、突然こんなものが目に飛び込んできたのでした。
こ、これがリカちゃんの聖地ですか!? ううむ、どう見てもラブホにしか思えないのだけれど……。
ぼくのような三十過ぎの男が足を踏み入れるのはどうも抵抗があるけれど、とにかく入ってみることにしよう。
いよいよキャッスル内部に侵入
受付でチケットを購入して、キャッスル内部へと足をすすめる。
まわりは親子連ればかりで、ぼくのような者は明らかに浮いている。こういうのに慣れきって感覚が麻痺している自分が最近ちょっと不安である。
それはさておき。中に入ると、まずは製造工場の見学である。
工場は周囲がすべてガラス張りになっていて、客は自由に眺めることができる。
工程は完全分業制になっていて、「目の黒い部分を描く人」「目の白い部分を描く人」「唇を描く人」という風に、細かく担当が決まっている。
そしてガラスにはハエがとまってました。
では次に、製造工程を紹介します。
金属の型にゾル(どろどろに溶けたビニール樹脂)を流し入れて高温で熱すると、人形のかたちに固まる。
これを冷やして取り出せば、ごらんのようなパーツが完成する。
顔にマスクを被せて、「白目」「ひとみ」「眉毛・睫毛」「黒目」の順番に、塗料を吹き付けていく。
さらに注射器を使って、目にハイライトの「星」を入れて、リカちゃん顔の出来上がり。
特別なミシンを使って、化学繊維製の毛を植えつけていく。
さらに高温で毛髪にくせをつけ、ハサミで前髪をカットして頭部の完成。
胴体に四肢を組み込んだうえで、胸と背中を超音波で接着してボディが完成。
さらにボディと頭部をジョイントすれば、リカちゃん人形の出来上がり。
さらに展示ブースへと巡礼を進めると、「これでもか!」「もう参りました!」という位にいろんなリカちゃんがズラッと並べられていたのでした。
プレミアものの貴重品はもちろん、マリーアントワネット・リカちゃん、人魚リカちゃん、熊リカちゃん、歌舞伎リカちゃん、etc, etc...。
この調子でいくと、そのうち「小泉純一郎リカちゃん」とか「妻夫木聡リカちゃん」とかが登場するかもしれませんな。
プレイコーナーでは、生身のリカちゃん(?)が愛嬌をふりまいていた。
見ればチビッコたちが、リカちゃんと手をつないだり、一緒に写真を撮ったりしているではないですか。いいなァ…。
というわけで小生も、当たり前のようにリカちゃんの横に並び、グッと手を握りしめて記念撮影してもらったのでした。
あとから写真を確認したら、予想以上のヤバい雰囲気に自分でも唖然。
ちなみに、リカちゃんの着ぐるみは目が見えない仕様のようだった(右下の写真参照)。いきなりデカい手で握りしめられて、さぞビックリしたことでしょう。すみません。
とくに念願でもないのにリカちゃんと握手までできたので、すっかり満足して帰途についていたところ。
ちょうど新郎&新婦に通りすがったので、ついでに記念撮影させてもらいました。
いったい何をやってるのか、自分でもよく分かりませんが。
何の疑問も抱かず撮影に応じてくださった新婚さん、ありがとうございます。
というわけでリカちゃんキャッスル、いかがだったでしょうか?
門外漢のぼくには、いろんなリカちゃんの違いがちっとも分からず、歯がゆい思いをしながら見物していたわけですが。
リカちゃんマニヤの皆さんにとっては、きっとすごいお宝グッズたちだったんだろうなあ、辛抱たまらない興奮があったんだろうなあと想像すると、なんだか悔しい気持ちになってくるのでした。
マニヤになるということは、楽しみの引き出しがひとつ増えることなのかもしれませんな。