デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

コネタ


コネタ556
 
ぶらさがって背をのばせ
ツタのからまるぶらさがりマシン

私事だが。
桜吹雪があばれまくって女子中学生のスカートをヒヤリとさせる大安吉日。
息子のオンが、晴れて中学生になった。

中学生の彼も、あいかわらずハ虫類とプロレスが好きで、タコとイカの絵しか描かず、スキをみてはハダカになっている。
これでは10年前と変わらないではないか。
せめて身長だけでもデカくなって、成長ぶりを見せつけて欲しいと思うのが親ゴコロ。

しかし、どこを探しても残念ながら我が家に「ぶらさがり健康機」は見当たらない。そういえば見た事もないような気がする。
しかたないので町にくりだし、いろんなところにぶらさがることにしました。

(text by 土屋 遊

なぜ、ぶらさがるのか。

ぶらさがり健康法が身長を伸ばす事に効果があるという事は、私の同級生たちが見事に証明している。

「チョンボ」に「シンペイちゃん」に「マメチョビ」(みんなアダナです)。
中学時代、私よりずっと小さかった彼らは、今では見上げるほど大きくなって180cm以上。
どうやらその秘訣は牛乳ガブ飲みでもシークレットブーツでもなく、ぶらさがりであると小耳にはさんだ。
商店街で会うと、あいかわらず

「あっ!マメチョビ!」

などと叫ばれる彼らは少々気の毒ではあるものの、立ち話をしながら私を見下ろすその自信に満ち満ちた視線を、私は「どーだビーム」と名付けることにした。
あるいはぶらさがりビーム。

 

家内測定
注:のぞきではありません
知人の医師の塀には防犯カメラがあった
桜は散っても背は伸びる

食い物で息子を釣る

ぶらさがりビームのよろこびを体感した事のない155cmの息子は、今のところ身長のことなどどうでもいいようだ。あまり乗り気ではない。

バスケで活躍できる。
通学途中、電車内で押しつぶされない。
女子にモテまくる。
といったメリットには見向きもしなかったが、ラーメンとソフトクリームの名を出すと、

「んじゃあ行く」 

と、いともカンタンに食らいついてきた。

1ミクロンでも伸びれば成功なので、柱もどきで現在の身長をチェックすることに。


"ぶらさがり"いがいとハードな競技

まずは渋谷区の施設になっている隣のビルから。
トレーニングだから、ラーメンが旨く食べられるからと、せめて5秒はぶらさがろうとルールを決める。
さっそく

「すげえ手が痛てぇ」

と、 弱音をはきだす始末。
しかたないので

「今日は特製の中華麺にしてあげよう」(目的のラーメン屋には普通と特製があります)

と言うといきなりハシャぎはじめる息子。
いがいとチョロいです。

 

とうとう「ぶらさがりハイ」に……

あれもこれもと、なにかにとりつかれたように、率先してぶらさがりはじめたオン。

「このぶらさがり加減はいいよ」

などといっぱしの評価をくだしはじめていた。

気がつくと同行者も、いい年こいて対抗意識が芽生えたのか、いきなり木や塀に登って飛び降りる、という奇妙な反復行動にでた。通報されてもおかしくはないが、幼児から「わーすごい〜」などと言われていい気になっているようだ。
私はといえば高性能なぶらさがりマシンを探すために上ばかり向いていて豪邸の塀にぶつかり、新しいデジカメが傷だらけになってしまった。こうなったらなんとしても背を伸ばしてもらわなければ気がおさまらない。

どうも3人ともテンションがあがってきている。

これがあの、有名な「ぶらさがりハイ」だろうか……。


オン「ブロック塀はぶらさがりやすい」
オン「白い壁はやだね」
オン「マイケルジョーダンみたい」
オン「団地はキツかった」
今見ると、なんとも恐ろしい光景。下に流れるのは昔ブタが浮いていた神田川。

坂の上のぶらさがり。向かいの家から監視されていた。
旧・焼鳥屋にて。私がやったら壊れそうになりビビる
ちょっと痛そうです。これも試練です。
臭い花ラフレシアとの競演、同化系。
すっかり町にとけ込んでいる息子。りっぱな電話ボックスになれそうだ。

 

ひとまわり大きくなった

中野でラーメンとソフトクリームを食したあとは、乗りなれたバスで帰ることにした。

私がそこで見たものは、今日の小さな旅で「努力すること」を学び、大きく成長した息子の姿だった。


まだやってます……

結果報告

「1.25cm、伸びた」
おどろきの数値に、親子ともども思わず歓声をあげた。実は誰もその結果を、期待していたものはいなかったからだ。

人間の体は、朝と夜では身長差があるという。
中学生であれば朝の方が1.5cm高い(平均)そうだ。
だったらもしかして、2cm近く高くなっているんじゃないのか?

町でなにものかにぶらさがっている人を見かけたら、通報しないで見て見ぬふりで通り過ぎてほしいと思う。


期待(左)と憔悴(右)の表情
どこからどうみても1.25cm

 

▲トップに戻る コネタバックナンバーへ
 
 


個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.