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ハリーポッターのような卒業式?
ハリーポッターのような服?

「卒業式が浦上天主堂でした。しかもハリーポッターに出てくるようなあのマントと帽子をかぶって。ステンドグラスがめっちゃきれいでした。」
というメールを、読者のかたよりいただいた。

ハリーポッターの服?
それはステキだ!
と早速、長崎純心大学に取材を申し込んだ。

が、…。

T・斎藤

長崎純心大学の校舎

あの服の正体

が、これはヨーロッパでは一般的なもので、日本でもキリスト教系の学校ならこのスタイルで卒業式を行っているところは幾つかあるとのこと。

「ハリーポッターの服」というよりも、ハリーポッターがヨーロッパ式の服を着てると言う方が正しい。という説明をシスターにご教授頂く私の姿は客観的に見てかなりマヌケだったかもしれない。。 (大学の方々、ありがとうございました。)


教会で行われる卒業式

その純心大学の卒業式は、大学の講堂ではなく教会で行われる。それも有名な浦上天主堂で、である。


そびえ立つ浦上天主堂

数奇な運命

浦上天主堂は、世界でも例を見ない数奇な運命をたどった教会である。

元々ここ浦上は長崎でも特にキリスト教信者が多く住む地域だった。ゆえに、例の日本史上の汚点ともいうべきキリスト教弾圧では多くの犠牲者が出てしまう。
キリスト教弾圧の残酷さについてここでは詳しく書かないが、それはもう酷い。「踏み絵」が有名だが、それはほんの一部に過ぎない。当時は酷い時代だった。それに比べたら今の日本はなんて素晴らしい社会なんだ、と思う。

その厳しい弾圧に250年以上も耐え、ひっそりと信仰を守り抜いた人たちがいた、というのがまた驚きの事実なのだが、そういう苦難を乗り越え、立ち上がった信徒たちが30年かけてやっとの思いで建てた教会がこの浦上天主堂だった。

が、なんという運命だろうか。
天主堂が完成してから20年後、ここ浦上地区に原子爆弾が投下されたのである。8500人もの信徒が命を落とすと共に、天主堂も見るも無残に倒壊した。


原爆で破壊された聖人像

復興と再建の歴史

しかし再び人々は立ち上がり、元あったのと同じ場所に天主堂を再建したのであった。

昭和55年、これらの話に感銘を受け、教皇ヨハネ・パウロ2世がここを訪れている。


10段階評価で99。

クリスチャンではない私でさえ、ヨハネ・パウロ2世が来たなんてすごい!と思うくらいなので、キリスト教信者にとってはどんなもんなんだろうか?
神奈川に住む「敬虔なクリスチャン」のかたに訊いてみた。

「長崎は世界的にも聖地に挙げられているので…それでも10段階評価で99くらいですかねぇ。」

それ、10段階評価って言いません。

「ちなみに私の近所の教会に来臨されるとしたら、10段階評価で30000くらいです。司教が来るだけでも、かなりな大イベントですので。」

だそうだ。
とにかくすごいということが、よくわかった。

長くなってしまったが、というような非常に歴史的な重みのある教会で毎年卒業式が行われるのである。

初めて中に入った

ここは観光客への一般公開を基本的に行っていないため、私も今回初めて中に入った。


この雰囲気。

それは「いわゆる卒業式」という雰囲気ではなく、厳粛なミサの雰囲気であった。

「ここで行うこと自体に意味がある。」
とおっしゃっていた。
たしかに、式の中のお話ひとつひとつにもさらに歴史の重みが加わり、我々にいろいろなことを考えさせる。


最後は

やや重い話になってきたので、最後は卒業生達の華やかな写真で締めくくりたいと思う。


いいなー、この雰囲気!!

神父さんがそのお話の中で
「あなたがたは光です。これから社会に旅立って世の中を明るく照らしなさい。」
と言われていたが、まさに卒業式を終えた学生たちは、光!のように輝いていた。

いい卒業式だなぁ、と思った。

●取材協力

長崎純心大学


 

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