片岡さんは、研生学会主宰・正垣角太郎氏のお孫さん、正垣親一氏（2001年没）の奥さんで、親一氏が逝去された後、その意志を引き継ぎ、現在も濃縮乳酸菌飲料ミコーの販売元として会社を運営されている。

まず、ニルバーナ・ミコーのネーミングについて聞いた。
由来はやはりロック歌手でしょうか？

「ニルバーナ、というのは仏教用語で“無の境地”って意味らしいですよ。良く分からないんだけど」

正垣家は単なる乳酸菌の研究にとどまらず、仏教真理の追求にも歳月を費やしてきたという。今現在ミコーを引き継いでいる片岡さんは、その辺の事にはあまり興味がないらしい。

ちなみに……
コーヒーフレッシュの「スジャータ」は、長い修行を終えて疲労困憊していたお釈迦様に牛乳をさしあげた女の子の名前「スジャータ」からつけている。

故・親一さんがニルバーナ・ミコーの商標で商売を始めたのが1980年代のはじめ頃。当時は、上の写真の様な1リットルボトルのみで販売されていたという。

その後、2回のモデルチェンジを経て現在のボトルデザインに落ち着いた。

「まあ、飲んでみてくださいよ、ミコーを」

片岡さんが席を立ち、台所でミコーを水で薄めてくれている。

他所でカルピス的なものをご馳走になるなんて、多分子どもの頃以来だ。
今日はカルピスじゃなくてニルバーナ・ミコーだけれども、ニルバーナ・ミコーとカルピスの共通点は、どちらも希釈タイプの乳酸菌飲料という点だ。このような濃縮乳酸菌飲料は、日本ではミコーとカルピスくらいしかないらしい。

「さあ、どうぞ」

差し出されたミコーはカルピスの様に白くなく、黄色がかっている。
早速飲んでみた。

ゴクッ。

カルピスよりは酸味が弱くて甘味が強い。
色見もそうだが、味の方もサントリーのビックルに似ている。

ゴクゴクとニルバーナ・ミコーを飲みながら、90年以上も前に乳酸菌に生涯を捧げた先人たちのことを想う。

壁に架けられた親一さんの遺影と目があった。

あっ、もしかしたら「ミコー」は「みい子」さんからとっているのかもしれない。

ふと、そう思ったが確認はしなかった。