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コネタ


コネタ371
 
下手な文字が好きだ

なにか大変なことになってそうな。


下手な文字が好きだ。

いや、ばかにしてるんじゃなくて、ほんとうに好きなのだ。よれよれの文字は書いてある内容以上に訴えてくるものがある。たとえば右の文字。

「ワ」じゃなくて「ハ」だろうし、だいいちなんでカタカナか。レタリングも上手くない。でも、行き止まりに行っちゃいけない感が伝わってくる。はい、行きません。こわいから。

文字の意味を超えた文字たち。その魅力をご堪能下さい。(林 雄司


手書きの下手な文字

まずはノーマルな手書きの下手字。その文字の揺らぎから書いたときの状況を想像させる。ストーリーがあるのだ。そうか、これは絵なのかもしれない。


たぶんきっと、「金尺」と書いてしまったのではないか。「これじゃカナシャクだよ!あははは」という笑い声が聞える。
諸事情の文字の小ささから、言いたくないようなことが起きてしまったことが伺える。
「集」の文字がどこも間違っていないのに、間違っているように見える。まかないがうまそうだ。
無人販売所にて。確かにブロコリーじゃなくてブロッコリなのだが、美味しそうに思えるのはなぜだろう。右の「クルミ」のこっそり感も素敵。

 

たれてる文字

ペンキでダイナミックに描くとペンキが垂れる。書き手の意志を離れ、徐々に変化してゆく作品に注目したい。


歌舞伎町にある生ジュースの店。飲食店にあるまじき文字だが、店の雰囲気を端的に表しているのだ。

店じまいセールのあわてっぷりを表現している。安そうだ、そんな気にさせる垂れ文字。

「汚」という文字がその状態を表すために変化しているようにも見える。一回転して表意文字。

 

ささいな違和感

文字も下手なんだけど、ちょっとした構成の違和感が心に残る。おしるこに入れる塩、香水に入れるスカトール(糞の匂い)、少しの違和感が全体を引き立てる。


「も(改行)との場所に戻して下さ(改行)い!」改行位置が印象的。(改行)を(息継ぎ)にすると宇多田ヒカルの歌になる。

強調するところは「品切れ」だと思うが、「ビニール」が強調されている。二度三度と読み直してニヤリとさせる下手字。

 

堂々としたいい文字

これまでは貼り紙などに偶然生まれたいい文字だったが、看板などにオフィシャルに書かれた文字を紹介したい。


「ビデオダビング」というメカニカルなイメージとはほど遠い文字。エッチなビデオをダビングしますね、と語りかけてくる。

圧倒的に美味しそうな文字。肉厚な文字、重厚な色、すべてが肉のメタファーだ。「ビフテキですか、そりゃステーキですね」といったトラディショナルなだじゃれも言いたくなる。

かまぼこの板に書かれたメニュー。「チキンライス」、そして「やきめし」。英世の母の手紙と並ぶぐらい感動的。こういうのに弱いんです。


うらやましい

フォントと書き文字のコラボ。新橋駅にて

手書き文字が持つ濃厚な表現力。コンピュータのモニターを通じてしか表現できないデイリーポータルZとしてはうらやましい限りである。

コンピュータで文字を書くことが多いが、書き文字、しかも上手じゃない文字が持つ魅力を大事にしてゆきたい。こう書くとまるで僕の字が下手なのを弁護するためにここまで書いたみたいだが、それも半分あたりである。


 

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