デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

コネタ


コネタ361
 
広告が入っていない看板を鑑賞する

↑ケース09 無難の極北【四条駅】
↑ケース10 周りの余白も「とりあえず感」を増幅させる【四条駅】

幾何学模様タイプ

花や風景よりも、より積極的に無難を目指したのがこの幾何学模様タイプ。「積極的に無難」って自分でなに言ってるのかよくわかんないですが。

ケース09や10を見ていただければ分かるだろう。意味とか風情とか入り込む余地なし。無難の極北である。ここに意味を見出しちゃう人は「日曜美術館」の司会になれると思うのでがんばって欲しい。

ただ、この幾何学模様タイプは意味のなさでは他のタイプと比べても群を抜いているものの、「見た目さびしくなくする」という機能においてやや劣る。水玉がこうもさびしくなれるものだと、初めて知った。もしかしたら、いっそ何も無いほうがさびしくないんじゃ、と思わないでもない。

↑ケース11 幾何学模様の上の余白はどうにかならなかったのか【四条駅】

ケース11は幾何学模様と風景のあわせワザである。色あせ具合もさわやかに颯爽と空を舞うハンググライダー。と、幾何学模様。

観光地タイプのベニスと似た画面構成だが、比べてみるとそこにある無難の思想の違いが浮かび上がってくるだろう。というか、こうなってくると、「無難とは何か」を考えさせられてしまう。

↑ケース12 ちなみにぼくが中学生の頃からこのまま【大手町】

ケース12は一見、風景タイプにも見えるが、実はイラストの木々のパターンである。これは幾何学模様タイプが抱える上記の機能上の問題点を風光明媚タイプとのハイブリッドとすることで解決した名作である。

ただし、なんか普通に東山魁夷あたりの絵に見えてしまうので注意が必要だ。

いまぼくは東山魁夷先生の作品についてとても失礼なことを言ってしまったような気がするが、次にいこう。

 

↑ケース13 無難とメルヘンの相性の良さを再確認【京阪京橋駅】

オリジナル絵タイプ

ありそうでなかなかお目にかかれないのが、このオリジナル絵タイプである。ケース13はペンキで描かれた貴重な一点モノ。モティーフの選び方、画面構成、ペンキらしい色使い。見事である。

既存のイメージや素材集に頼ることなく、自分の想像力と創造性を駆使しての「無難」。学校では決して教えてくれない創造性である。

想像力とは何か、を深く考えさせられる作品。ぼくのお気に入り。

 

↑ケース14 やはり周りの余白が無難ポイント【森之宮駅】
↑ケース15 利用してあげたくなる感じ【四条駅】

広告タイプ

広告が入らないのなら、自分とこの広告をしてしまおうというタイプである。こうきくと「無難じゃないじゃん」と思うかもしれないが、実はここに最もコンセプチュアルな無難の思想が存在するのだ。

いうなれば「木を隠すには森の中へ」という思想である。広告のスペースになにが入っていたら最も違和感が少ないか?そう、もちろん広告が入っている状態が最も違和感がないはずだ。広告が入っていれば人は自然と無視してくれる。なんか言ってはいけないことを言いましたかね。

ケース14を見てもらえればよく分かるだろう。大きさも控えめに「電車に乗って旅に出ませんか」という趣旨の広告が入っている。ぜんぜん目に留まらない。風景や幾何学模様とは別の次元の無難世界がここにはある。

ケース15も同じような趣旨の広告だが、こちらはよりシンプルに文字中心の構成。生気のないブルーの色使いも無難を演出。ミニマルなたたずまいに身が引き締まる。いつまでもクライアントが見つからずにこのままでいて欲しいと思う。なんか言ってはいけないことを言いましたかね。




未広告看板の課題と期待

今回何日かかけて見広告看板を求め、駅周辺をサーベイした。ここで取り上げたのはそのうちのほんの一部だが、他の作品もご紹介したパターンにほぼ集約される。つまり無難のバリエーションは思いのほか少ないのだ。

難しいテーマだとは思うが、人々の趣味嗜好が多様化する現代、もっといろんな「無難」があってもよいのではないか、と苦言を呈したい。

未広告看板の中には上のように、広告がない現状に真正面から向き合った例もある。たくさん未広告看板を見るとこういうものが好ましく見えてきてしまう。これは未広告看板鑑賞専門家気取りの驕りだろうか。ていうか未広告看板鑑賞専門家ってなに。

こんなすれっからしになってしまったぼくをわくわくさせる「無難」が今後現れることを期待して今回のレポートを終わりにしたい。




 

▲トップに戻る コネタバックナンバーへ
 
 


個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.