私たちが「おしゃれベトナム映画」なんかを見て想像するベトナムは、このハノイの旧市街だと思う。
街は「靴屋さんゾーン」とか「乾物屋さんゾーン」とか、同じ通りに同業者がぞろっと並んで構成されている。 私のいたホテルは靴屋さんゾーンのそばで、「ベトナムにあるナイキの工場から、B級品が流出してる」という噂をきいていたので少しチェックしてみたが、靴マニアではないのでよく分からなかった。
私がまず目指したのは、「おもちゃ屋さん通り」だ。日本発のキャラクターなどないかしら、と歩いていったら、なんだか街の様子が変だった。
「あれ? これ、お祭り??」
フーセン売りがたくさん群れをなしている。振ると音の出るおもちゃ、ごてごてと花の飾りの付いた宝物箱、おめん、ちょうちん、ビーズ、シール、変な置き物……。 役に立つものは、何ひとつとして売っていなかった。キッチュなものが好きな私でも、「これ欲しい!」と思うものには、いっこも出会えなかった。キッチュすぎる。
道のはしばしで、その「音の出るおもちゃ」がカタカタ音を鳴らしている。そしてとにかく、子供だらけ。その子供たちが、しっとりとした小さい手で、腰や肩を気軽に触ってくる。外国人が珍しいとかスリとかそういうことじゃなくて、女子高の昼休みのように、気軽に他人にしなだれかかってくるのだ。妙に緊張した。 「縁日なら、とりあえずは全部チェックしたいなあ」と思って歩いたのだが、旧市街いっぱい、規模で言うと竹下通りの4倍くらい、ずうーーーーーーーっとこの調子で、途中で気が狂いそうになった。
「きっと、映像作家とか美術系の人なんかがここ来たら、すごく感激するのかもしれないなあ、でもなあ、私は芸術系じゃないし………っていうかコレ、毎日やってる縁日? 毎日だったらヤバすぎるよなあ、そんなわけないよなあ」