まずは理髪店で聞き込み
農林水産省に入るためには身分証名書が必要、と事前に聞いていたので門の前に仁王立ちする警備員さんに免許証を見せる。
色々と詮索されるかなあ、と思っていたが特に何も聞かれず中に入れた。
館内マップを見ると食堂という名のついた部屋が第一食堂から第六食堂まである。どこの食堂がメインなのか?
地下の商店街を歩いているうちに理髪店の看板を発見。
「只今すいています」
まずは理髪店で頭を刈ってもらい、そこで情報収集することにした。
イタリアマフィアのやり方だ。
理髪店の店内は看板の通り空いていて、理容師はすべて女性だった。
一番奥の席に案内され、
「2ミリの丸刈りで」とオーダー。
「そんなに伸びてないから、1ミリじゃないと歯が入らないね」
頭をなでられながら言われる。
「じゃあ、1ミリで」
「1ミリだと青々しちゃうけど、いいね。外は暑いから」
勝手に解決されてしまう。
「ここに来るのは初めて?」
何かと話しかけてくるおばさんで、情報収集にはもってこいだ。
「食堂がおいしいって聞いたから」
「あらっ、そういう人珍しわね」
えっ?珍しいの?
「去年、業者が変わっちゃったからね」
聞く所によると、この不況でそれまで食堂を経営していた会社が撤退し、昨年から新しい業者さんが入っているとのこと。メニューも味も随分変わったらしい。
「でも、行くんだったらここの奥の第一食堂が一番大きくてメニューも豊富よ」
「じゃあ、皆さんも第一食堂に行くんですか?」
「いやあ、私たちは夕べの残りを持ち寄ってるから」
「お弁当ですか?」
「7、8人いるから、それぞれ分け合うと結構豪勢よ」
「食堂には行かないんですか?」
「行くとしたら、別館のお蕎麦屋さん。あそこはおいしいよ」
第一食堂はどうなったのか?
「ここも不景気でね、前までは9席あったのに今は6席よ」
おばさんは食堂の話には興味がないらしく、ここ最近の不況問題に話がシフトしていく。
「厚生省は理髪店がなくなっちゃったし」
理髪店協定がなくなり、格安の理髪店が登場し始めてから競争が激しくなった。
「ここの商店街も昔は凄い賑わいだったのにね」
段々おばさんが遠い目になっていく。
昔を懐かしむのはいいけど、バリカン、気をつけて下さい。
途中、他の理容師が寄って来て
「まあ、涼しそう」とか
鏡越しに言ってくるので愛想笑いを浮かべつつ、20分くらいで丸刈りが完成。
おばさんが勧める別館の蕎麦屋さんにいきなり行くのもどうかと思ったので、とりあえず第一食堂に向かうことに。
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