前回の記事で紹介した 日産自動車の自動車整備専門学校。
この学校では卓抜した技術を生かして、生徒さんたちが数々の「特殊改造車」を作っていたのだった。
そこで今回は、彼らが製作した、ヘンテコ自動車たちを紹介してみたいと思います。
技術の粋を集めた「迫力ある遊び心」をとくとご覧ください。
(text by ステッグマイヤー名倉)
冒頭に載せた写真が「マーチ・リムジン」であります。
リムジンといえば普通、キャデラックやリンカーンを連想するが、今回製作されるのは国産小型車マーチのリムジンである。
こんな「庶民のリムジン」がどうやって作られるのか、順を追って紹介していきたいと思います。
原理は単純明快で、2台の車の前半分と後半分をつなげるだけでありますが。
考えてみたら、トランスミッションなどの動力系からブレーキ、電気系統にいたるまで、全てつなぎ直さなければならないのだ。
こんな気が遠くなるような作業を、いとも容易くこなしてしまう職人技。いやはや感服です。
仕上げの美しさには、ただ唖然とするばかり。
さて、お次は「マーチ・トラック」であります。
トラックといえばいかつい車体を連想するけれど、マーチをベースに作ると、トラックもこんなに可愛くなる。
一体どうやって作られたんでしょうか?
いやー、ぼくのようなシロウトには、こういう発想自体が出てきません。
工程の前半(切断するところ等)は写真を入手できなかったので、切り詰めた後部をボディに溶接し終えた時点からの紹介になってます。
しかしこうして見ると、整備士って車の医者みたいなもんだなァと痛感しますねえ。こんな「手術」を敢行するあたり、さしずめ形成外科といったところか。
ぼく:「なんですかこれ?」 係員:「屋外に駐車してると雨水がね…」 ぼく:「えっ?」 係員:「荷台に雨がどんどんたまっちゃうんです」 ぼく:「はァ…」 係員:「だから雨が入らないよう板を乗せてます」
クルマ作りの難しさを垣間見た気がします。
さて、最後は「マーチ・チョロQ」であります。
左の写真、マーチの中央部がテーピングされているのがお分かりでしょう。で、この中央部分を摘出して、車体を短くしたのがマーチ・チョロQ。
こちらのほうは残念ながら工程写真がないのですが、いやはや感服。
いつの日か、キャデラックのチョロQ改造車を見てみたいものですな。
今回ご紹介した特殊自動車たちは「改造車」なので、一般公道は走れないそうですが。
学校内での移動や荷物の運搬に、今でも重宝して使っているそうです。
それにしても、身につけた技術を真正面からぶつけるだけでなく、こういう「遊び」にも全力投球できる余裕が、なんだかとてもカッコイイなと思った。本気の冗談というか、実用のナンセンスというか。
こんな学校で学んだ皆さん、きっと素晴らしい整備士として世に出ていかれることと思います。これからのご活躍を陰ながら応援しております。
取材協力:日産学園京都自動車工業専門学校