最近、とある消しゴムメーカーの人と話をする機会があった。
「消しゴムって、なんで使いたい時に限って見つからないんすかね」 「あー、時間があるなら豆腐とか干してもいいんですけどねー」 「!?」
知らなかった。消しゴムは豆腐を干しても作れるらしいのだ。
家庭にあるもので消しゴム作り
文房具マニアを自称していながら恥ずかしい話だが、どうやら文房具業界ではわりと当たり前の話なのだそうだ。 豆腐の中に含まれる水分が蒸発することによって、内部に気泡ができる。その気泡が炭素粒子をうまいこと掻き取って、鉛筆の筆記跡を消してくれるという仕組みらしい。
せっかくなので、豆腐以外でも作れるかどうか試してみよう。
ひとまず冷蔵庫をあさって見た目が消しゴムっぽい食べ物ばかり用意してみた。ランチパック、はんぺん、ベビーチーズ、そして本命の豆腐。ついでに写真に入れ込むのを忘れたが、冷凍したままだった切り餅も見つけたので追加した。
皿に並べた時点では、切り餅が圧倒的に消しゴム感高い。遅れてきた期待のルーキーである。
とりあえず水分が飛ぶまでゆっくりと干してみよう。
時期的には空気が冷たく乾燥している冬場が干し物件のハイシーズンなのだが、今年は特に黄砂だPM2.5だと悪条件も多く、外干しするのが大変だった。 それでもこまめに天候をチェックしつつ干し続けること1ヶ月。ここまで乾燥させることができた。
水分もほとんど飛んで、イイ感じで消しゴムっぽくなったようだ。これは本当に消せるんじゃないだろうか。
ひとつ残念だったのは、期待していた切り餅が、干してもほぼそのままだったということである。元々の水分量が少なかったせいか、干しても縮み量がほとんど無かったのだ。 だが、それ以外はだいたいバッチリっぽい。見た目の時点ではもう大成功と言っても良いだろう。手触りもゴムっぽい弾力を残しており、これは間違いなく消しゴムだ。 豆腐はもとより、ランチパックやベビーチーズもつやつやとして、いかにも消せそうな雰囲気になっている。
実消(じっけし)
最初に結論を言っておくと、今回作った消しゴムはすべて鉛筆の筆記跡を消すことが出来た。 消しゴムっぽい雰囲気の食べ物は、天日で干すことでだいたい消しゴムになるのである。
なかでもダントツによく消えたのは、さすが消しゴムメーカーおすすめの豆腐であった。手応えは通常のプラスチック消しゴムよりもすこし柔らかく、ふわふわとした消し心地で気持ち良い。しかもよく消える。 今後、消しゴムはぜんぶ豆腐でいいかもしれない、というぐらいに良かった。
それに対して、少し残念だったのがランチパックである。たまたまおやつ用に買ってあった『苺ジャム&マーガリン』を干したのだが、消しているうちに外のパンが削れて中身の苺ジャムが染み出してしまったのだ。おかげでノートがイチゴ色に汚れてしまった。 この汚れ問題に関しては、『たまご』や『ピーナッツ』など色味の薄いものを干すことで対応できるか、今後追加実験を行いたい。
消しゴム、まさか食材を干すだけでこんなに良いものが作れるとは思わなかった。出来上がりまでに時間と手間もかかるため、気軽に誰でもできるというワケではないが、チャレンジしてみる価値はありそうだ。
あと、干しても見た目がほとんど変わらなかった切り餅だが、なんとこれでも字を消すことは出来た。手触りや雰囲気はゴムではなく餅のままだったので、これは『消し餅』と呼びたい。