人はどれだけ色で物を判断してるのか
青版のカップヌードルはシーフードヌードルに見えるのか。試してみるためにやってきたのは実家。父はこのシリーズの中でもシーフードが一番の好みだったはず。
仕事から帰ってきた父に「同じ物を食べた味の感想が人によってどれだけ違うかを調べる」という偽の企画を説明して協力してもらうことにした。
説明のあと、いよいよ青版ヌードルを渡す。このタイミングで気づかれる可能性も高い。
少々緊張しながら渡したのだが、気づく様子はない。フタはがしも気づきにつながるタイミングかと思ったが、何事もなく開いてお湯を注ぎ始めた。
タイマーで3分セットする。まだ気づかない。1分くらい経ったところで「普通のカップヌードルも持ってきたんだよね」と、本来の赤版を隣に並べてみた。
さすがにどうかと思ったが、両方を同時に目にしても父からは反応なし。私が味の感想を聞きたいと偽の目的を伝えていたからか、「やっぱりスープが一番うまいんだよね、シーフードは」などと言っている。
そして長い3分が経った。
フタを開いて中身を確認しても反応はない。食べ始めても反応なし。この頃からだ、私が「そろそろ気づいて…」と思い始めたのは。
好物だけあっておいしそうに食べる父。味わいながら、「この味は…何の味なんだろう?」と言い出した。
もしやと思ったが、続いて出てきた言葉は「シーフードだけに、かつおぶしか?」と、とぼけたもの。
味の描写をするために原材料に関心をもったらしく、パッケージをじっくり見始めた。
そして出てきた言葉は、「チキンエキス、ポークエキス…」。続いて「うーん、かつおぶしじゃないなあ」。
この頃になると、私は頭の中で父をフォローし始めていた。息子がシーフードヌードルと言って持ってきたんだから、何も疑わずそう思うよね。色もそれっぽいわけだし。実際食べてるのはカップヌードルだけど、エビが結構入ってるからシーフード的だったりもするよね。
さまざまな思いが頭を巡る中、ついに完食。何事も起きることなく、青版ヌードルの実験は幕を閉じたのだ。「シーフードってことで、普通のカップヌードルより健康にいい気がする」と、まだ感想を言ってくれてて申し訳ない気持ちになる。
気を悪くしたりショックを受けたりするかな…と少しは心配していたが、全てをわかって笑う父。全然めげてない。
シーフードヌードルが一番好きと言ってた言葉の意味が崩れ去ったわけだが、当人は「人間ってそういうもんだ」と全く意に介さない。自分で考えた企画なので自分自身を試せないのだが、実際思いこんでいたら気づけないものなのかもしれない。