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とくべつ企画  
 
大正生まれのおばあが営むたこやき屋さん

 

国頭郡東村川田に90歳のおばあさんが営むたこやき屋さんがある。年齢にも驚くが、常にアツアツを提供したいから焼くのはお客さんが来てからというこだわりのお店でもある。たこ焼き食べつつ、ゆんたく(のんびりおしゃべり)してきました。

miooon/DEEokinawa

※インタビュー中の方言表記に一部わかりにくい部分があるかと思いますが、その場の雰囲気を伝えるためそのまま掲載しています。ご了承ください。



先日「波の上ビーチのラジオ体操が陽気」で沖縄のお年寄りは元気だ、という記事を書きました。 その中で毎朝三点倒立をしている90歳のおじいさんがいましたね。

90歳でこの体力!

今日は三点倒立おじいと同世代で、現役のたこやき屋さんを営むおばあさんのお話です。

比嘉たこやき店

おばあさんのお店は国頭郡東村川田にある「比嘉たこやき店」。

70号線沿いにあり目立ちます。 看板を見かけて気になっていた人も多いのではないでしょうか。 お店は長年やっているだけあって、味のある外観です。

たこやき以外にかき氷もあるようです
入り口にはなぜか鎖で繋がれているシーサーが

おばあも40年余りたこ焼きを作りつづけてます。 材料も一部大阪から取りよせてる物などこたわりつづけてます。 注文受け付けてから焼きます。ご了承ください。 10分少々お時間かかります。

待ちますとも!
ということで、たこやきを焼いてもらう時間でいろいろお話を伺いました。


こちらが店主の比嘉富子おばあ。

大阪から沖縄に帰ってきたときの話

-お歳を聞いてもいいですか?

いくつなると思う?はは。 大正生まれよ。 もう大正生まれも少ないよ。 同級生でも女は今でも3、4名生きているけど、男はみんな死んでおらん。 みんなやっぱり兵隊で死んだりな。もうだいぶなるもんな。戦争もえらい目にもあったしな。 大阪ではあちこち疎開してひもじい思いもしてな。

-いつ頃大阪から沖縄に帰ってきたのですか?

もうだいぶなるよ。おじいが定年なってからだから、うちが62だはず。 自分らのふるさとよりいいとこはないよ。親戚もたくさんいるし。 特に田舎は何にも作らんでも食べ物を持ってきてくれるよ。食べ物に不自由はしない。 やっぱり田舎やな。田舎は暮らしやすいよ。

-もともと川田の出身なんですか?

そうそう。もともと自分も夫も川田のうまれなのよ。 比嘉(家)大きいからな。御嶽(うたき)護っておるぞ。 もう誰もおらんから、みんな兄貴らの場合外国行っておらんからな。 うちらが「大阪近いだろ?」って言われてそんで帰ってきた。 御嶽(うたき)には偉い人祀っておるよ。歴史大きいよ。 行事があるやろ?ウサンデーする人おらんからさ、うるさいねん。しきたりはな。 墓守りもあるしね。

おばあの仕事観

-なぜたこやき屋さんをはじめたのですか? 

おばあね、ほんとはね、ここ来てこんなたこやき屋するとは思わなかった。 ほんとはね、若いときは洋裁で飯くったね。 洋裁だったら今ね、裁断したらね、どんなもんでも裁断するよ。 ほんで型紙とってな。お針子さんはいいけどもう夜通しやってて、目悪くして、それでめがね買ってね。それで洋裁はやめて。 友達がこれ(たこやき屋)やってたわけ。それを手伝いに行って。 それで沖縄帰って、すること無いからまずやってみよう思ってやった。

ただなんでもね。やっとったらええねん。便所掃除までしてよ。 何が助かるかわからんからな。仕事が教えるねん。

面白いやろ? おばあの年まで生きておったら、何がどうなるかわからんぞ。 前はもう、一寸先は暗闇。

昔はよ紡績いうて親が大阪やりよったけど、今は金儲けゆうより、遊びだよ。

-お客さんは結構いらっしゃるんですか?

お客さんはたいていね晩に来る。 昼は旅人が多い。 晩はみんなここら辺の子どもはわかるから。 来る前に電話あんねん。待つのがいやだから。 みんな知った人だからね。 お金なくてもね、持って行って食べてあとで金もってこさせているよ。 もう自由。

(ここでたこやき焼き上がり)

はい、400円ちょうだい!

話を聞いているとあっという間に(たぶん10分以上はかかっているけど)、たこ焼きができました! アッツアツで、ほんのり甘くて。なんだか懐かしい味がしました。

お孫さんのこと

店内にはお孫さんが書いた注意書きがいくつもあります。



大阪から那覇に引っ越してきて、様子を見にきてくれるそうです。 優しいお孫さんがいてよかったですね。


-作品は全部おばあが作ってるんですか?

この花も、人形も自分でつくるよ。 年をとったらじっとできんからね。休め、言われるけど休まれんやろ。 浜からみんな貝殻ひろうてきたりな。これはお金で売るとは書いて無いけど、孫らが書いてくれておる。ほしがる子どもには「あんたほしいもん持って行けー」ってゆうているよ。

ごちそうさまでした

たくさん話を聞かせていただいて、そろそろ帰ろうかと立ち上がったとき、それまで饒舌だったおばあが一瞬間をあけて

「もう帰るのか・・」

と寂しげに言いました。 でもすぐに「またおいでなー」と笑顔で言ってくれました。


ううう、泊まっていきましょうか?

私たちを外まで見送ってくれるおばあ。


また来よう。絶対来よう。

最後に、なんだかんだで4〜5回は繰り返していたであろうおばあの黄金言葉をご紹介。

おばあも戦争とかいろいろあったけどよ。
人間なんとかなる。
人間頑張れよ。

人間かぁ、としみじみ思いながら店を後にしました。 みなさんも東村に行くことがあれば、ぜひおばあとゆんたくしに行ってみてくださいね! 時間にゆとりがあるときに。


比嘉たこやき店

沖縄県国頭郡東村川田468
不定休(用のあるときは閉まる、店にいないときは家の中や庭にいる)
電話注文 0980-43-2925(長めのコールで)

 

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