約2年前の年末年始企画として好評を博した「勝手に食べ放題」が復活するということで、編集部から参加のお誘いをいただいた。2年前は不参加だったこの企画。自分の好きなものを好きなだけ食べていい、そんな夢を叶えた他ライターを羨ましく見つめるだけだった。
そんな夢に、今回は自分が挑めるのだ。当サイトにて、盛んに食いしん坊をアピールしてきた実績が買われたのかもしれない。
月島で「もんじゃ焼き」食べ放題に挑む
今回は自分の好きなメニューひとつをひたすら食べて、満足したら終了というルール。同じメニューであれば複数の店をはしごするのもアリだ。そこで、僕が選んだのは東京名物の「もんじゃ焼き」である。
この街のもんじゃ全てが食べ放題
70店以上のもんじゃの店がひしめく「もんじゃストリート」。今日はこの街の全てのもんじゃが食べ放題なのだ。
そう思うと何だか自分が王様になったような豪儀な気分になる。
まずはもんじゃストリートの入口にある「大江戸坂井」へ。さっそくメニューを開くと「海鮮もんじゃ」「明太もちチーズもんじゃ」など、バラエティ豊かなもんじゃが並ぶ。
どれも魅力的だが、ここはシンプルにプレーンタイプのもんじゃ(680円)を選ぼう。トッピングをなるべく減らして、たくさんのもんじゃを食べる作戦である。
意外とボリュームがある
プレーンもんじゃの具はたっぷりのキャベツに切りイカ、桜エビ。思った以上のボリュームだ。
うまい
シャキシャキのキャベツ、切りイカ、サクサクのおこげ。色んな食感が口の中で舞い踊る。たまに顔をのぞかせる桜エビもいいアクセントだ。
もんじゃとの思い出
思えば、もんじゃは中学生の時、同じサッカー部の同級生・長谷川くん(仮名)家がやっていたカラオケもんじゃ焼きスナック(カラオケボックスともんじゃ焼きとスナックを融合させた店)で食べて以来だ。そういえばあの時もおばちゃん(長谷川くんのお母さん)が焼いてくれたっけ。
蘇る青春の1ページ
長谷川くんの店が地元にオープンしたのは僕が中学2年の春だった。当時、ほとんど娯楽がない田舎町にやってきた「カラオケ&もんじゃ」の二大レジャーに、地元の少年たちは色めき立ったものだ。そんな店のひとり息子である長谷川くんも転校早々スターになった。おまけに彼は男前で、女子にモテた。女にモテるうえ、いつでも好きな時にもんじゃが食べられる。そんな長谷川くんは輝いて見えた。
じつは、すでにけっこう満足
けっきょく「大江戸坂井」では2枚をたいらげた。意外とボリュームがあったので、すでに腹はふくれつつあるのだがもう少し頑張ってみよう。
お腹いっぱい、胸いっぱい
長谷川くんはサッカーもうまく、入部早々にレギュラーを獲得した。そして、同じポジションだった僕は、長谷川くんの加入によって完全に控えに押しやられたのだった。その日から、長谷川くんの店で食べるもんじゃの味はどこかしょっぱいものになった。
もんじゃの味とともに蘇る挫折の記憶。いかん、このまま食べ続けたら泣いてしまいそうだ。
数年前に帰省した際、地元を何気なくぶらついてみると街並みは大きく変わっていた。
大きなマンションやショッピングセンターが開発され、田舎くさかった街の様子は一変していた。そして、長谷川くんの店もなくなっていた。青春の大切な思い出が音を立てて崩れたような気がした。
…どうしてこんなことばかり思いだしてしまうのだろう。4枚目でうまく焼けるようになったお焦げの味もどこかほろ苦く感じられた。