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辛酸なめ子が行く 青山での盆踊り「郡上おどり」

感度の高い人が集まる青山で、ふと目に止まった「郡上おどり」のポスター。国重要無形民族文化財である「郡上おどり」という謎の踊りを、秩父宮ラグビー場で踊るというイベントらしいです。参加費無料だったので、とりあえず行ってみることに。

text by 辛酸なめ子


(郡上おどり青山会場の入り口。港区なのに野菜が1袋100円という激安で買えるコーナーも。)

会場はアスファルトの駐車場でした。盆踊り的なイベントだと会場はたいてい神社の境内で情緒があるのですが……。会場には殺風景な白いテントが並び、「郡上おどり」発祥の地である岐阜の物産などが売られていました。場所が青山なのでグレーの地面と白いテントのコントラストもおしゃれに見えます。

それにしても、ハムや鮎が焼かれていたり、おいしそうな食べ物が並ぶ物産コーナーには人が少なくて、来場客はどこにいるのかと思ったら、もう既にやぐらの周りに集まって踊りの練習をしていました。手の動きはオーソドックスな盆踊り風なのですが、足は軽快にタップを踏んで、下駄の歯で音を鳴らすのが特徴です。練習タイムで踊っていたのは150人前後でしたが、その後本番タイムになるとどんどん増加していきました。  


(さすが青山、スタバとかサバティーニとか出店がおしゃれすぎますリンゴ飴やチョコバナナはありません。)

ところでこの「郡上おどり」がなぜ青山で踊られているのかというと、郡上八幡城主、青山家の菩提寺が青山の梅窓院で、青山公の参勤交代の場所も青山だったことにちなんでいるそうです。青山の地名も青山家から取られているとか。田舎の城主が東京のおしゃれ地区の名付け親だったとは……。

そんな歴史に思いを馳せながら、踊りを観賞。老若男女、飲み食いもせずノンストップで踊り続けています。汗だくて浴衣が半透明になっている人や、トリップしたような目で激しく踊るオネエ系の人もいます。

皆脇目も振らずに完璧に没入していて、「ええじゃないかの乱舞」という、江戸時代の集団催眠的な事件を思い出しました。踊り終えたマダムが「ああ、楽しかった。私は今日はじめてなんだけど大丈夫よ。楽しいから踊ってみて」と薦めてきて、そんなに言うならと意を決して踊りの輪に入ってみました。  


踊りに参加。しかし神社じゃないせいか、盆踊りに惹かれて集まってきた霊に憑かれてその夜激しい金縛りに……。

和服のおじさんに手招きされ、教えてもらいながら初体験。すると、太鼓のリズムと民謡に合わせ、同じ動きを繰り返すことで、軽いトランス状態に入ってきました。輪の中はグルーヴ感がみなぎり、ワンネスを感じます。踊らずに見ているだけの人が、人生損しているように見えてきました。盆踊りがこんなトランシーだったとは……。

踊りは民衆に許された合法的なドラッグであり、無料だということを考えると、かなり魅力的です。とり憑かれたように踊り続けることで痩せて、発汗でデトックスする効果も。今の時代、世の中の不安を忘れるためには踊るしかないかもしれません……。

おしゃれタウン青山で「郡上おどり」をキメたことで都会人の一員になった気分に浸りました。


茎わさび、鮎の甘露煮、しそ漬け梅、など渋すぎる岐阜の物産。でも青山にあるとかえってスノッブです。

休憩コーナーで、次はどこの踊りに行こうか相談しているマダムたち。本場の郡上に行く人も多いようです。

下駄の歯を鳴らして踊るのが特徴で、タップダンスやよさこいに通じる要素もあります。

おどり会場の隣にはアッパーな雰囲気のテニスコートが。全くの別世界です。

食べ物よりも売れていたのは郡上おどりのTシャツ、手ぬぐいなど。レッスンDVDやCDまでありました。

階段には見物客が座っていましたが、郡上おどりは、見る踊りではなく実際に踊るものだとスタッフ談。

飲み食いせずにストイックに踊り続ける人が大半です。踊りタイムは約3時間続きました

 
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