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ひらめきの月曜日
 
名古屋のカレーうどんは変なのか?

ああ名古屋。
05年に開催された「愛・地球博」の前後に、「こんなに変わった文化があります、特に食文化は独特です、小倉トースト、あんかけスパゲティ、台湾ラーメン等々…」と、紹介されまくっていたはずなのに。
どこで聞いたか忘れたが、
「名古屋のカレーうどんは、ちょっと変」
らしいのだ。
変なの? 変なことって有名なの? 
確かに『るるぶ』などを見てみると、カレーうどん店が紹介されていたりする。でも、どんな風に独特なのか、説明が書いてない。
名古屋出身の人に訊いてみても、「え? カレーうどん? 変ですかねえ?」と、ピンと来ていなかった。

先日、名古屋に行く機会があったので(記事「初めての遠征〜名古屋タイフェスは雨だった」取材時)、気合いを入れて、食べ歩いてみた。

大塚 幸代



カレーうどんもすごいが、「コロ」ってなんだ

まず一件目は、ガイドブックにも載っていた「鯱乃家」。
名古屋駅近くの繁華街ではなく、少しだけ離れた黒川という町にある。


商店街とかじゃなく、幾つか飲食店の並んだところに、ぽこっとある店。なぜか看板に「若鯱家」とあるが、店名は「本店 鯱乃家」。

ガイドブックに載ってる食べ物屋! という感じがあまりなく、ごくフツーに、町に溶け込んで営業していた。
少々入りにくいな、と思いながら、ガラガラーッとドアを開ける。
「いらっしゃいー」
……中はカウンター席ばかりだった。
私は、地方旅行で食べ歩きをする時は、誰かと同行して、一人がメニューを頼み、一人が飲み物を頼んで、お店にお金を落としつつ、お腹がスグいっぱいにならないように心がけているんだけれど、今回はムリみたいだった。これは一人一品コースだ。
メニューを見る。カレーうどん、670円。旅行者としては安いけど、地元の人が食べるのには、結構高いんじゃないのかな、まあカレーうどんなんて、そうしょっちゅう食べるものでもないか…とか考えていたら、メニューの中に、
「コロ」
という文字を見つけた。
「コロって何ですか?」
同行してくれたTさんが、店員さんに訊ねる。
「甘辛いタレをかけて、食べる…冷やしうどんですね」
なんだそれは。それじゃ頼もう、と、カレーうどんとコロを注文。
「きぬ」
というのもあったので、これも「何ですか」と訊ねたら、
「麺がこんな感じで、細いんです」
と、茹でる前の麺を見せてくれた。確かに細い、そうめんほどじゃないけど、見た目がふわふわサラサラしていた。
……あらゆる都道府県が、「B級グルメで町おこし」をたくらみ、もともと地元で食べられてないメニューを捏造してる今日この頃だというのに。
名古屋はまだ、いろんなものを隠し持ってる。というか、突っ込まれずに放置されているんだろうなあ、と想像した。

そして問題のカレーうどんだが。


独特な下ざわり、ざらっとポタージュっぽいような…。

クリーミィだ。でも、何でとろみがついてるのかが分からない。片栗粉だけじゃないっぽい、不思議な、ポタージュクリームのような質感なのだ。何だこりゃ。
具は、ふわふわおあげ、ネギ、豚肉。
そして、味。魚だし…(かつおなのか? 別のものが混ざってるのか?)と、鶏ガラや野菜ダシも混ざっているような…、サッパリしたスープをベースに、スパイスがキラッと立っていて、鼻に抜ける。優しいのにパンチのある味。ハッキリしてるのに、フワフワ、つかみどころのない味。
普通のカレーうどんは、市販のカレールーに醤油ダシを合わせたようなものが多いけど、それとは別モノ。お蕎麦屋さんのモッタリしたカレーとも別モノ。
どう説明していいのか分からないけど、全然違う。
同じ国内の人が作ったとは思えない。海外の日本食レストランに行って、「カレーうどんです」って言われて出て来たら、「何かちょっと違うけど、美味しいからいいか」と思って食べてしまうかな? ってな味だ。
名古屋ってやっぱり、どこか異次元だ。おそるべし。


これが「コロ」。

コロとカレーうどんは、同じ麺だった。極太で歯ごたえあり。
そんなに「甘辛い」感じもなく、普通に美味しいぶっかけうどんだった。美味かった。

おっちゃんにまみれてカレーうどん

次に行ったのは、繁華街ど真ん中の「うどん錦」。


「カレーうどん店をはじめたい方、ご相談ください」と看板に書いてあった。

店内は、やはりカウンターのみ。「これから夜遊びする前に、ちょっとお腹に入れておくぞー!」というおじさま達で、満席。カレーうどんで精がつくのだろうか。名古屋の夜はちょっぴり不思議。
(後で調べたら、「ここでカレーうどんを食べると、二日酔いにならない」という伝説があるとのこと。)
私たちも並んで、カレーうどんを待つ。


カレーうどん、700円。

スープがなぜか白っぽいんだ、これが。

麺は量が少なめで食べやすかった。ダシは食べ慣れた風味がした…(名古屋コーチンとカツオだしらしい)、でもやはり、スープにはナゾのポタージュ感があった。
具はここでも、おあげ、ネギ、肉片。
鯱乃家より、やや濃い目で、分かりやすい味だったけれども、やっぱり「異文化な味のカレーうどん」だった。
ダシの味、スパイス、とろみ。その絶妙なバランスが、全国基準と大幅に違うのだ…。


この店にも「コロ」があった。中太麺でした。

 

あともう一軒、行ってみたのだけれども

東京への帰路の途中、名古屋の駅地下街にもう一軒、カレーうどん屋さんがあることが分かったので、新幹線ギリギリ前に、食べに行った。
「若鯱家」という店だった。駅ビルにある店で、チェーン店の一店舗だったので、2人入店して、カレーうどんとビール、という感じで頼めた。
ちなみに「コロ」は無かった。

居心地は良かったんだけども…。


やっぱり具は、おあげ、ネギ、肉。

カマボコは、オリジナルのものらしい。ちなみに「若鯱家」は、関西から東京まで、大々的にチェーン展開している。

少々、ポタージュ感があるにせよ、ほんのちょっと東京モノとは、質感が違っていたかもしれないけれど。
味は普通のカレーうどんだった…。
美味しい不味いで言えば、普通に「美味しい」んだけど、先に食べた2店で感じたショックは、全く無かった。


サイドメニューの手羽先とかは、とても美味しかった。

誰か「名古屋カレーうどん」の定義を教えて

後で調べて分かったんだが、一件目の「鯱乃家」(旧名「若鯱家」)は、「名古屋中のうどん屋さんが修行をしに行く名店」なんだそうだ。
で、3件目の「若鯱家」と、何か深い関係があるらしい…。
どう関係してるのかはともかく、大チェーン店になり、駅ビルに入ってしまっている店では、「名古屋カレーうどん」の味は、ほぼしなかった。残念だ。

次回、名古屋に行くことがあったら、他のカレーうどん店も行ってみたい。
そして人に、「名古屋カレーうどんってこういう味なんだよ!」
と、説明出来るようになりたい。

つまり、まだ全然、食べ足りない……!
名古屋のカレーうどんは、ぜったい「変」ですよ……!!

居酒屋に「豊橋カレーうどん」というのがあって、名古屋カレーうどんと関係あるのかな〜と思って訊いたら、「丼の底にとろろごはんの入ってるカレーうどん」という、街おこし創作メニューだった。それはそれで、面白そうですが。

 
 

 

 
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