ところで、県境の上にあるショップで、もし何らかの犯罪があった場合、駆けつけるのは奈良県警なのか京都府警なのか、気になるところだ。県境上にあるショップの店員さんに聞いてみた。
ぼく「すみません、このラインが県境だってのはご存知でした?」
店員さん「あ、はい、こっちが奈良県でこっちが京都府ですね」
ぼく「あの、例えばなんですが、もし万引きなんかが起きたら奈良県警、京都府警、どちらの警官が駆けつけるんでしょうか?」
店員さん「んー、どうなんやろなぁ……ショッピングセンターの住所は京都府になってるから、木津署に連絡するんやないですかね?」
ぼく「もし万引き犯が奈良県側にダーッと走っていったら、駅前の奈良県警の交番は見て見ぬふりしますかね?」
店員さん「いやーそれはないでしょう(笑)さすがに目の前犯人走ってたら捕まえると思いますよー」
ぼく「ですよねー(笑)」
愚問だった。警官が犯罪者をみすみす見逃すわけがない。県境の興奮でどうかしてたのだ。県境は心を惑わせる。ぼくにとって県境は煩悩かもしれない。
普段使いの県境
店員さんに県境についてもう少し聞いてみた。
ぼく「普段『あ、いま県境跨いでるな』とか『今日は何回県境越えしたな』みたいなことは考えたりしますか?」
店員さん「いや、無いですねー(笑)」
ぼく「無いですか(笑)」
店員さん「無いです……」
これもまた愚問だった。
我々だって「あ、きょう何回呼吸したな」とか考えないのと一緒で、この県境は、ここで働いてるひとにとって水や空気と同じ存在なのだ。普段使いの県境。カジュアルな県境。いいなあ、そういう県境。ぼくも欲しい。 |