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土曜ワイド工場
 
HOW TO セリと入札

入札という方法もある

一通りのセリが終わった頃、最後のメインイベントとしておこなわれるのが入札。入札というと、公共事業や競売物件のイメージがあるけれど、伊東ではピチピチした魚の入札がおこなわれている。

入札制度で売買されるのは、イワシやサバなどの扱い量が多いもの。たとえば川奈漁港のカタクチイワシ1箱40キロに対して、いくらでどれだけ買うのかを書いた紙を提出し、一番高い値段をつけた人から買うことができる。セリと違って値段を変更することができない一発勝負だ。


干物屋は入札での購入がメイン。入札で失敗して魚を買うことができないと、会社で待っている人達が干物を作れない事態に陥ったりもする。

黒板に書かれた文字の意味がわからなかったので、また内田さんに説明をしてもらった。

・40.0代 いわし丸 61. → カタクチイワシ 40キロ一箱の値段で入札 61箱有り
・40.0代 さば丸(一)1. → ゴマサバの一番大きいもの 40キロ一箱の値段で入札 1箱のみ
・35.0カケ うま(二) 8. → ウマズラハギの二番目に大きいもの 35キロ単位で1キロあたりの値段で入札 8セット有り

というふうに読み取る。「代」は一箱の値段だが、「カケ」は1キロあたりの値段。これを間違えて入札すると、三ヶ月くらい市場の人気者になれそうだ。


港によって微妙に大きさや品質が違うそうですが、素人が見ても区別がつかないです。
入札を待つカタクチイワシ。量が多すぎて値段がぜんぜんイメージできない。

「丸二」は、ゴマサバの二番目に大きいサイズという意味。
この入札表に、品名、単価、数量を書いて、漁港ごとに用意された投票箱に入れる。

一発勝負なので値段をつけるのがセリ以上に難しそうだが、島源商店の社長の教えでは、できるだけ安く買うことにこだわらず、自分が妥当だと思う値段をつけて入札すればいいそうだ。

商品となる干物は売値が一定だからというのもあるが、あまり安く買ってしまうと、それは漁師さんに申し訳ないから。

 

魚の値段は買い手次第

入札の締め切りからしばらく待っていると、黒板に結果発表が書かれた。ちょっとした受験の合格発表気分である。


仕入れという仕事、この緊張感が毎日続くのか。内田さんは無事に買えたのかな。

黒板には購入者と落札された値段が書かれている。カタクチイワシをみてみると、同じ漁港のものが一番高くて1箱1800円、安いと742円。同じイワシなのに倍以上の価格差がある。

もう少し絶対的な相場というものがあるのかと思ったら、買い手によって値段はぜんぜん違うようだ。


さすが生もの、値段が見事にバラバラだ。

入札金額の違いは、今日絶対その魚が必要なのか、安い時に買えばいいのかという、買受人の商売方法の違い。

魚が豊漁だと値が崩れるという話をニュースなどで聞いたことがあるけれど、なるほどこういうことかと納得した。カタクチイワシ、安くなりすぎ。

1円の違いで買えるか買えないかが決まるこの入札方式、内田さんも何度か数円の差で泣いたことがあるという。

またセリに参加し始めた頃は、社長からキロ700円まで出していいといわれていた魚に対して、てんぱっていきなり700円の値を出してしまい、周りの人にドン引きされたりしたこともあるそうだ。

それでもやっぱり、楽しい仕事だそうですよ。

セリに入札、ちょっとやってみたい

その仕組みを知ると、自分もちょっとやってみたくなるが、これはあくまでプロの世界のお仕事。なのでもし、私が居酒屋とかで急に唐揚げを手に、「はい200円から!」といいだしたら、「220円!」「280円!」「300円!」という感じで、セリごっこに付き合っていただけたら幸いだ。

今回教えていただいたセリと入札のルールは、あくまで伊東魚市場のルールで、市場毎にその方法は異なっている。「全国魚市場セリ&入札ガイド」みたいなマニュアル本が欲しい。

突然ですがナゾナゾです。カタクチイワシの中に、マイワシとウルメイワシが混ざっています。さて私の好きなイワシはどれでしょう。

取材協力:島源商店


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