あっという間に山頂
ひと休みしたあずまやを出ると、また急な上り坂が待っていた。そのうち坂ではなく階段になって、リュックサックの重さが足に響いた。登る山と荷物の重さが比例していない。何しろ手ぶらで犬の散歩に来ている人もいるのだ。遠足じゃなかったら荷物いらない。
しかし、そのすぐ先であっけなく山頂に到着した。すると、目の前にある景色が記憶の奥底にあった光景を意識の上に引っぱり出した。あ、これ見たことある!
山頂にはコンクリート製の展望台がある。そしてそれには見覚えがあった。確かに、小学校のころこの黒ずんだコンクリートの上に立って景色を眺めた記憶がある!眼下の市街地を眺めたのも思い出したけど、それより展望台の真下に草木がもじゃもじゃ生えている、今も変わらない景色が印象に残っている。
道中まったく記憶に引っかかるところがなく、半信半疑で登ってきたけど、さすがに山頂のイメージは残っていた。
でも、それ以外に心当たりのある景色はまったくなかった。ひょっとしたら今の道は通ってないんじゃないか。
天覧山は反対側にもう1本ルートがある。下りはそっちを通ってみよう。
記憶上のものが記憶の通りに
別ルートの登山道は、一直線の階段が下に向かって伸びていた。こんな印象的な道なら通れば覚えてるんじゃないか、と思ったけど記憶のセンサーは反応せず。
そのまま降りて行くと、小川が流れる小さな草原に出た。
...ここだ!
細かいディテールは覚えていないけど、同級生のK君が野ぐ...いや、腹痛に伴う生理現象を催したのは間違いなくここだ!
当時より道がキレイに整備されている気がするけど、記憶の中の光景と目の前の景色がかなりの割合で一致するのは快感だ。
しかし、30年経ってからわざわざ電車に乗って来て、山を登って降りて探し出したのが友達がのぐった場所、というのもどうしようもない話だと思う。貴重な休日に何やってんだ僕は。
小川に沿って整備された道を進むと、時を経て僕を待っていたものがもうひとつあった。
遠足に来たときに目が釘付けになった砂防ダムだ。ここで間違いない。形から色から周りの風景までまったくイメージ通りだった。
僕の記憶では天覧山に登る前に砂防ダムを見ていて、降りてきたところで友達が催した。ということは、小学校の遠足では駅からこのルートで天覧山に登り、同じルートで降りてきたということになる。
その後は名栗川の河原だ。たぶんお弁当を食べたんだろう。僕も河原に行って当時のことを思い出しながらお弁当にしようと思った。