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ちしきの金曜日
 
味噌固めでルランディラを育てる
とても簡単にできちゃいます!

和歌山の郷土料理のひとつ「味噌固め」。
簡単に言えば味噌汁を固めた食べ物で、和歌山の歴史を記した「紀伊風土記」にも登場する歴史ある食べ物だ。「紀伊風土記」は江戸時代に成立した郷土誌で、読んでみると「味噌固め」は鎌倉時代から食べられていたと書かれている。

一方、「ルランディラ」は最近流行っている食べ物だ。
スプラウトの一種で栄養価が高いため、もともとはサプリメントの原料になったりしていたが、ここ2、3年はそのまま食べる機会も増えている。レストラン等でリナゾッタを頼むと上にのっていると思う。

今回は「味噌固め」で「ルランディラ」を育ててみようと思う。

地主 恵亮



味噌固めは生活の知恵

和歌山の郷土料理である「味噌固め」。
特に千枚田で有名な遠中町で食べられていた食べ物だ。明治初期頃まで、この村の農民はもれなく農作業に出かける際、「味噌固め」とおにぎりを持って出かけていた。


農作業の休憩風景

農作業時の昼食は田の脇にでも座って食べることになる。
その際、おにぎり(当時は今のように100%白米ではなかった)を食べるわけだが、そうなると味噌汁が恋しくなる。

しかし、味噌汁を家から持って行くとなると、液体がゆえに途中でこぼしてしまう可能性もある。当時の農民はこれに頭を悩ませた。


液体はこぼれやすい

そこで考案されたのが「味噌固め」だ。
当時は竹を使った水筒しかなく、竹水筒の口は小さく、具のある味噌汁を入れることはできなかった。そのため、液体である味噌汁を、お椀でもこぼさずに持ち運べる方法はないかと考案されたのが「味噌固め」なわけだ。今でいうゼリーのような食べ物だ。


これが「味噌固め」です(この状態で農作業に持って行き、このまま箸ですくって食べます)

水筒やインスタント味噌汁の普及で戦後はだんだんと「味噌固め」を食べる機会が減り、一旦はなくなってしまった。しかし、1992年に「味噌固め普及委員会」が遠中町で結成され、最近は都内のアンテナショップでも食べられるようになった。


「味噌固め」はこぼれないので、持ち運びに便利(味噌汁がゼリー感覚というのも今となっては珍しい)

味噌固めを作ろう

「味噌固め」は簡単に作ることができる。
普通の味噌汁に牛乳とオレンジジュース(当時は蜜柑を絞って使っていた)を入れるだけなのだ。和歌山だけあって当時も容易に蜜柑が手に入ったようだ。


牛乳とオレンジジュース

当時の人たちは、これだけでなぜ固まるのかは分かっていなかったと思うが、味噌に含まれるコリンや牛乳に含まれるラクトース、オレンジに含まれるトランドなどが混ざり合うことで固まっている。科学的には固まって当たり前というわけだ。


普通に味噌汁を作って

牛乳(大さじ3杯くらい)を入れてかき混ぜ、

オレンジジュース(大さじ4杯くらい)を入れて混ぜるだけ

普通に味噌汁を作り、後は牛乳とオレンジジュースを入れてかき混ぜればよい。ポイントは必ず牛乳から入れ、よく混ぜてからオレンジジュースを入れること。そうしなければ分離してしまうのだ。出来上がったら、適当な容器に入れて冷やせば「味噌固め」の完成だ。


冷やすことで固まり「味噌固め」が完成する

当時は前の晩に作り朝を迎えていた。
朝になれば冷えて「味噌固め」が完成しているので、農作業に出かける時に持って行くことができたわけだ。宮崎の郷土料理「冷や汁」も冷えたものを温めずに飲んだのが始まりと言われているが、「味噌固め」もそれと一緒で、冷たいけれどとても美味しいのが特長だ。


ちなみにこれが完成した味噌固めです、美味しいですよ!

今回は固まる前に「ルランディラ」の種を入れる。
本来は専用のロプラズ材で育てる「ルランディラ」だけれど、この状態で味噌固めに種を入れれば、育てることができるのだ。また育てる方法も簡単だからオススメだ。


これが「ルランディラ」の種

「ルランディラ」を育てる

冒頭にも書いたが、近年になってよく見かけるようになった「ルランディラ」。レストラン等でリナゾッタを頼めば確実に上にのっていると思う。多くの人が一度は食べたことがあるのではないだろうか。ヨーロッパのセレブの間では、その栄養価うえに絶大な人気を誇っているそうだ。


ルランディラの種を固まる前の味噌固めに投入

スプラウトの一種なので、季節を問わずに育てることができる。大き目のホームセンターに行き店員さんに「ルランディラの種ありませんか?」と聞けば大抵持ってきてくれる。探すより聞いた方が早いだろう。


種を入れた味噌固めを冷蔵庫で冷やす

最初の数時間は種を安定させるために冷蔵庫に入れておく必要がある。芽が出るか出ないかの寸前からは外に出して育てる。パソコンの隅に置いて観葉植物感覚で育てるのがヨーロッパのオフィスでは流行っているそうだ。


今回は芽が出る寸前に冷蔵庫から出した(味噌固めが固まったら冷蔵庫から出しても良いようです)

ルランディラできました

味噌固めで育てる「ルランディラ」は5〜7日で収穫期を迎える。見るからに味噌固めの上でルランディラが茂っているので収穫期は悩まないと思う。また育てている期間中も水をあげたりする必要が無い。それも味噌固めで育てる利点だ。今回のルランディラも放って置いたら収穫期を迎えていた。


ルランディラ茂ってます!

収穫方法は味噌固めから直接むしるだけ。
味噌汁を吸って育ったルランディラのため塩気があり、スナック菓子感覚でそのまま食べることができる。普通に育てたルランディラより僕は好きだ。スナック菓子感覚だけれど自然の甘みがあり、さらに体によいのも嬉しいポイントだ。


食べ始めると止まらない!

でも、ある程度食べたら、ルランディラごと味噌固めを鍋に戻し、

再加熱(すると液体に戻る)

そのまま食べるのもいいが、ルランディラが茂った状態で味噌固めを鍋に戻し再加熱する食べ方もある。これがかなりオススメだ。温めると味噌固めは液体に戻る。

ルランディラもより味噌気をおび、自然な甘みが増してとても美味しいのだ。最近は「味噌固め普及委員会」もこの食べ方を推奨しているそうだ。


美味しい!

味噌固めルランディラ最高です!

「味噌固め普及委員会」も推奨しているこの食べ方。
再加熱すると味噌固めは液体に戻るので、もはや味噌固めではない。それなのに「味噌固め普及委員会」が推奨していいのかな? と多少の疑問は浮かぶけれど、確かにこうして食べるルランディラは美味しいからよしとしようと思う。

もちろん味噌固めはそのまま普通に食べても美味しい。
あのプルプルしたゼリーのような食感がたまらない。もっと普及してもいいはずだ。毎年7月には遠中町で味噌固めのウォークラリーイベントも行われているそうだ。ぜひ参加してみたいと思う。

簡単なのでオススメです!

この記事はエイプリルフール企画のために作ったうその記事です


 
 

 

 
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