四角い太鼓
太鼓というと丸い物というイメージがあるが、世の中には四角い太鼓もある。それも日本に。
これは角太鼓という。なんでこんな四角いかというと、もともと太鼓じゃなかったから。
元になっているのは戦時中に使っていた携帯用タンス。戦争が終わって、着物を持って逃げる必要もなくなり、要らなくなったところに皮を張ったのだという。
なにか枠があったらそこに皮を張りさえすれば太鼓になるわけで、形としてはそうとうに自由度が高い。だから世界中にこんなにたくさんの種類が生まれたわけだ。
形が変わってるといえば冒頭にも貼った、こんなの。
これはロシアのウントフという太鼓。皮しかないように見えるけど、触ってみるとフチの部分には固い枠が入っている。馴染みがない形だけど、この胴が短い感じは、身近な楽器でいうとタンバリンに近いだろうか。
さらに、「これもすごいですよ」といって指されたほうを見ると…
指された台の上にはたくさんの楽器が並んでいて、どれのことだかわからない。「どれですか?」ってきいたら、なんとこれのことであった。
ンテンガという楽器。直径で1.5mくらいあったのでは
なんと展示台だと思っていたのがそのまま太鼓だった。これはテーブルのように囲んで、4〜5人で一緒に叩くものらしい。でもぜったい現地の人も上で飯食ったり勉強したりしてるのではないだろうか。
皮だけじゃない
さっき「皮さえ張れば太鼓」というようなことを書いたが、その皮さえも別に張らなくてもいいのである。たとえばこれ。
パプアニューギニアのガラムートという太鼓で、丸太にスリットを彫り込んだものだ。これをそのまま叩いて演奏する。
ほら、だんだん自分の中の太鼓の概念が揺らいできただろう?ここでさらに追い打ちをかけます。
壷だ。(ガタム・ノート。側面を片手で打つ。口を片手で押さえたり離したりして音質を変化させることもある。)
かと思えば皮のかわりに金属板を乗せてたりもする。(銅鼓。 もとは鍋として使用していたもので、後に雨季前に行われる雨乞い儀式などに使用されるようになった。)
これはウォータードラムと呼ばれる種類の太鼓で、名前のとおり水を使う。中をのぞき込むと、
これは川など水中に持ち込んで使う楽器で、水に入れると底の穴から水が入ってくる。その水の量によって、叩いたときの音程が変わる、というものだ。
壷やら水やら何でもアリだな、という気分になってくるが、何でもアリの極めつけがこれだ。
腹だ。
これはクンドウ太鼓というもので筒状の木にトカゲの皮を張った太鼓なのだけど、反対側のフチがU字型になっており、その部分に腹や腰をはめて叩くと音が変わって面白い。腹具合によっても音が変わったりするのだろうか。
いずれにしろ、食後に使うと気持ち悪くなりそうな太鼓である。