新幹線で新横浜から見える車窓は両極端だ。
片方からみるとビルが整然とびっしり並んでいて、もう片方から見ると林とか田園風景が広がっている。僕は田園風景が見えるほうが凄く好きだ。
駅前にビルや高層マンションが並ぶのはあまりに新幹線の駅前的で面白みに欠ける。横浜の玄関口の駅から見える光景が林というのはたまらない。
”新”が付く駅は他もみなこんな感じなのだろうか。新のつく駅を巡ってみた。
(ライスマウンテン)
新横浜の”素朴側”を歩く
とはいえ敵を知るにはまず己から。笑っていいともの100人に1人当てるアンケートで、新幹線で「三河安城駅」を利用した人が100人に1人だということが出ている。名古屋で降りるときに三河安城駅の通過が気になるが、新横浜の”素朴側”も気になる人はあれ、降りる人はそういないのではないだろうか。
通り過ぎたり降りた人は多いだろう新横浜駅。しかし篠原口から出て徒歩5分もないところの山道を歩いた人はそういないのではないだろうか。そこにビジネスマンはあまりなく、歩いていれば地元のおばちゃん同士が立ち止まっての談笑あり、犬と散歩するおじちゃんが通り過ぎ、一方を見れば林だというのに、新幹線のアナウンスが響き渡る。これぞ新横浜駅である。ラーメン博物館しか紹介しないガイドブックなどガイドブックにあらず。これこそ非現実的光景なのだ。
新川崎
横浜とくれば次は川崎だろう。川崎は広告などでスルーされることもあるということを紹介したけれど、川崎は立派な駅。人通りが半端ない。
川崎駅から随分離れたところに新川崎の駅がある。ホームからは見る景色は、一面こそ高層マンションはあれど、もう一面には高層マンションは遙か遠くにあるだけで、川崎とは思えない雰囲気がありたまらない。新横浜とはまた異なる味わいの”新”駅っぷりだ。
新千葉
千葉の”新”駅といえば、やはり新千葉から入らなければならないだろう。新横浜や新川崎よりも知名度がたぶん低いのがたまらない。知名度に比例するように新横浜や新大阪や新神戸とは違う、なんとも普通の住宅地になっているのが新駅としてはレア。ネーミングと降りたときのギャップに感動の溜め息をつくに違いない。
新船橋、新柏、新鎌ヶ谷
東武野田線は千葉の大都市「船橋」と「柏」を結んでさらに大宮に行く。船橋と柏の隣駅にある「新船橋」も「新柏」も「新駅」らしく何もない。新柏には定番の裏山があり新駅らしいたたずまいにほっとする。新船橋は駅前にスーパーがあり、そのスーパーの駐車場が駅前にまで広がるので、駅前に全く何もないのが大都会「船橋」とのギャップが激しくポイントは高い。
新柏の駅前の東武ストアに入ったら「しんかしゃてんにようこそいらっしゃいました」というアナウンスをよく聞いた。なるほど「新柏」を早口でいうと「新華社」なんだ。
東武野田線で「新船橋」と「新柏」に注目したが、その中間にある新鎌ヶ谷」も小さい都市ながら「一方の出口は整備、もう一方は郊外の風景」という新駅のセオリーを踏襲しているのがすばらしい。
Googleストリートビューでも全体像がくっきり見れるなど、その大きさで語られがちな「鎌ヶ谷大仏」の実物大写真付きポスターが載っている鎌ヶ谷市案内図がいい味を出している。
新松戸
新駅天国千葉の中で最も見応えのある新駅は新松戸だろう。最後に新松戸のすばらしさを伝えたい。
新松戸は新横浜に通じる新っぷりの駅だ。千葉でも松戸は大きな都市だが新松戸駅からの景色は新横浜を彷彿、いやそれ以上のギャップがある。
新松戸駅の常磐線ホームから見える片側の景色は商業施設が集まる駅前の景色なのに対し、もう片側の景色は田園風景が広がる。農園と農産物直売所のすぐそばを東京メトロ千代田線列車が走る光景は、さすが新駅と言わざるを得ない。
新青森はしょぼくたっていいのだ
東北新幹線が新青森駅まで伸びたが、新青森駅がショボイということをよく見聞きする。でも東京周辺の新駅からの眺めだって、郊外だったり住宅地だったり、玄関口っぽくないので、しょぼくたっていいのだ。今後北陸新幹線とか北海道新幹線ができて”新”の名がついた玄関口の駅ができるが、しょぼくたっていいのだ。
今回各駅を巡ってみて、新駅の素朴な出口のほうは山道があったり、林があったり、道幅が狭かったりで、グーグルストリートビューですら表示されないエリアが多い。新駅には文明の利器が入れないところが結構あった。世界の巨人グーグルに勝ってぬか喜びしたのだった。