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はっけんの水曜日
 
東京マラソンを走ったつもりになる


走ったつもり

先日開催された東京マラソン。
3万6千人が出場し、216万人が声援を送ったそうだ。
今年で開催5回目になるが、すでに東京を代表する一大イベントといっていいだろう。

東京マラソンのキャッチフレーズは「東京がひとつになる日。」だが、たしかに一年でいちばん東京に住んでいるんだということを意識する日だと感じる。
ちょうど青森のねぶた祭りや徳島の阿波踊りのような位置づけになっているのではないだろうか。
そんなお祭りのような東京マラソンに、僕も出たい。

工藤 考浩



出たいが選ばれない

今年の東京マラソンは、定員の9.6倍の申し込みがあったそうだ。
僕も今まで何度か応募しているが、当選したことがない。


落選通知にちょっとほっとする


せめて雰囲気だけでも

とはいうものの、僕はマラソン経験どころか、乗る予定の飛行機に遅れそうなときですら走らない。
普段まったく運動らしい運動はしていないので、当選してしまったらそれはそれで大変だ。
なので落選のメールを開いた時にちょっとほっとしなかったわけでもない。

そういう状況なので、まずは雰囲気だけでも味わうために、ランナーのような格好をして、沿道に出かけてみようと思う。



スポーツウエアなんて買ったことがないので、なにを選べばいいのやら
そしてゼッケンを見よう見まねで作成

ウエアとゼッケンを携えてスタート地点へ

前日にアウトレットモールでランニングウエア一式をそろえた。
特売になっていたのを選んだが、シャツと短パンにスパッツみたいなの(これは前から一度はいてみたかった)と靴、しめて14000円であった。
もちろん自腹である。
こんな出費をしてしまったんだから、ジョギングでも始めたくなるのではないか、という思惑もあるが、それにしても大きな金額だ。

東京マラソンのスタートは朝9時10分だ。
その前にスタート地点の新宿都庁に向かうために早起きをした。
自宅であらかじめ昨日買ったランニングウエアを着て、そのうえから普段着ている服を着て(スポーツマンが着るようなウインドブレーカーを買う予算はなかった)、電車に乗ってスタート地点へ。

昔からなんで運動する人はあのスパッツみたいなのをはくのか、ずっと気になっていたが、生まれて初めてはいてみて、なんとなくその理由がわかった。
ぴたっと引き締まって、気分がいいのだ。
そして暖かい。
電車の中では汗をかいてしまうほどの暖かさだ。


ランナー衣装はこの服の下に着ている
ぴかぴかに光って〜(着替え中)

かなりランナー

スタート地点付近に到着し、着ていた上着を脱いだ。
どうだろう、けっこうランナーっぽくなっているのではないだろうか。


予想以上にランナーだ

準備運動の仕方がわからない

スタートまで時間があるので(といっても僕は出場しないのだが)、準備運動をしている風な写真でも、と思ったのだが、スポーツをしなれないので、どうやって準備運動をすればいいかすらわからない。



なんかこんな感じですかね
どうしてもぎこちない

スタート

スタート地点付近はかなりの人混みで、すぐそばまで近づくことができない。
周辺は交通規制もされており、あたふたとしているうちに、「ドーン」という都知事のスタート合図が聞こえてきた。
わーっという歓声が観客から上がる中、僕は「あ、はじまっちゃった」とうろうろしている。

まわりの人からすると、僕はうっかりしていてスタートに間に合わなかったランナーに見えるのだろう、気の毒そうな視線が向けられているのがはっきりとわかる。


号砲がなる(向こうの方で)

たくさんの観客が見守るなか
ランナー達が続々とスタート

そして僕は完全に出遅れちゃった人だ

地下鉄で移動

実はこの大会には友人が出場している。
その応援のために、スタート地点から沿道へと地下鉄で移動することにした。


改札を通って
地下鉄移動

芝公園の増上寺で応援

地下鉄の中は、僕と同じように、選手を応援するために移動している人が多かったようだ。
その人達から、明らかに驚嘆しているという視線が僕に刺さってくる。
地下鉄に乗ってズルをしている人だと思われているのか。
近くにいたカップルが「ちょっと、あの人!」という会話をしている声も聞こえてくる。
いままで当サイトの撮影でいろんな事をしてきたが、こんなに周囲の反応があるのは今までにない。
きっとゼッケンがリアルすぎてしまったのだろう。
予想以上の反応に戸惑いつつ、応援地点へと向かった。


応援の群衆をバックに記念撮影

走っているみたいな写真を

応援する友人の通過まで時間があるので、付近の交通規制の影響で自動車が走っていない道をちょっと走ってみた。
そこで撮影をお願いし、マラソンに出たような記念写真を撮ってしまおうという腹づもりだ。



ランナーと一緒に

10年後くらいに見返したら「あれ、俺マラソン出たっけ」と思ってしまいそうな写真が撮れた。
とても満足していたら、撮影をお願いした友人が「もっと参加しているっぽい写真が撮れるよ」と言う。
この友人は趣味で自動車レースの写真を撮影していて、躍動感のある”流し撮り”が得意中の得意なのだ。

彼のアドバイスに従い、コースを走るランナーが見える応援スペースで、立ち止まったまま体を前後に動かしてみた。
それがこの写真だ。


沿道で体を前後に動かしただけで走っているっぽくなった

出走した気分

もう、完全に「東京マラソン出ました」といってもいい写真が撮れた。
ここまでくると詐欺的ですらある。
完璧すぎて、逆になんだかむなしくなってきた。
みんながんばって走っているのに、僕はなにをやっているのか。


なんだこのむなしさは

ゴールはどこだ

心が折れそうになってしまったが、僕には僕のやるべき事がある。
出走者たちがゴールをめざすように、僕もゴールをめざさねば。
僕のゴールはいったいどこにあるのだ。


ゴールを求め、さまようランナー

とりあえず、喫煙場所を見つけたランナー

ちょっと寒いよね、と凍えるランナー

日本酒を飲んであたたまるランナー

腹がへったのでファミレスに入るランナー
スパゲッティをうまがるランナー

一気に飲み干すランナー

ふたたび移動

すっかりゴールを見失ってしまった感があるが、東京マラソンはまだ続いている。
次なる応援スポットへ移動しよう。


また刺さる視線
それにもくじけず
応援をする

あと少し

沿道で応援をしていると「あと少し!」という声がかかる。
ここは40km地点、あと2kmほどでゴール地点だ。
東京マラソンも山場を迎えている。
参加者は苦しそうな表情の人、まだまだ余裕の人、足を痛そうに引きずりながら歩いている人など様々だ。

ところが僕はその人達とは無関係に沿道にいる。
格好はすっかりランナーなのに、埋められぬ溝は確かにそこに存在している。


そして僕もまた
ゴール地点をめざす

ゴール

スタートから4時間以上かけてゴール地点である東京ビッグサイトに到着した。
そこで記念撮影をしたが、なぜか妙に満ち足りた気分になってしまった。
いわゆる感動というやつである。
途中地下鉄に乗ったりゆりかもめに乗ったり、スパゲッティ食べながらビール飲んだりしたのに、ゴールに着くとなんとなく感動してしまうのだ。
なんと安普請な感動だろうか。


感動のゴールシーン(走ってないけど)

やっぱりちゃんと出たい

こんなので感動するくらいなのだから、実際に完走したときの充実感たるやかなりのものだろう。
来年はこのような形ではなく、ちゃんとランナーとして参加してみたいものだ。
そうすれば、ウエア代の14000円も無駄にならないし。

当日ツイッターでつぶやいたら、本当に参加していると思わせてしまったようで、とても申し訳ないと思ってます。
ごめんなさい。


 
 

 

 
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