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ロマンの木曜日
 
ダムのネーミングライツって何だ!?

どうしてダムなのか

前ページでも書いたように、宮城県ではスタジアムやホールだけでなく、既に公園や県有林といった公有財産にもネーミングライツが行われている。それにしても、その次にダム、という発想はかなりの飛躍だと思う。いったいどういう経緯でダムのネーミングライツを思いついたのだろう。

「県の財政が厳しい中、土木関連の予算も徐々に削減されてきているのですが、それでも治水、利水の安全度は保たなければなりません。県有財産を最大利用して歳入を上げようという流れの中で、土木施設のネーミングライツを考えたんです。」

これだけ不況が長引いて、企業も自治体も財政が厳しいのは想像がつくけど、それにしてもダムとは思い切ったなあと思った。それこそ実用一辺倒だし、お役所直轄の施設で、一般人にはなんというか「お固い」イメージがあると思うのだ。

「県が管理しているスタジアムや公園がネーミングライツしているのを見ていろいろ調べたときに、土木構造物がネーミングライツできない理由が見当たらなかったんです。」


ということは理論上こういう県道のトンネルや
県道の橋脚1本1本にも名前がつけられるわけだ

「河川課の施設では、ダムのほかに河川や水門、排水機場などもありますが、河川の場合は河川法上難しく、また工作物ではなくもともとそこにあったものなので、地域の歴史や住民感情の観点からも難しい。水門や排水機場は可能ですが、そもそも存在自体がマイナーなので効果がないのではないかと。」


確かにこれに名前をつけていいと言われてもなあ
(糠田排水機場/埼玉県)
中はこんなにかっこいいのだけど
(糠田排水機場/埼玉県)

実際、家の近所の川がある日突然「デイリーポータルZ川」となったら驚くし、スポンサー企業にいいイメージはつかないかも知れない。水門や排水機場などは(どちらも個人的には大好きだけど)人々が気づくかどうかさえ疑問だ。

「そこで、ダムならランドマークとしてある程度認識されているし、湖畔や周囲の公園も含めれば来場者も少なくないので、PRになるのではないか、と思ったのです。」

長年ダムをめぐっていても思うけど、やっぱりダムはその地域にとっていい意味でも悪い意味でも、ものすごく目立つ。僕はいい部分をアピールして、ネガティブになりがちなダムのイメージを変えたり、建設に伴って苦労された地域を少しでも活性化できないかと思っているのだけど、ダムを建設、管理している側からも、違うアプローチでPRしようという動きが起こったのだ。事実このアイデアは、元を辿ればダム管理所の職員さんが発案したものらしい。


小さくてもダムは目立つ施設(宮床ダム)
立ち寄る人も多い(大倉ダム)

「第一は歳入増が目的ですが、企業の力を借りて周辺も含めて活性化できれば、という思いもあります。」

それでも、ふだんテレビのニュース等を見ていると、建設の是非だったり政争の道具だったり、あまりいいイメージで報道されることはないと思う。洪水を防いだダムの活躍なんてまず人目につかないし、逆に水不足で干上がったダム湖を映して、さもダムがまったく役に立っていないかのような報道もよくある。そんなダムに名前つけて、企業イメージが下がることはないだろうか。

「確かにマイナスイメージはあると思いますが、そこを逆手にとって、治水、利水の役に立っているダムというものに名前をつけることで、企業イメージを向上させることもできるのではないでしょうか。」

「契約書には『ダムの機能上、万が一災害などでスポンサーのイメージダウンが起きても県は一切責任を負いません』という一文が入ります。しかし、河川管理に携わる者として、やっぱりダムのマイナスイメージは払拭したい。スポンサー企業さんと一緒にダムを活性化していければと思います。」

その話、乗った!ぜひ僕が買いたい!


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