大阪には「木の葉丼」という丼物がある。知らない人が聞いたらちょっと不思議に思う食べ物だ。木の葉?
この「木の葉丼」を大阪まで食べに行ってみました。
(斎藤 充博)
木の葉丼はカマボコとシイタケ
木の葉丼の具は、カマボコとシイタケとネギの卵とじ。別に本物の木の葉は入っていない。どことなく、肉が買えない人のためのちょっとかわいそうなメニューという気がする。
大阪では非常にポピュラーで、そこら辺の食堂やうどん屋で食べられるらしい。
…ということは知っていたので、特に店を決めずに来た。しかし、いざ見つけようとするとなかなか見つからない。その一方で大阪のランチ事情はとても充実していて、目移りしてしてしまう。
…本題に入る前にうどん食べてしまった。大阪のうどん、ダシが効いていて凄くうまい。個人的に、うどんといえば武蔵野うどんをひいきしているのだけれど、こっちのもやっぱり相当な物だ。
ここで年末最後に書いた記事(こちら)を思い出して、何とも言えない気持になった。
木の葉丼を見つける
見つけたのは御堂筋線本町駅のすぐ近くにある、「とんぼ」というソバ屋。
メニューを見ると右上に「とんぼ定食」というのがある。本当に昆虫のトンボがおかずだったら面白いなー、と思いつつ今回の目的の木の葉丼を注文した。
最初、「肉が買えない人のためのかわいそうなメニュー」と思っていたので、正直そこまで期待はしてなかった。
しかし食べてみるとこれがうまい。トロットロの卵に、細長く刻んであるカマボコの食感が楽しい。そこにダシを憎いほど吸ったシイタケがアドリブ的に絡んで来る。
丼一つの一体感としては、カツ丼とか親子丼よりも上かもしれない。「かわいそうなメニュー」とかいってすいませんでした。
高級な木の葉丼
せっかくなのでもう一杯木の葉丼を食べてみることにした。次に行くのは大阪でも有名な高級うどんの店「今井」。ここにも木の葉丼はあるようだ(今度はちゃんと調べた)。
メニューを見ると、木の葉丼は1200円。結構な値段がする。ちなみにここでは親子丼は1300円で、親子丼の方が高い。
「とんぼ」よりも卵に火が通っていて、食感はフワフワ。
そしてこっちは高級店だけあって、素材の一つ一つがうまい。「とんぼ」で僕が感じた、卵とカマボコとシイタケのアンサンブルに、シャキシャキの青ネギ、それから一つ一つ粒の立ったご飯が参加してくる。
…とかなんとか味のレビューを考えている間に、食べ終わってしまった。
大阪の人たちは木の葉丼をどう思っているのか
木の葉丼は大変おいしかった。現地の人たちは木の葉丼をどう思っているのだろうか。僕は2年前まで大阪で会社員をしていた。その時の同僚に聞いてみた。
「知ってるけれども食べたことない」 「別にうまい食いもんじゃない」 「食べないですね」 「いや、食べんこともないけれどな」
うーん、やっぱりこのくらいの扱いか、という気がする。
ちなみに久しぶりに会ってみた元上司はこんな感じ。
結局、肉なんだろうな
木の葉丼はとてもうまい。しかし木の葉丼を置いてあるお店にはほとんど「親子丼」とか「カツ丼」も置いてあるのだ。丼物の王様みたいなやつらだ。それらのメニューを控えて、あえて木の葉丼を食べるチョイスはかなり勇気がいる(誰だって飯食う時は一番良い選択をしたい)。
それ自体はそこそこイケるのだが、丼業界の競合のキツさに影が薄くなってしまっている、というのが木の葉丼の状況だろう。
埼玉の自宅に戻ってこの原稿を書いていている今、カツ丼が食べてくなって来ている。