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ひらめきの月曜日
 
90年代の女子の部屋、探訪

香港が流行ってた気がする

90年代は、香港発のカルチャーが流行っていた。具体的に言うと、『恋する惑星』をはじめとした王家衛監督の世界観と、クリストファー・ドイルの映像、 ウィン・シャのスタイリッシュな写真に、欧米にしか目を向けてなかった日本人が「アジアかっけー! 再発見! 見ようによっては超オシャレー!」と盛り上 がった時期であった。って、こんなザックリした説明でいいんだろうか。



私もまんまとずっぱまり、『恋する惑星』は心の映画で、作品中でヒロインだったフェイ・ウォンが大好きだった。でも、映画を見直すのがこわい。青春当時に好きだった映画って、見直すと「どこにはまったんだろう…?」と落ち込むことが多いので。

でもあのキラキラした、映像の中の香港は、当時も、今も、存在しないんだろう。あれは作品の中だけのものだったんだ。大人になったので、そういうことは、ちょっと分かるようになった。


L香港旅行に行ったのと同時期、韓国へ行って、当時のオシャレ雑誌を買って帰っていたのだが、いま見るとすごくおぼこいというか何というか…。こういうノリから、韓国カルチャーが成長していって、K-POPがアジアを席巻するなんて、誰も予測出来なかったですよ。


ガーリィが流行ってた



90年代女子に避けて通れない形容詞、それは「ガーリィ」。

今は「女の子っぽいもの全般」みたいな、さほど意味のない言葉になっているけれども、当時は、「女の子って、技術力とか実力はないけど、センスは結構イケてるよね〜」
というような、差別的ニュアンスを含んでいた…と思う。
それがものすごく嫌で、「ガーリィ」って言葉に過敏になっていた。

別に自分はアーティストでも何でもなく、たんに「90年代を生きる若い女」っていうだけで、該当者になっちゃうのが、しんどかったのである。

ああ、ガーリィが分からないまま、「ガール」ではない年齢になってしまった…。残念である。でも、とってもラクになった。

そもそも「女子だからガーリィって」くくりが雑ですよ、雑。


女性バンドばっかりの音楽レーベルの、ポスター。絵はロッキンジェリービーンさん。何というか、こういうのはガーリィとは言わないんだよねえ。もっと「ちゃんとしてない」のがガーリィって呼ばれていたんだよねえ。


昔の手帳は恥ずかしい



昔の手帳が、捨てられず、たくさん保管してあった。

私は手帳を可愛く書くタイプではないので、「あっさりキタナく」予定が書いてあるだけ。

バイトの予定、卒業旅行(ロンドン〜パリ!)の予定、ライブの予定。

でも時々、手帳のはしっこに、「手紙の下書き」が書いてあった。何だこれ。



「たん生日おめでとう かしてた本はあげる」…多分、フラレた男子に向けた手紙の下書きかと思われる。ヨリを戻したかったんであろうか。こんな書き方じゃ、絶対に戻らないというのに。

手紙の下書きはまだしも、よっぽど、知らない人と喋ること=電話が苦手だったらしく、電話の下書きもあった。

「すいません、そちらでカットモデルの募集をしてるときいたんですが…」

それすら、アンチョコがないと、かけられなかったらしい。
しっかりしろ、しっかりしてくれよ、若い時代のワタクシ! おバカ! おたんこなす!

4年間くらい好きだった人の写真が、手帳にはさまってた。うわああああ。でも、もう、顔を見ても、恋愛方向に「ドキッ」とはぜず、ただただドン引きな自分に、ある意味ガッカリ。もう枯れたのかも…。


いただいて、捨てられないもの



いただいたんだけど、捨てられないものもある。

スパイスガールズの人形。ロンドン旅行に行った友人から、貰った記憶がある。ロンドン土産は普通に「紅茶」や「雑貨」を期待していたので、「あ……りがとう」と、絶句しかけたのを覚えている。

中国製の、ランプを貰ったこともある。一度、ライター用のオイルを入れて火をつけてみたことがあるけど、それっきりである。

今の女子もそうなのかもしれないけど、「自分用には買わないけど、ちょっと面白くて、一瞬ウケるもの」を、人にあげちゃう傾向があるんだと思う。私はそれを許容するキャラだと、思われていたのかもしれない。ひょっとして、ナメられていたのか…?


叔母から貰った、おとなしめのイヤリング発見。頂いた当時は使わなかったけど、今ならイイかも…。友人から貰ったパリ土産のポストカードセットも、今見ると、しみじみカワイイ。寝かせると良く見えるものってあるなあ。


なんでこんなもの買ったのか



部屋には、「もう、これ絶対使わないよね」という雑貨が、多々ある。

まっ黄色の、魚型のペンケース。学生の時に使っていた。取り出すと、周囲がギョっとする様子が楽しかったのを覚えている。こういうの、好きだったんだなあ…。今は「筆記具は書けさえすればいい」と思うので、ノートにペンをはさんでいて、筆入れすら持ってない。

パティ&ジミーのミニレターセットは、90年代当時、フリーマーケットで「デッドストックだ!」と言いながら購入したものなので、70年代くらいのものだと思う。下手すると価値があるのかも。

ああ、捨てられない。困った。


「おもちゃの缶詰」を、実は持っている。中身は秘密だ。あとラムちゃんのプラモデルも持っていた。かわいくないパッケージだなあ。


手帳より恥ずかしいもの



ひとりプリクラの写真が出てきた。これ、多分、25.6歳くらいのものだと思われる。曖昧な顔をしている。なんだこれは。

私は美人ではないし、どちらかというと醜形恐怖だったので、写真を撮られるのが極度に苦手だったんである。でも「撮られたい」という強い欲望が同時にあって、結果的に「ひとりプリクラ」になってしまったんだと思う。半年とか、1年くらい、ハマっていた気がする。

そんな自意識丸出しな顔をしてるから、恋も仕事も上手くいかないのよっ、リアルで貴女の写真を撮ってくれるダーリンがつかまらないのよっ、と説教したくなってくる。

見られるのが苦手、って考えてるのに、「ウィッグ」を多数持っていたのも謎だ。世間で流行る、ずーっと前。バンダナと合わせて、髪をセットしていた。多分、似合ってなかったんだろうなあ。


さよなら青春、90年代の私

結婚も出産もせず、ライフスタイルがあまり変わらないので、子供のまま大人になってしまった……と思っていたのだが、そうでもなかった。
昔の私は、マメで、ハンドメイドが好きで、もっとナイーブで、女であることに苦しんでいた。

今もベースは変わらないけど、いやあ、かなり、ずうずうしくなった。感性も摩耗しまくりだ。

この「90年代の女の子」が自分の中にいることを忘れずに、イチゼロ年代を、精進していく所存だ。

がんばろう私、そして同世代のアナタも! 同世代じゃないアナタも!!

実は発掘されたノートの中に、ものすごいシモネタの散文も出てきたんですが、無かったことにしました。

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