ある日のことである。私はおでんを作っていた。 すべての具材を鍋に入れ、煮込むこと1時間。いいにおいがしてきたところで蓋をあけてみると、な、なんだこれは。おでんの具が、ちくわから、さつま揚げから、すべてふわふわになってだし汁から浮かび上がっているのだ。おでんって、こんな食べ物だったか?なにが彼らをこのような姿に。
(田村 美葉)
検証:おでん
仮説を検証するため、酢入りおでん製作工程を再現しよう。そもそも、なぜ酢がおでんに混入したかというと、それは田村家伝統のずぼらな性格に一因がある。
坊ちゃんが親譲りの無鉄砲なら、私は親譲りの一挙両得派だ。両得どころか、常に濡れ手に粟を狙っている。そんなわけで、里芋の下茹で&練り物の油抜きを一挙にすませる、我ながらナイスなアイディアを思いついたものだと考えたのであるが、里芋の下茹で時に、ぬめり防止の酢を投入していたのだ。
おでんのふわふわ結果
すべての具材が通常の1.2〜1.5倍程度にふくらみ、すわ濡れ手に粟到来か、と期待したところ、のびたちくわは、あまり美味しくはなかった。おでんにも「のびる」という概念があることを発見した、26歳の冬である。
仮説どおり、「酢 ふわふわ」で検索すると、様々なふわふわ料理がヒット。 おでんは美味しさとしてイマイチであったが、ふわふわ歓迎の食べ物には、この手は使えるんじゃないだろうか。 私の好物2種でさらに実験を続けよう。
実験1:お好み焼き編
やってきたのは、実家(たまたま帰省しただけ)。田村家伝統の長芋入りお好み焼きで実験する。
お好み焼きのふわふわ結果
ふわふわびっくり度:★★★★☆ ふわふわの美味しさ貢献度:★★★★☆
実験2:ホットケーキ編
酢入りお好み焼きの評価の高さに気をよくし、翌日は、ふわふわ界の帝王、ホットケーキに戦いを挑んだ。
ホットケーキのふわふわ結果
ふわふわびっくり度:★★★☆☆ ふわふわの美味しさ貢献度:★★★☆☆
実験3:湯豆腐編
さて実家では、実験結果がひさしぶりの一家団欒の食卓を台無しにしかねなかったため、失敗しそうにないチョイスで臨んだのだが、年があらたまって最初の記事、このまま終わるわけにはいかないだろう。もっとスリリングで冒険味あふれるなにかを、ふわふわにしてしまおうではないか。 そこで選んだのは、湯豆腐。 湯豆腐で「すが立つ」といえば失敗の代表例。ふわふわ=空気がたくさん入ってすっかすかになったり、あるいは大爆発したり、するんじゃないか、ひょっとして(知識が足りないうえに、豆腐が爆発したところでそれほど冒険でもないけども)!
湯豆腐の衝撃のふわふわ結果
ふわふわびっくり度:☆☆☆☆☆ ふわふわの美味しさ貢献度:★★★★★(豆腐がうまい)
結論:どっちもおいしい
ふわふわの食べ物は美味しいということがわかり、ふわふわではない食べ物もそこそこおいしい、ということがわかった。 いやいや、それはそうなんだけども、お酢には他に、卵焼きや、納豆、はては洗濯物までふわふわにする効果があるということである。湯豆腐はちょっと本当に効果があるのかどうかあやしいのだが、とりあえず、私は今後湯豆腐をするときは酢を入れるようにしようと思う。そしてこの冬は湯豆腐をたくさん食べようと思う。