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ちしきの金曜日
 
ふらっとドライブ〜諫早湾干拓堤防道路〜


 

ニュースを見ると人は何かひとこと言いたくなるものだ。
時事ネタ、政治ネタ、野球ネタ、いろいろあるが、深く考察した文章から吐き捨てるようなコメントまで、ネット上では様々な意見を見ることができる。 

しかしそのソースとなっているテレビや新聞といったマスメディアによる報道も、事実を淡々と報道しているわけではない。それぞれのメディアが持つ主義主張に都合のいいよう、時として偏った報道がなされる。といったことは昔から言われてるが、インターネットの普及により情報の発信元が多様化したことで、ますます浮き彫りになってきている。

…と、堅い言い回しで始めてしまったが、要するに気になることはできるだけ自分の目で確かめるべきじゃないかと。

関係各所を取材する!とかそんな強い意気込みはなくとも、現地に行って雰囲気を眺めるだけでも、そこで感じたことは家でニュースを見た感想とは何かが違うはずだ。

ということで、話題の諫早湾干拓堤防にドライブに行ってきました。

T・斎藤



海の中に道

諫早湾干拓事業は、海を巨大な堤防で堰き止めている。
まずはグーグルマップの衛星写真で見てみよう。


(地図には東シナ海って書いてあるけど普通は有明海と言う) 大きな地図で見る

こちらがその全貌。
堤防部分は、「堤防道路」として2007年から車で通れるようになった。その部分を拡大して見ると…



堤防部分をアップで。ここを車で通れる。 大きな地図で見る

なかなかヤバいビジュアルをしていることに気付く。

北海道のサロマ湖なども、地図で見ると
「これ大丈夫なのかなぁ・・・」
と不安を感じるものがあるが、それに通ずるソワソワ来るビジュアルをしている。

で、行ってみるとこんな風になっている。


かなり現実離れした光景

という、
「あぁ、また人類すごいことやっちゃったなぁ…」
という感じのところなのだった。

堤防道路は一直線な上に信号も無く、高速道路ばりに快適に走ることができる。その上無料。


堤防道路の端より(吾妻側)。右が海側、左が干拓地側。
海側を眺める。
何かを採ってる人の姿が見えた。
干拓地側は工事をしていた。
道路はひたすら一直線。ドライブに最適。
排水門の横を通過。排水門は北と南に2ヶ所ある。

日本一でかい池

堤防道路のほぼ中間地点に、休憩所&展望所がある。
ここに車を停めて辺りを眺めた。


車を停めて展望できる場所が用意されている。トイレもある。
諫早湾干拓事業についての説明ボードなどがある。
あちこちで散々失敗事業だなんだと言われたせいか、説明は懇切丁寧です。
向こう岸が見えないほど広大だが、「池」です。

堤防で仕切った干拓地側の水域を「調整池」と呼ぶ。
池と言ってもちょっとした湖よりずっとでかい。
日本一の広さの池だ。

他にデカい池としては、鳥取県の湖山池、香川県の満濃池などが有名だそうだが、地図で確認したところ諫早湾の調整池の方が比較にならないくらいデカかった。

いや、そもそも池って言ってるけど海でしょ?という話があるだろう。が、1997年に堤防が閉め切られてもう13年。
その間に水質の淡水化もかなり進んだという。

実際、大きさ的に言えば明らかに“海”だが、水の色などを見ると「池かな」という感じがする。


水を見ると、意外と池。
そして水鳥がいっぱいいた。

調整池には、ものすごい数の水鳥たちが休んでいた。

のどかだ。
ひたすらのどかだ。


次に歩道橋を渡って海側を見てみよう。
右が有明海。左が調整池。
海だなぁ。

海側は、当たり前なんだけど海だ。
そして調整池側とはだいぶ雰囲気が違うのがわかる。

衝撃の光景

ここで、私は衝撃的な光景を目にした。


みんなで何を見てるのかな、と思ったら・・・
調整池側の水を海に流している先に、何か黒っぽいものが見える。海草かな…と思ったら
なんと魚だった。
ボラの大群がひしめき合っていたのだ。

この光景には驚いた。

そんなにまで堤防の内側の水を欲しているのか?!
そこまで内側の水は栄養満点で魅力的だと言うのか?!

しかもこれは私の大好きな魚、ボラではないか!

ボラが大群で、
「早く開門してよ〜」
と訴えているのか??



やっぱりボラ

と思ったら、そうじゃなかった。

知り合いのこの手の専門家に報告したところ、
・ボラは汽水域(海水と淡水が混じり合ったところ)が好きなので、たぶんそこの混じり具合が好きなんだろう。
・よく川の河口部分に集まったりする。
・また水温がそこだけ温かいとかそういう理由で集まったりすることもあるので、一概に栄養が豊富とかは言えない。

とのことだった。
なるほど単にそういうのがボラの好みだっただけか。

個人的感想

最後に、これは余計かもしれないが
一応、私個人の感想も書いておこう。

諫早湾干拓事業が有明海全体の漁業に影響を与えたか?という話は、まぁこれだけのことをやれば何かしら影響はあったんじゃないだろうか。が、一度変えてしまった環境は、開門しても元には戻らないだろう。実際堤防の内側はかなり“池”化していた。生物は環境に適応して繁殖していくものだから、むしろせっかくできてきた新しい生態系が開門によって再び崩れかねない…。

といったことを、のどかに休む水鳥たちや汽水域に集まるボラなどを見ながら考えたのだった。一市民として。

帰りに久しぶりに牡蠣小屋に立ち寄った。
相変わらず激うまだった。

 
 

 

 
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