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ロマンの木曜日
 
「東京水」をさがして


ビルのすきまから湧く水

東京のビルのすきまから水がどくどく湧いてる、そんな光景を見た。

ビルからの排水か、と思ったんだけど、調べてみるとほんとうの地下水が表に出たものらしい。つまり自然の湧き水だ。

東京都はいま、上水道を東京水として売り出している。でもコンクリートの街角に唐突に湧いているこの水こそ、本当の東京水といえるんじゃないか?と思った。

そんな「東京水」をさがしてみました。

三土たつお



目黒付近にて

最初にぼくが見た光景はこんなです。場所は、JR目黒駅からだいたい20分くらい歩いたところの路地。


なかなか雰囲気のある道

昼からけっこううす暗い路地。そのさきにこんな光景がみえてきた。


なんだこりゃ

どう見ても路地の壁から水が出てる。しかも結構な量だ。近づいてみると、こう。


じゃばじゃば

うん、水だ。壁から水が出てる。で、それがなぜかバケツで受けられている。いったいこりゃなんなんだ?

見上げると、上は住宅。

 

種明かし: 湧水(ゆうすい)と暗渠(あんきょ)

こりゃなんなんだとうそぶいたけど、実は最初から分かってたのだった。ここにこれがあるのを分かって、それを見にきたのだ。

ぼくが歩いていたのは、もともとは羅漢寺(らかんじ)川という川の流れていた跡。川は今では下水となって地下を流れている。そういう場所を暗渠(あんきょ)という、ということはこれまでも何回か取り上げてきた。

暗渠のみどころの一つに、このような湧き水がある。東京の都心を歩いていて、壁の足元からこんな形で天然水が突如湧き出ているのを見るのは相当な驚きで、とても印象深い。

では、暗渠で湧き水が見られるのはなぜか。

 



大きな地図で見る

上の航空写真の真ん中らへんが、今回の湧き水のある地点。でもこれだけでは何も分からない。

そこで、高さによって色を塗り分けた地図でこの付近を見てみよう。


東京地形地図を Google Earth で表示させたものです)

湧き水の地点は、赤い丸のあたり。むかーしむかしに、羅漢寺川がこのあたりを削った。地図の左のほうが水源で、右が下流。そこでこのあたりには川跡にそって崖が残されている。

このあたりに降った雨は地下にしみこみ、やがて崖下の、具体的にはさっきのパイプから表に出てきた、というわけ。このような湧き水を、崖線(がいせん)タイプの湧水(ゆうすい)というらしい。


じゃばじゃば

この日は暖かい日だったが、水はひんやりと冷たい。透き通っていて、いかにも井戸水のようだ。一口なめてみる。うん、ふつうにおいしい。なんの臭みもない。

実はこの水については目黒区で水質調査が行われている。その結果は、汚くはないけど常用で飲料水としちゃだめよ、というようなものだ。実際、近所の人も、以前はごくごく飲んだりしたけれど、保健所の人にそのように言われてからは飲んでない、といっていた。

そこで、この記事としては、これらの湧き水を飲むようなことはけして勧めません。水道水に求められる基準は満たしていないし、また水質は常に変化しています。


結構な水量

でもそれは分かった上で、ぼくはこの水を飲みたいと思った。

まさかぼくらの住んでるこの東京で、住宅街の真ん中で、こんな自然の湧き水が残っているとは思わなかった。自分が本当にこの東京で暮らしているというなら、この土地に湧いた水を飲んでみたい、飲まなきゃいけない、とそんな風に思った。

あとはまあ、飲んだほうが記事にしやすいなと思ったのでした。


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