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はっけんの水曜日
 
給湯室でする現代版茶道

家元(仮)インタビュー

CNNの記者が首をひねりながら(気のせいだったらいいのですが)帰ったところで、実際に給湯室でのお茶会を体験する前に、会議室に場所を移して、取材が続いて気が大きくなっている家元(仮)にインタビュー。

ちなみに本日は当サイト編集部の石川さんに同行いただいた。


石川さんにもスーツで来てもらいました。

給湯流ってなんですか


  今日のお茶会がどんなものかわかっていなくて、お土産にミスドでドーナツ買ってきましたが、ちょっと違いましたね。まず基本的なところで、給湯流茶道とはどういうものなのでしょう。
家元(仮) 全部がそうという訳ではありませんが、茶道っておばちゃんたちが着物着て、 「あなたその着物、どこで買ったの〜」とかいいたいためにやっているイメージがありますよね。もちろん茶道を極めている偉大な方々もたくさんいらっしゃいますが。
  ありますねー。お金持ちじゃないとやらない、というか、できないイメージが。

「かならず儲かるチュニジアの金融商品がありましてですね〜」とマダムを勧誘している訳ではない。

家元(仮) もともとは信長とかの戦国武将が、毎日の戦の合間に、 利休の狭い茶室にきて一服していたのが茶道なんです。だから今のようにおばさまがオホホといいながら飲むのは、ちょっと違うんじゃないかなと思うんですよ。
  本来の茶道と現代の茶道がずれてしまっていると。
家元(仮) そう考えると、この21世紀における戦国武将はサラリーマンとOLじゃないかなと。いつ下剋上やリストラされるかわからない、蹴落とされるかもしれない中で、毎日戦っているのは私達だ。だから現代の戦国武将に茶道を解放しようということではじめたんです!
  なるほど、現代社会で茶道を必要とするサラリーマンやOLのための茶道なんですね。

家元(仮)「抹茶はコーヒーよりもカフェインが多いから、会議の前に一杯飲むと、いつもよりおしゃべりになれるの。」

家元(仮) はじめたきっかけは、モーニングで連載中の「へうげもの」というお茶にまつわる男の戦国ロマンが描かれたマンガがあるのですけど、それが友人たちで流行っていたから。
  あ、話が急にライトになりましたね。
家元(仮) 作法を解釈し直して、なにが一番利休がいいたかったことを私達が考える。利休が乗り移るくらいの気持ちです。
  利休、乗り移りますか。家元(仮)は、もともと茶道をやっていたのですか?
家元(仮) メンバーに一人、茶道を10年くらいちゃんとやっている人もいるんですけど、私も一度ちゃんと茶道を習ったほうがいいかなと思って、最近裏千家を習いに行っているんですよー。トラディショナル茶道業界では激しくペーペーです…。
  …(三秒の間)…家元に(仮)がついている意味がわかったような気がします。

家元(仮)「茶道はオフィスラブにも効きますよ。たくさん抹茶を入れる濃茶(こいちゃ)は、恋茶と呼んでいます。」

給湯流の作法


家元(仮) 利休は侘び寂びとかいって、狭い茶室でわざとやっていたのですが、それには意味があって、その時代は刀を持っていたけど、狭いと入れないからはずさせて入らせることで、全員を平等にあつかいます。

  ほうほうほう。
家元(仮) 現在の戦国武将である我々にとっての刀は、IDカードなんです。なので、給湯室に入る前に必ずIDカードをはずして身分を忘れて入室します。
  上司と部下の関係を忘れてお茶をするわけですね。
家元(仮) 普通のお茶会はお釜でお湯を沸かすんですけれど、お湯の注ぎ方は手の角度とか全部決まっています。給湯室でポットでやる場合も、いつロック解除ボタンを押したのかわからないような角度で、スっと美しく押すんです。
  そういうルールというか作法が給湯流にはあると。

家元(仮)「給湯流も15代くらい続くと給湯室のない時代になるから、わざわざ給湯室を復刻させる派と、今ある場所でやるべきだという派で、裏と表に分かれたりして。」

家元(仮) どんどん勝手に給湯流の作法をつくって、千利休をパロディにしてクスクスクスみたいな(悪い笑い方)。
  え、パロディっていっちゃっていいんですか。
家元(仮) いや、いわないほうがいいですね。まあパロディはパロディなんですよ。でもパロディっていっちゃうとダメですね。
  ですよねー。
家元(仮) はい、真剣です。逆に作法が今の時代に形骸化するとただのパロディになりますし、「IDカードをはずす」みたいに利休のスピリットをガチで受け継いでいる作法ならば本当の流派になると思っています。
  でもこういうことやっていて、本気でお茶をやっているひとから怒られませんか?
家元(仮) 正直、毎日びくびくしています。でもアートとか利休が好きな人は「そうそう、そうなんだよ!」ってわりと共感して応援してくれるんですよ。「利休がいっていたことは現代でいうこれだよね!」って。
  それは心強いですね。
家元(仮) まあ超一部ですけど。
  ですよねー。

「石川くん!」「石川さん!」

こちらがなにを聞いても、熱くまじめに答えてくれる家元(仮)なのだが、聞けば聞くほど、給湯流というものが本気なのか冗談なのか、真剣なのかシャレなのかがわからなくなってくる。

そのあたりの受け取り方の難しさを、石川さんの行動で感じとっていただければ幸いだ。

「いつもどこまで本気なのかわからなくて怖いっていわれます。こんなに本気なのに!」

いや、やっぱりわかりませんって。


石川さんにドーナツ食べちゃえとそそのかした人(同行したライターのほそいさん)。

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