適当な単語に「列車」とか「電車」って言葉を付けてみると、それだけで嬉しい感じになる。
例えば、ビール電車。風呂列車、カレー電車、ソーメン電車、犬電車、猫バス、しゃもじ特急、どんぐり急行、洗濯列車、ぞうきんがけ列車… という具合に、たいていのものは楽しそうな語感になる。 (ただし「通勤」は除く)
で、今回は「ジャズ電車」である。
(T・斎藤)
舞台は長崎の路面電車
電車の車内でジャズを演奏する「ジャズ電車」は、調べてみたら全国にいくつかあるようだ。
今回紹介するのは、長崎を中心に活動しているトロンボーン演奏家・柴田健一さん主催によるジャズ電車、その名も「乗るジャズ」。長崎市街を走る路面電車が舞台だ。
柴田さんと私は少し前に知り合っていて、一緒にパンケーキの食べ放題を食べに行ったこともある。今回、路面電車の中でライブをされると聞いて、すごく楽しみにしていた。
ではさっそく、その様子を動画でどうぞ!
この動画が超かっこよくて、家に帰ってから何十回と繰り返し見てしまった。
出だしの部分はドラムと電車走行音とのセッション。 そのまま、“いかにも鉄道な曲”へと繋がっていく。
長崎の地理に詳しい人向けに解説すれば、松山町電停から長崎駅前方面に向かって走っている。西洋館のトンネルをくぐり抜けたところから曲が始まる。
途中、他の電車とすれ違ったり、交差点ではバスが横切る様子なども見える。そしてトロンボーンを吹くしばけんさんがずるいくらいかっこいい。曲もステキだ。何回見ても飽きない。
ジャズ電車に使われたのは、200形という昭和25年製造の古い車両。蛍茶屋電停から出発し、浦上車庫までを約1時間かけて往復する。
車内には、楽器およびバンドのかたがたキッチキチにおさまっていた。ドラムセットとかコントラバスのような、でかい楽器が電車に乗ってるのがすごい違和感。
これでピアノまで乗ってたら笑ってしまうが、さすがにそれは無理で代わりにギターのかたが加わっている。
しばけんさんは最初イスは要らないと思ったそうだが、電車が走り出した瞬間、「イスあってよかった」と思ったそうだ。他のかたがたは壁に寄りかかるなどして揺れをしのいでいた。
ギター・ソロなどの場面になるとプレイが見やすいよう、しばけんさんが立ち上がって脇に寄るのだが、その時それまでトロンボーン奏者だったのが急に通勤途中のサラリーマンのようになるのが不思議だった。
つり革の威力。 というか普通、トロンボーン奏者はつり革を持たない。
路面電車なので、すぐ横を車やバスが通る。 もちろん、見られ放題だ。
トロンボーンについて
ところで、トロンボーンとはどういう楽器なのか?
私のように楽器に詳しくない人のために一応説明すると、 その特徴は ・U字管の部分を伸び縮みさせて音程を変える。 ・無段階に音程を変えることができる。 ・MAXまで伸ばすとすごく長く伸びる。 ・伸び縮みをまったくさせなくても、吹き加減だけである程度の音階が出せる。
正露丸のテーマや、起床ラッパなどはU字管のスライド無しで吹くことができる曲で、以前それらを聴かせてもらった時にはとても感動した。
見どころ:方向転換
蛍茶屋を出発した電車は、浦上車庫で折り返し、再び蛍茶屋へと向かう。
その際、運転手さんが反対側の運転席に移るのだが、これが前代未聞の光景だった。
では最後にもうひとつ動画を
演奏された曲目は、スタンダードなジャズナンバーから、鉄道にちなんだ曲、長崎にちなんだ曲など多岐に渡ったのだが、その中から、長崎人なら誰でも知っている童唄「でんでらりゅう」をカリプソ風にアレンジしたもの(の一部)をどうぞ。
(カリプソ…カリブ海あたりで発展した黒人音楽の一種)
ちなみに、元の「でんでらりゅう」というのは以下のような歌です。 (NHK教育の「にほんごであそぼ」にも出たから知ってる人も多いかもしれないですが)
柴田さんオススメの髭剃りは5枚刃
という感じで、あっという間の楽しい1時間だった。
ところで話は変わるが、柴田さんが以前、「髭剃りは5枚刃のやつがいい」という話をされていた。一方、私はメンテナンスの観点から4枚刃がベスト(5枚だと刃の刃の間に挟まった石鹸がなかなか取れない)という持論を持っていたので、そんな話をさせてもらったが、その後、柴田さんの頭をさわらせてもらい、その完璧なる剃り具合にすっかり唸らされてしまった(私のヒゲはこれほど完璧に剃れたことはなかった)。それぐらい凄かったです。
柴田健一さんのサイト https://www.sonicborn.com/