あり得ない組み合わせを超えて
炭水化物メニューの組み合わせシャッフルを続けていこう。白マスの中にも、ここは手堅くうまいだろうと思えるものはまだある。
食べてみてもその期待は裏切られない。めんつゆが適度にしみたごはんがおいしい。この組み合わせの料理は一般的にはないわけだが、その事実がもったいなく思えるくらいに相性 がいい。
月見風にするべく、途中で半熟卵を入れてみた。全体に卵のコクが行き渡ってさらにおいしさアップ。これは定番料理にしていいんじゃないかという完成度だ。
続いてもめんつゆは固定して、ベースである炭水化物の方を変えてみよう。
「中華麺・パスタ+めんつゆ」という組み合わせだ。「中華麺+かけつゆ」はすでに紹介した「えきそば」があるが、今回はざるそばのようにつけつゆで食べてみようと思う。
まずはその組み合わせ。見た目に全く違和感がないのは、ラーメン屋のメニューにある「つけ麺」とあまり変わりがないからだろう。やってみて、そういえばそうかと気がついた。
しかし消えたはずの違和感は、食べると少々よみがえる。そばやうどんでなじみのあるこの食べ方で中華麺。微妙に思えるのは、汁に油分がないからだろうか。でもそれゆえにさっぱり食べられて、少し慣れると結構おいしい。食べたことのない「えきそば」もこんな感じなのかもしれない。
続いてはパスタも同様に食べてみよう。麺とつゆを並べた写真には妙な違和感が。それは、つけつゆと組み合わせるには見たことのない太さの麺だからだろうか。
その印象は、つゆにつけると3割増しくらいになる。はっきりとおかしいわけではないけど、なんか変。すっきりしない気持ちのままに口に運んでみる。
疑問を抱えながら食べたにも関わらず、湧いてきたのは既知の感覚。この感じ、すでに食べたことあるような気がする。
思い出されたのは、パスタの店でもよく見かける和風スパゲティ。醤油ベースの味とほんのりとした甘さは、冷静に考えてみれば確かに共通だ。それゆえ、予測していた違和感はなく、思わぬところで知人に会ったような気持ちになった。
ピザ生地で空いているマスは、ラーメンスープとめんつゆとの取り合わせ。想像するだけでも、うまく組み合わせられる気がしないコンビだと思う。
そこをどうにかして、普通に食べられるメニューにしてみたい。「炭水化物+味付け」という基本はどれも同じなのだから、ずらしてもなんとかなるんじゃないか、ということだ。
そのまま食べたら普通においしいことが確約されているピザの表面を削り取る。そこにまずは中華スープを少しお湯で伸ばしたものをピザソースの代わりに塗って、「ラーメンピザ」を作ってみよう。
トッピングにナルトやチャーシューを加えてラーメンらしさを出してみた。トースターから出すと漂ってきたのは、しっかりとラーメンのにおい。改めてわかったのは、ラーメン以外からラーメンのにおいがしてくるという事実に強い違和感を感じるということ だ。
疑問を感じながら食べてみる。サクッとした食感の生地、香ばしいチャーシュー、そして全体を覆うラーメンスープ味。
まずくはない。でも、おいしいという言葉は保留したくなる味わい。理解するのに時間がかかりそうな組み合わせだ。
続いては「めんつゆピザ」。名前からして意味がよくわからない。ピザ生地にめんつゆを塗っていく作業にも、自分は何をやってるんだろうと疑問を禁じ得ない。
ネギと油あげを乗せて作った、きつね風めんつゆピザ。ラーメンスープ以上に、めんつゆの和風のにおいが漂ってくる勢いがすごい。見た目でも、においの面でも解釈しがたいものができた。
その意味不明さに湧いてきた率直な感想は「おもしれえ!」。ビジュアルに強いインパクトはないが、においとの組み合わせのおかしさがすごい。解釈不能なものに遭遇したとき笑いが起きることはあるが、めんつゆピザも同様。声に出して笑うくらいに謎のインパクトがある食べ物となった。
めんつゆピザを食べてみる。ますます深まる謎。「おいしい−まずい」という一般的な軸を超えて存在する食べ物だ。イタリア人がちょんまげを結ってる感じだろうか。
基本的に完全NGというものはなかった、炭水化物メニューの組み合わせシャッフル。手近な食材同士で新鮮な感覚を味わえるので、気分を変えたいとき にたまにはいいかもしれません。