予告通りパンクします
家を出て5分もせずにハル君の自転車がパンクした。 5分の道のりだったので家に戻ってもいいのだが、ハル君の気持ちはすでに目的に向かっていた。このまま行こうと言うのだ。なんてヤル気だ。僕だったら、この日はもうお休みだ。すみませんが帰ってください、と言ってしまうだろう。
パンクしてから10分ほど走り、自転車屋にたどり着いた。 優しい自転車屋さんで「まず自分で空気を入れてみて」とアドバイス。「こっちでやったらパンクしていなくてもメンテナンス料をもらうことになるから」と職人気質の自転車屋は言う。
パンクしてからも走ったためにチューブが外に出ている。それを元に戻す作業も僕らでしなければならないが、慣れていない僕らにはこれがかなり難しい。
チューブを元に戻す作業がとにかく難しい。夏の日差しが強く降り注ぐ。汗が噴出し、僕はカメラを落とし、全体的に気だるい、徹夜で飲んだ朝みたいな空気になっていた。
一生懸命作業をする僕らを横目にハル君が自転車屋さんに「ここ自転車屋ですよね?」と聞いていて、なんて素晴らしい発言だと思った。この子はできる。
結局パンクと誕生日
頑張ってチューブを中に戻したけれど、その作業には40分を擁した。そんなことに40分もかかる僕に工作が出来るのかと言う当たり前の不安をハル君は抱いただろう。さらに、やっぱりパンクしていて自転車屋さんに修理を頼んだ。夏の午後の無駄な40分だった。
自転車も万全になり町田のハンズを目指した。道中で聞いたのだけれど、取材に行った日はハル君の誕生日だったのだそうだ。誕生日に何が欲しいか聞いたところ、ハル君は「焼豚」と言った。渋いチョイスだ。
地主さんとハンズ
ハンズでは石川さんとは別行動で、僕はハル君と一緒に買い物をした。「モーターはどこなの?」と聞くとハル君は「地主さん、こっち」と僕の手を取り、込み合うハンズを駆け抜けた。「地主さん」と言う辺りがしっかりとした子だし、急に手を掴まれて何だかキュンとした。子育てもいいものかもしれない。
ハル君はここで、モーターとプロペラを買った。 僕の工作レベルを知っている石川さんは保険のために独自に材料を買っていた。そんな石川さんの名前をハル君は、結構後まで知らなかったらしい。日も暮れた頃に「え、石川さんって言うんですか!?」と驚いていた。