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フェティッシュの火曜日
 
食べられるサワーを提案する in Summer


「いいの出来たらメニューに入れてあげる」と陽気な大将

先日初めて入った居酒屋に
「カレーハイ」というメニューがあった。

最初は他のお酒を飲んでいたのだが、どうしても気になったので試しに頼んでみると・・・そのまんまカレー味。

何も嘘はつかれていない。しかし「なぜカレーをお酒にしちゃった?!」と一言物申したくなるような味。

居酒屋の大将「だってソレ、好きな人がいるんだもん」

好きな人がいるから出す。そんな単純な理由。それなら私も提案させていただきましょうか。私の好きな食材を使って!

小堺 丸子



舞台は江東区亀戸

亀戸といえば餃子。
しかしながら有名店「亀戸餃子」は人気すぎて夜行くと大概売り切れている。

そう、その日も売り切れていた。ああ残念!と思いながらそのちょっと先を行ってみると屋台村風に色々な居酒屋が入った「亀戸横町」を発見。

その中に今回お世話になったお店「焼きとり亀戸鶏園」があったのです。


餃子の前に、亀戸といえば亀ですけどね
亀戸横町に入っている「焼きとり亀戸鶏園」

いま巷で人気のハイボールに対抗した「ハイストライク」というメニューもあるらしい

おすすめサワーが変わってる

昔は料亭で働いていたという大将が営む一見普通の焼き鳥屋。だが私がその時頼んだカレーハイ以外にも、胡椒ハイ、ポパイ(ほうれん草)、生ハイビスカスサワー、白ごまサワーなど、変わりダネのお酒がたくさん。

なんでこんなに変わっているのばかりなのかと聞くと、
大将「他の店と同じもの出しても面白くないじゃん」

飲み物に面白さを求めますか・・・



「他の店と同じもの出しても面白くないじゃん」

プロレスラーの知り合いに作ってもらったというマスクを嬉しそうにかぶる大将らしい発言だ。

それを聞いて、「じゃあ亀ハイは?鶏入れたら?」と冗談交えて色々と提案してみたが、採算が取れないとか相性が悪いとか、もうそれはやって失敗したとか隣の店がそれやってるとか、なかなかノッてこない。

「じゃあ今度、他のお店に無いサワーを考えてくるので良かったら採用してください」と言ってみると、アッサリOKの返事が。

やった!
自分の考えたお酒がメニューに入ったらこれは嬉しいぞ。

 

「食べられるサワー」にしよう!

その日から、何と組み合わせようかと色々考えた。人気のあるジュースと割る?珍しいフルーツ?うーん、どれも既にありそうな気がするし意外性に欠ける気が。

とはいえそれ以外となると、「カレーハイ」のインパクトの強さからかどうしても食べ物しか浮かんでこない。

もう・・・自分の好きな食べ物入れちゃおう!


という訳で集まった自分の好きなツマミ、おやつ、夏っぽいものたち

さすが大将、判断はやい

決行日当日。お客さんのまだいない時間に行き挨拶すると「何でもやっちゃって〜!」と最初はノリ気だった大将。しかし私が上の食材を並べながら「テーマは食べられるサワーです!他には無いでしょう!」と得意げに説明すると、


「これメニュー化は無理だわ」

早!

・・・というわけで作る前に不採用が決定してしまいました。大将的にはフルーツや野菜なんかを組み合わせたものを期待していた様子。でも素人だもん、本格的なのは浮かばないよ。

とりあえずやってみない事には分からない名サワーができるかもしれないと説得し、これらを使って作ってもらう事に。

 

味の判定人はこの2人

一人では飲みきれないというのと味の評価を公正にするために友人に協力してもらいました。


しっかり者のエリちゃんと、感情が顔に出やすい葛(くず)ちゃん

それでは、大将がメニュー化を再検討してくれるようなものができる事を願いつつスタート!

 

<食べられる提案その1> おでん

最初に選んだ食材は、おでん。いきなりの変わりダネで大将に怒られるかなと思いきや、既におでん屋さんで汁割りを出してるところがあるのだそう。なんだもうあるのか。

他の店でも出す位だからイケるんだろうねと最初におでんにしてもらった。
普通はホットのところ、夏らしくサワー割りで!


さすがに具は分けて出されました
大根やさつま揚げの旨みが味わえるおでんサワー

さて、おでんサワーの感想は?


「匂いがやだ。うぇーって感じ」
「匂いが無理」
「いや、そんなに言うほど悪くない」

友人2人はご覧の表情。冷たいオデンの匂いが微妙だった様子。私は自分で企画した手前もあり「そこまで悪くない」と言ったものの「あ〜あ」感のただよう気まずい雰囲気に・・。
次いこう次!

 

<食べられる提案その2> ソーメン

夏と言ったらソーメン。
あのあっさりとした風味の麺ツユで割ってもらい、さらにその中にソーメンを入れて食べ飲みしてみたい。
食べながら酔える、大人向けソーメン。その味やいかに!


私「じゃあ次はこれでお願いします」 大将「意味わかんねえ」
渋々ソーメンを茹でる大将

呆れ笑顔
麺を入れるところ。いやあ、夏ですなあ

トッピングにミカンも添えて
大人のソーメン出来上がり!

「うん悪くない!」
「麺を入れなければまあ・・・」
「ミカンがキレイ。おでんの後だから美味しく感じる。気のせいかも」

怯える葛ちゃんの視線に気づく事無くチュルチュルと食べ飲む私。氷で冷えたツユ割りの中にソーメンを入れて食べ飲む行為は、新鮮で楽しい。その楽しさを加味してもよいならまあまあの評価!


「味もだけどさあ、見た目も大事なの!これは駄目だろう」

夏らしくていいと思ったのだが、大将的には見た目がNGだった。まあ確かに、ちょっと時間がたつと麺が太くなってくるのでイマイチか。

 

<食べられる提案その3>桃ゼリー

じゃあ次は・・・と選んでいると、友人2人から「美味しそうなの挟んで」との要望が。というわけで次は桃のゼリーを選んでみました。これは女性ウケ必至!のはず。


軽く混ぜてサワーにしてください
おおお!!!普通!

普通に美味しい。
でもゼリーが柔らかすぎたのかゼリー性は消えていたのでちょっと残念だ。もし次やる時は少し固めのゼリーでやった方が食感が楽しめていいと思った。

満足げな私達。しかし大将は「それも見た目が駄目!」と言い出だした。私が「(おでんとソーメンと比べたら)見た目も良い!桃だもん」と反論すると、飲んでいたサワーを取り上げ店を飛び出し、他のお店の店長たちに意見を聞きに行った。


大将「これ飲みたいと思うか?こいつら言っても分かってくれないんだよ」
「女の子には良いんじゃない?」と女性の店長

他店の店長会議でもそんなに悪い反応ではなかったものの、大将的には桃の見た目が良くなかったらしくNG。華やかなフルーツミックスゼリーにすれば反応は違ったかもしれない。


<食べられる提案その4> もずく酢

お次は大好きなもずく酢!一番最初に私の頭に浮かんだのもこのもずく酢だ。
しかもストレスに効くお酢系サワーは居酒屋でも人気ありますよね。うん、期待大!


大将「ホラ、早く飲みな」 
私「・・・なにこれ?」 
葛ちゃん命名 『東京湾の底』
なんか想像と違うものになっちゃった・・・

酸っぱさもなくなり旨くないので早々に葛ちゃんにバトンタッチ。
(写真右:ソーメンサワーで口直し)
大将「だから見た目が大事って言っただろ?」

見た目、凄く大事。

もずく酢が好きなあまり、こんな姿になると思っていなかった。サワーが出された瞬間に発せられた葛ちゃんの「東京湾の底」発言にも一気に飲む気が削がれた。
ごめんなさい。

 

<食べられる提案その5> コーン(缶)

たまにコンビニで買ってそのまま食べるコーン缶。コーンと中の汁をいれてもらう。
見た目も可愛くて歯ごたえを楽しみながら飲めるのでは?


私「大将、笑顔忘れてる!」と言って無理やり作らせた笑顔
今度は想像どおりのビジュアル

大将「コーンポタージュの方がまだ良いよ・・」
新メニュー開発を楽しむ客と頭を抱える大将

「見た目はまあまあ可愛いけど期待よりはあんまり・・・飲めないことはない」
「別々に出して・・・お願い」

味、大事。

2人とも悲しい顔になってしまった。見た目可愛くても味がパッとせず不評。味付け要検討です。

 

<食べられる提案その6> アイスの実

お次は夏らしさを狙ってアイス割り。
ガリガリくんやスイカバーも考えたけど、見た目的にはやっぱりアイスの実でしょう!
これはやる前から自信アリ!


大将「入れるだけなんだから俺やらなくていいじゃん」
出た!見た目かなり良い!そして美味しそう!!

「テーマに合ってるし美味しい。見た目もいいね」
これはアリでしょう!と自信満々な私
奥には微妙な顔の葛ちゃん

アイスはいつも通りうまい。
でもサワーにはとくにこれといった味がついているわけではないので、そこがちょっと不満な様子のくずちゃん。このサワーはアイスをかじりながら飲むのですよ。

 

<食べられる提案その7> すもも漬(駄菓子)

酸っぱい好きの私が一目置いている駄菓子の一つ、「すもも漬」。そのまま汁を飲むと危険なくらい酸っぱいので普段は凍らせて食べているのだが、サワーで割るにはちょうど良いかも!


大将「これはけっこう綺麗だな」
『亀戸5丁目の夕日』と名づけました

超酸っぱ!=うまい!!
やっと笑顔になれた葛ちゃん

ここにきて、やっと大将が「これならまあいいかもな」と言ってくれたものができた。笑顔を失いかけていた葛ちゃんにも笑みが。夏バテで疲れた方、酸っぱい好きの方にはおススメです。

 

<食べられる提案その8> さきいか

本当は串に刺さったイカを入れる予定だったが箱買い以外見つからなかったので急遽さきいかに変更。イカをかみ締めながら酒を飲む。通ぽくないでしょうか。いやオッサンぽいか・・


イカが踊るサワー
うん、わざわざ入れなくていいね

イカはサワーじゃないな、そう思った。日本酒に入れて中尾彬氏に飲んでもらい「これは旨いねえ」とCMで渋く言ってもらえば人気出るかもね。

 

<食べられる提案その9> チャーハンの素

これはカレーハイの発想でつい手を出してしまったもの。カレーハイを好む人もいるくらいだから、もしかしたら一人くらいハマる人がいるかも?


よそ見されながら渡されたのは
一見ビールのように泡だったものでした

でもビールじゃない。青ネギが入ってるもの。

ウ・・・(まずい!)
ウッ(まずい!)
ウフフフ(まずい!)

もずく酢サワー以上に「ごめんなさい」という言葉が浮かぶ味だ。相手を怒らせるために出す以外、危険なのでマネしないでください。

「しょっぱいお酒初めて!!」とバイトくん。全員同意見!

 

<食べられる提案その10> プリン

しょっぱい味を早く打ち消そうと、次はプリンをオーダー。食べられるようにそのままポンと入れてもらおうと考えていたけれどウッカリ言い忘れてしまい、クラッシュしたものが出てきました。


「店長、変わった客来てますね」「お前よりバカがいたよ・・・」
私「社長、また笑顔忘れてる!」
(酔ってきて大将と社長言い間違え)

「美味しい。だってプリンだし」
「匂いは良いけどサワーとは合わないかも」

甘い香りのするプリン。味もカルーアミルク以上に甘い。サワーじゃなくて他のお酒で割ったら人気が出そうです。

 

<食べられる提案その11> 苺のヨーグルト
<食べられる提案その12> 杏仁豆腐

ついでにスイーツ系を立て続けに頼むことに。


ピンク色が可愛い苺ヨーグルトサワー
白い貴婦人、杏仁豆腐サワー

「ヨーグルトは甘さがもっと欲しい。杏仁豆腐は分離しなければ良いね」
「作り立てならアリかなあ」
「しょっぱくなければどれもOK!」

甘いものはそこそこ飲める。
だけど、この3つはどれもかき混ぜているうちに固形物が無くなって「食べる」とは違う方向にいってしまった。そして乳酸菌が入っているからなのか、分離してしまい少しほっておくと見た目がよろしくない状態に。。
頼んで速攻飲み干すならどれもいけます。

 

<食べられる提案その13(ラスト)>
ヤキソバ(カップ麺)と捨て汁割りセット

最後の締めはヤキソバ。
実はこの案、ライターの北村ヂンさんが「ヤキソバの捨て汁が旨い」と言っていたのを思い出し採用。でも再度確認したら北海道や東北限定で売っているという、粉末スープを混ぜて飲む捨て汁のことだった。

早合点してしまったが、味にそんなに差異は無いでしょうという事でぺヤングで注文してみる。


捨て汁割りとヤキソバを受け取る
「そば湯だね」と笑顔の葛ちゃん

「期待しなかった分美味しい」
ヤキソバを食べつつ飲む
「ぺヤングうまー!」

うま味、酸味、塩味、甘味・・・複雑な味を織り交ぜたくさん飲んだ後の捨て汁割りはお腹に優しいほっとする味だ。さらに空きっ腹に響くソースヤキソバの旨いこと!これは締めの一杯にいい!


「腹膨れて他頼んでくれなくなるから店には出せないけどね」

と最後は納得の理由によりボツ。
全メニューを飲み終え、意見をまとめてベスト3とワースト3を決定。やっぱり見た目も大事という事が良く分かりました。


メニュー化した時のためにそれぞれ名前をつけてみました

 

イラストが物語る今日の総括

はいお疲れ様でしたーと2人から回収した感想用紙にはいつのまにか可愛いイラストが。


エリちゃん画
葛ちゃん画

上手いもんだねと2人の絵の感想を語っていると、葛ちゃんが私の用紙にも絵があるのを発見。記憶無いけど自分も描いてたみたいです。


ピカッ!

難しいとは思いますが、この絵から私の感想を読み取ってください。


最後にちょっとお店の宣伝

今回13種類ものお酒作りに付き合ってくれた大将。これだけでは何のお店なんだか分からないので、最後にちゃんとした料理写真を。


私のオススメのつくね
「創作ってのはこういうのを言うんだ!」と裏メニュー。豚キムチに色々乗せて、最後に麺ツユをかけたもの。旨い!

ちなみにこのお店、値段はかなりリーズナブルです。大将今日は付き合ってくれて有難うございました!


大将の笑顔と、分離した杏仁豆腐サワー。
まるで夏に見る入道雲のよう。

メニュー化するには味、見た目、意外性。

終始ダメ出しばかり受けていた今回の食べられるサワー提案。13種やってみて大将が「これならまあ」と反応が良かったのはすもも漬を使った『亀戸5丁目の夕日』のみ。個人的にはカレー味よりずっといい気がするが・・・メニュー開発の厳しさを知る。

皆さんも好きな食材で自分だけのサワーを作ってみては?そして美味しいのができたら大将にメニュー化を提案してみてください。
(※ちゃんぽん飲みにはご注意を!次の日は案の定二日酔いでした・・・)

亀戸に行ったら亀戸鶏園へ!

【取材協力】 焼きとり亀戸鶏園
東京都江東区亀戸5-13-2 
TEL:03-3681-0036 
営業時間16:00〜23:00


 
 

 

 
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