さらなる情けなさ求めて
情けない顔探しの旅の最後は、寺社仏閣系をまわってみたい。旅先などでなんとなく訪れた神社やお寺で、ユーモラスな石像などを見かけたことはないだろうか。
そうした中には情けない系に分類されるものもあるはず。まず訪れたのは、新宿区にある鎧神社だ。
神社にある石像と言えばポピュラーなのが狛犬。本来は神様の守護獣である狛犬だが、様々な作風があったり、風雪に朽ちたりして味わい深い状態になっ たりしているものがありそうだ。
こちら鎧神社は名前こそ勇ましいが、そんな狛犬がいるらしい。
年代の古いものなのだろうか、ディティールがわからないくらいに古びてしまっている。全体的にはぎりぎりで犬、という感じだろうか。
こういう犬、マンガで見たことがあるような気がする。狛犬というと大抵ピリッとした雰囲気のあるものだが、こうした味わいのものがたまにあるのもいいではないか。
最後にやってきたのは、港区にある青松寺。ご覧の通り、とても立派な門のあるお寺だ。
この門の中に、四天王の像がある。今でこそ「四天王」というと「ものまね四天王」のようなある分野での実力者4人をまとめて言う場合に使われることが多いが、ここにはもちろんその由来となった四天王像があるわけだ。
持国天・増長天・広目天・多聞天の四天王。仏法を守護すべく存在で、寿命は500年というから今回のテーマである情けなさとはほど遠い存在だ。
ではなぜこんなに勇ましい像のところに来たか。それは、その足下で踏まれている方を見たかったからだ。
中には顔を踏まれて表情を確認できないものもあった。立場的には相当情けない状況にあるこの邪鬼たち。本人たちからすれば、わざわざこんな場面を像にすんなと思っているかもしれない。
四天王は4体あるので、邪鬼も4体あることになる。今回最も情けなく見えたのはこれだ。
情けない、という意味では最もその言葉に合う表情をしているように見えたこちらの邪鬼。各自お好みの悲鳴をつけてみていただきたい。
今回の情けない顔探しは、情けない顔を見てせつない気持ちになろうというものだったが、この邪鬼を見ると「悪いことはするもんじゃない…」と、背筋が伸びるような思いもしてきた。
世の中にあふれるかっこよさや美しさに対して、ひっそりと隠れてそこにある情けなさ。それは基本的に人に見せるものではないからこそ、たまたま見つけたときには妙なうれしさのようなものを感じるのかもしれない。
恐竜展のおみやげ売場には、情けな恐竜「エクサエレトドン」のフィギュアもあった。展示品に負けない情けなさに打たれて買おうと思ったが、妻から「これ、部屋に置きたくない…」と言われて断念しました。