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ひらめきの月曜日
 
心に残る「情けない顔」探し

そこに光と影があるならば、影ばっかりを見ていたい

恐竜展全体の印象をまず言おう。ものすごくかっこいいのだ。展示物そのものもそうだし、演出も凝っていて、展示物がただ並んでいるというだけではない。


映画のワンシーンか
映画のワンシーンか(2回目)

ガラスの中に人が浮かび上がっていたり、光の演出が凝っていたりと実にかっこいい。会場がビルの52階ということもあって、窓と展示物が同時に見える場所では、それだけで不思議な空間となっている。

しかし私にとっては、このかっこよさも局地的な情けなさを際立たせる演出に過ぎない。あいつはどこにいるんだろうか。


こいつはかっこいい
あっ、こいつだろ!

まず出会ったのは骨の化石としてのあいつ。他の恐竜が骨状態でもかっこいいのに対し、あいつは骨でもなんとなく情けなく見える。

自分というものの骨格をしっかり持っているからこそのことだ。一貫性があるではないか。


名前はそれなりにかっこいいのが惜しい
哺乳類の祖先なのか…

名前は「エクサエレトドン」というらしい。名前ばかりはいささか恐竜っぽいが、全体的なビジュアルはやはり頼もしいくらいに情けない。

子供向けのパンフレットには「調べてみよう!エクサエレトドン」とあるが、その下に描かれている姿を見て、子供的には「えー…」と思ったりはしないだろうか。そういう境遇を想像して、ますますこいつが愛しくなる。

しばらく進むと、生体状態のモデルも展示してあった。


結構な人だかりだが
人気と関係なくこのたたずまい

エクサエレトドンの展示コーナーにはたくさんの人が集まっていたのだが、決してかっこいいからというわけではなさそうで、ポスターでの情けなさは立体でも健在。満足できる表情をしっかりしてくれている。

頭から背中にかけての模様に見えるものは、実は毛。この半端な生え具合もすばらしい。


「私、恐竜展にいていいのかな…?」
「なんか違うような気がするの!」

別ポーズのモデルもあったのだが、かもし出す雰囲気は共通のもの。子供に乳を与えている場面を再現しているにも関わらず、情けなさはうなりを上げる勢いだ。

一体がたまたまそういう感じというのではなくて、エクサエレトドンは全体的にこんな感じなんだなと安心できる展示と言える。


再現映像での役回りもこの感じ
持ち上げすぎだろ

展示のそばではディスプレイに生息当時の再現映像が流されていた。その中でも肉食恐竜から逃げまどうというポジションで、表情もいい味だ。説明パネルには「今のライオンのような姿にも見えるが」とあるが、それは言い過ぎではないか。

それにしてもこの展示コーナーは結構な人気で、たくさんの人が足を止める。中でも真剣な顔で見ている子供が「○○くん、これ好きなの?」と家族から聞かれ、首をすばやく 横に振っているのが印象的だった。

別に好きではないけれど、なんか気になるというその気持ち、よくわかる。それが情けない顔の魔力だ。


どこを切り取っても君が君でいることがうれしい

おみやげコーナーで売っていたクリアファイルの柄としてもこんな感じ。必死な表情は、情けなさを超えようとするせつなさがある。がんばれ、僕らの祖先!

期待にたがわぬ情けなさを炸裂させていたエクサエレトドン。さらなる情けなさをまた別の場所に求めよう。


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