埼玉県の熊谷市では「雪くま」というカキ氷で町興しを試みているらしい。
しかし、カキ氷ってだいたいどこで食べても同じようなもんじゃないのだろうか。そんなことを考えながら、僕は熊谷市に向かったのですが。
(斎藤 充博)
熊谷の暑さは冗談じゃない
雪くまを求めて熊谷市にやってきた。この熊谷市、夏の暑さではとても有名な街だ。真夏になると気温が40度近くになることも珍しくない。
あまりの暑さに、ここ熊谷市では「暑さ」を観光資源にする動きが高まっている。…と文字で書いてみると「ポジティブ思考で面白い発想だな」くらいに思えるかもしれないが、現地でこの暑さを味わうと、その考えがいかにクレージーで突き抜けているものかが身をもって解る。
熊谷の女性はよく笑う
駅を出た瞬間から汗が止まらない。あまり無駄に歩き回りたくない。気が付くと駅の近くにあった観光案内所に逃げ込むように入っていた。ここで効率的に情報を得ようと思う(何も調べてきていなかった)。
観光案内所の人に聴いてみると、雪くまとはこういうものらしい。
話を聴いても、なんだか今ひとつピンと来ない。 ところでどうにも気になっていることがあったので、聴いてみた。「雪くま」のネーミングって、既にある鹿児島名物カキ氷「白くま」と似てないか?
笑ってごまかされてしまった。なんか気まずくなったので気候の話でもしてみようか。
「涼しい方ですよ」との言葉にギョッとする。…観光案内所の人によると、今日は34℃らしい。そうか、それが涼しいのか。
僕の住まいは埼玉県の南の端の川口市。北の端の熊谷市までは電車で1時間くらいの距離だけど、ここはもう既に異界なのだ。ああ…熊谷の女性はよく笑う…と、思わず世界ウルルン滞在記を観ているような遠い気分になってきた。
あ、またごまかされた。これ以上この部分に追求してもしょうがないか。たくさんある雪くま提供店の中でオススメをいくつか教えてもらったので行ってこようと思う。
フワフワのカキ氷
そして訪れたのは、熊谷駅から徒歩10分のところにある、うどんと甘味の店、「慈げん」。
そして「雪桜」(530円)というメニューをオーダー。「雪くま」形式の氷に甘露と桜の花びらで味付けされていた。
なるほど、これはカキ氷の上に練乳と果物をあしらった「白くま」とは全く別物だ(案内所のお姉さんもそう言ってくれれば良いのに!)。
きめ細かい氷が、口の中に入れた瞬間にふわっと舌の上で溶けてゆく。まるで上質の霜降り肉のようだ。そんなの食べたことないけれどきっとこんな感じじゃないかと思う。
口の中ですぐに液体になってしまうので、一気にたくさん食べても頭が痛くならない。思わずガツガツかき込んでしまう。うまい。
いや、カキ氷そのものもうまいんだけれど、そもそも…
こういう風に氷を細かくして食べさせるカキ氷は熊谷にしかない、ということはないだろう。しかし、この爽やかなカキ氷が熊谷の不快な暑さに実によく合う。
熊谷の暑さは「ヒートアイランド現象」と「フェーン現象」によるものらしい(ココに書いてある)。熊谷名物・雪くまは、そういうダイナミックな背景があるからおいしくなっているのだ。
雪くまは自由だ
「慈げん」の雪くまはこんな風にシンプルな味わいだったが、お店によっては思いっきりデコレーションしてあるところもある。熊谷駅ビルにあるアジアンカフェ「萬里茶房」の雪くまはこんな感じ。
アイスティーを凍らしたものをカキ氷にしていて、その上にはミルクシロップがかかっている。ロイヤルミルクティー状態のカキ氷だ。ミルクティーなので、載っかっているチーズケーキと当然良く合う。なかなかシャレた雪くま、だ。
フォークとスプーンが両方付いてきたので、なんの疑いもなく両手に持って食べてしまった。でも今思えば、フォークがケーキ用でスプーンは氷用だと思う。
映画館でも出している
最後にもう一つ、駅ビル直結の映画館「シネティアラ21」で出している雪くまも食べてみた。こちらでは氷の上に「チュロス」「キャラメルポップコーン」「ディッピンドッツアイス」が載っている。
映画館スイーツがこの雪くまの上に全部集合している、なんともワンストップな食べ物だった。
食べてみると、チュロスとアイスがボロボロこぼれてしまう。正直、そんなに映画館向きの食べ物じゃない気がしたが、逆にここまで雪くまを行き渡らせる熊谷市の心意気は本物だ。
まだまだ熊谷は暑くなる
取材した日は34℃とのことだったが、まだまだ熊谷の気温は上昇している。今もう一度行けば、雪くまの味わいもまた変わっているだろうか。
もう一度行くのにはちょっと躊躇してしまうけれど、行くとしたら猛暑の今が行き時だろうな、とは思う。