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はっけんの水曜日
 
本気でかくれんぼがしたい


もうちょっと小さかったら隠れられたのにね。

かくれんぼという遊びは有名だが、実際にやってみると、公園などではそれほど隠れる場所がないし、範囲が広すぎると探すのが面倒くさかったり、誰かが途中で勝手に帰っちゃったりするものだ。

子供のころから何度もやってはいるけどゲームとして満足した覚えがないこの遊びだが、春に山形県にある古民家の貸し切り宿「タガマヤ村」(記事参照)というところに宿泊したとき、「ここならかくれんぼが成り立つ!」とビビビと直感した。

そしてまたタガマヤ村に宿泊する集まりがあるということなので、みんなに付き合ってもらってかくれんぼをすることにした。

玉置 豊



かくれんぼがしたくなる宿、タガマヤ村

タガマヤ村というのは、築100年の古民家を一日一組限定の貸し切り宿にしたもので、母屋以外にも小屋が二つ、そして立派な蔵まであり、隠れる場所には事欠かない。

ここに訪れた人は誰でも「あ、かくれんぼに最適!」と思うことだろう。


君も一歩敷地に入れば、「かくれんぼしたいね!」ってなるはずだ。
この小屋だけで5人は隠れられるな。ちなみに中は卓球場。宿といえば卓球だ。でも今日はかくれんぼだ。

二階建ての立派な蔵もある。夏は涼しいので、じっと隠れるのに最適だ。
蔵の前にはハンモックと木の上の隠れ家もある。完璧。

ちなみに私はかくれんぼがしたくてここにきているが、他の人たちは基本的に「泊りがけの飲み会」をしにきている。一応幹事から話は回っているはずだが、かくれんぼに参加してくれるかは交渉次第。

でもきっと、みんな実はかくれんぼがしたいはずだと、本気で僕は思っている。

 

手作り公式ルールを作った

一口にかくれんぼといっても、育った環境が違うからルールの違いは否めないので、事前に統一ルールを作っておいた。

  • 行動範囲はタガマヤ村の敷地内のみとする。
  • まずじゃんけん等で鬼を二人決める(鬼の人数はやりながら検討)。
  • 鬼以外の隠れる側は子という。
  • ワンゲーム15分。全員の携帯のアラームを15分後に設定(時間はやりながら検討)。
  • スタート後、鬼は3分間待つ(時間はやりながら検討)。
  • 子は危ない場所、失礼な場所(神棚の中など)に隠れてはいけない。
  • 鬼はアラームが鳴るまでの間に子を探す。
  • 見つかった子は逃げたりせず、大人しくスタート地点に戻る。
  • アラームがなっても、まだ見つかっていない子がいた場合、ガッツポーズをしながらスタート地点に戻る。
  • 全員を見つけたら鬼の勝ち、見つからずにいられたらその子の勝ち。
  • 二回目以降、子は同じ場所に隠れてはいけない。
  • 二回目以降は、最初に見つかった子が鬼をやる。

こういうルールを作るという行為は、自分が偉い人になった気になるので、ちょっとたのしい。俺のアジェンダ。

わざわざ明文化する必要のないようなことも多いが、特徴は制限時間を設けたこと。腕時計とか携帯電話を持っていなかった子供のころにはない新ルールだ。

可能であればツイッターやiPhoneなどを活用して、みんなの場所や状況などがオンラインでわかるようなウェブツールを作ったらおもしろいかなとも思ったが、可能じゃないので作っていない。

 

鬼ごっこスタート!

夕方近くになり、だんだんと人が集まってきたので、さあこれからかくれんぼをやるよと声をかけるも、この場にいる人達の中で、直接の友人は数名だけ。あとは友人の友人ばかり。

半分以上の人が面識ないのだが、私との関係の薄さに比例してかくれんぼに対する反応も薄い。私のことを「なんか面倒くさい人がいるな」と思われていないだろうか。

みんな宿につくとすぐにビールを飲みだしてしまうので、なかなかかくれんぼをはじめられないでいたが、ジャイアン似の今日の幹事に協力していただき、どうにかかくれんぼがスタート。

こういうときにリーダーシップをとってもらうと、ちょっと尊敬してしまう。ありがとう、おじちゃん。なんだか今日は自分が子供目線になっているなと思った。


リアルかくれんぼ世代と思われる男の子を誘ったら、「やらなーい」といわれた。でも「だってぜったい見つからない場所知っているもん」という理由。もちろん参加。
じゃんけんで鬼を決めるが、これだけ人数がいるとなかなか決まらないので、「今チョキとパーの人は勝ちでいいよ」と、メンバーをみて幹事が鬼っぽい人を残していく。

最初に鬼となったのは、山形在住のW君(会うの二回目)と私。一人だと探すのが大変なので、小学生のころにやった「ボール二つサッカー」に習い、鬼の数は複数制を導入している。

各自が携帯のアラームを15分後にセットし、好きな場所へと消えていく。あれだけ騒がしかった母屋がW君と二人だけになって、なんだかちょっと恥ずかしい。


ノリノリだったW君。わかりやすく楽しんでくれる人がいると企画した側としては、とても心強い。翌日一緒にさくらんぼ狩りをした。
一歩外に出ても、聞こえるのは蝉の鳴き声だけ。この静けさがかくれんぼっぽくていい。

 

鬼になって子を探しにいく

みんなが隠れてから三分経過。ここでW君と別れてそれぞれ探しに行くのだが、敷地内には20人近くいるはずなのに、まったく人の気配を感じない。漫画のドラゴンボールで読んだ「地球人は気を消せる」という話を思い出した。

鬼らしく、わざと大きな物音をたてたり、ガオーと叫びながら探しまわる。ガオー。

隠れている人数が多いので、ここにいるかなという場所には、だいたい予想通り隠れているのが楽しい。鬼というよりも気分はアイスホッケーのマスクをかぶった猟奇犯罪者だが、銃のトリガーを引く代わりに、カメラのシャッターを押していく。



速攻で見つかって顔を隠す二人。すぐ見つかると恥ずかしいものらしい。
蔵の裏に隠れて煙草を吸っていたH君を発見。不良高校生と体育教師みたいな関係だ。

「きゃー!この子だけは助けてー!」「ぐへへへ、泣く子はいないかー(なまはげ気分で)」
木の上の隠れ家に飲み会幹事の大きな尻を発見。見事な「頭隠して尻隠さず」だ。

だいたい探し始めて五分くらいで、参加者の七割が見つかったが、ここからは本気で隠れてくれている人なので、簡単な場所からは出てこない。



後半は焦っているので、明らかに人が入れなそうな場所もついチェックしてしまう。
こことかも隠れやすそうだけれど、ちょっと狭いかな。

そんな隙間があったんだという感じの場所でW君が親子を発見。
探す合間に食べる漬物がうまい。

こちらも本気になって探したが、結局小学生を含む二人が隠れきった。この勝負、鬼の負けである。


無情のタイムアップ。

最後まで隠れていた二人のうち、一人は大人だったので自分で出てきたが、もう一人は小学生なので携帯電話を持っておらず、終了の時間がきたことをわかっていない恐れがある。というか、ルールをたぶんちゃんと聞いていない。

このまま見つからなかったら、神隠しにあったじゃないかと発起人の私が攻められてしまうと焦りだしたところで、木の上でお尻を出していた幹事が、「俺知っているよ」と案内してくれた。


あれー、ここにいたのか。

この木の上にある隠れ家の、さらにその木の中に隠れていたらしく、まったく気がつかなかった。まさかここにもう一人隠れているとは。

お尻を出していた大人をおとりに使った、見事な頭脳プレー。小学生に勝負事で本気で負けてけっこう悔しいよ。

 

二回戦は隠れる側で参加

かくれんぼで見つかった子は、スタート地点でゲームが終わるのを待つのだが、そこはもうみんな立派な大人。自由に冷たいビールで一杯やりだしてしまっている。

ルール上は最初に見つかった二人が次の鬼なのだが、結果的に一番酒を飲んでいる人になってしまうという盲点。

本気でかくれんぼをするのであれば、かくれんぼ中に酒を飲むのを禁止するべきだろうが、そんな決定をしたらみんなかくれんぼよりも酒を選ぶだろう。


最初に見つかったかしまし娘三人組。鬼が二人だけだとゲームが成り立つか不安なので、三人にやってもらうことにした。

なんとなく「え、まだやるの?」という空気が漂っている中、二回戦がスタート。今度は私も隠れる番だ。


涼しそうな蔵に隠れようとしたのだが、この脱いだ靴でどこにいるかばれちゃうかな。
蔵の二階。あの椅子の裏に隠れよう。人間椅子作戦だ。

やってみるとわかるのだが、三分以内に隠れる場所を見つけるというのは、ある程度の土地勘がないと難しい。隠れようとした場所に先客がいたりして、どこがいいかと探しているうちにすぐ時間になってしまう。

さっき鬼をやっていて、「なんでこんな見つかりやすい場所に隠れているのだろう」というところにいた人が多かったのだが、その理由がわかった気がする。

 

予想以上にドキドキ感がすごい

隠れる時間ぎりぎりに、蔵の二階の隅に黒い革張りの椅子を二つ並べて、その後ろに胎児のポーズで転がる。板の間なのでちょっと痛い。


椅子の隙間から鬼が来るのを待つ。

かくれんぼの子役は、鬼に見つからないことが目的なのだが、やってみると誰も来ないと寂しいだけなので、早く見つけてほしくなる。ツイッターで「蔵の二階の椅子の裏なう」とかつぶやいたら見つけてくれるだろうか。

五分ほど寂しい時間を一人で過ごしたところで、蔵の一階を探すにぎやかな音がして、そしてトントントンと鬼が階段を上ってきた。どうやら鬼は三人一緒に行動をしているらしく、「ここにいるべ」「いやもういないべ」「だべした」という山形弁が聞こえてきた。

椅子の隙間からこっそりのぞくと、鬼は部屋の反対側にある木箱を探すために背中を向けている。ここで飛び出して、「わー!」と驚かしてやりたいが、それをやったらかくれんぼじゃない。

黙って小さく丸まっていると、鬼達の話し声がだんだんと近づいてきた。ものすごいドキドキしてくる。そして右手にカメラ、左手にジョッキを持った鬼のTさんが、椅子越しに覗きこんでにやりと笑った。

見つかったー。


サスペンスドラマならここで俺は死ぬな。

見つかってしまって悔しいと思う反面、ようやくみんなと会話ができるという安堵感。どちらかというと悔しいよりも嬉しいのほうが大きいとう驚愕の事実。鬼は見つけてうれしく、子は見つけられてうれしい。これぞウィンウィンの関係だ。

このまま見つけてもらえなかったらゲームとしては勝ちなのだが、とても寂しかったことだろう。かくれんぼは見つかってこそだな。なんて思うのは、賞品をなにも用意しなかったからだな。


鬼のカメラに残っていた写真。また幹事さんのお尻が隠れていないよ。
人は風呂場に隠れたがるようだ。夏だからかな。

無事、鬼に見つかって陣地に戻ると、先に見つかった人達によってバーベキューが始まっていた。

タイムアップまでまだしばらく時間があったが、鬼も探すのを諦めて飲みだしてしまったので、かくれんぼはこれにて終了。


やっぱりかくれんぼよりもバーベキューの方が楽しいか。
二回連続で最後まで隠れていた彼が優勝。15分隠れて戻ってきたら、みんなもう飲んでいて寂しそうだった。賞品なくてごめんなさい。

飲み会とかくれんぼ、この二つは同居できないことがよくわかった。

かくれんぼ、おもしろかったです

こうして第一回タガマヤ村かくれんぼ大会は、僅か第二ゲーム途中で終了となった。もう少しやりたかったけれど、まあ飲み会目的で集まった人達にかくれんぼをさせるほうが悪いよね。

それでも探す側のワクワク感、隠れる側のドキドキ感が味わえてよかった。次はおっさんである私がいいだしっぺだとみんなが相手にしてくれないので、誰か子供がやりたいという設定にして、再チャレンジしようと思う。


7/22に無料イベントがあります

ニフティの「地球のココロ」というサイト主催のイベントが、2010/7/22(木)19時からあります。場所はなんとニフティ会議室。参加費は無料で、食べ物飲み物の持ち込み自由という、フリーダムなトークイベントです。私が作ったベーコンも無料ででるはずです。かくれんぼはしません。

イベントの内容は、一泊二日のぶどう農家お手伝い体験を紹介するスライドショーみたいな感じになると思います。一応予約制ですが、当日ぶらりときていただいても大丈夫です。どうぞお気軽にご参加ください。

【「行ってみたら楽しかった。ぶどうづくり体験」をきく会】


 
 

 

 
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