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ひらめきの月曜日
 
山田太郎の年収は600万円


 

右の写真は定期券などを作る際に書く申込用紙の記入参考例。前から疑問だったのだが、こういうのに書かれている名前は、なぜ「太郎」や「花子」なんだろうか。「紀行」でも良くないか? いや紀行は駄目だ、一般的じゃない。でもメジャーな名前なら他にいくらでもあるだろう。「一郎」とか。

ところが、男の場合は決まって「太郎」、女の場合は「花子」なのである。

榎並 紀行



本当に「太郎」「花子」でいいのか?

街中にあふれる「太郎さん」「花子さん」。あまりにも普通のこととして受け入れ、スルーしていたもののひとつ。

だが、騙されるなみんな。考えてみたらリアルで太郎さんや花子さんて人に出会ったこと、たぶんあんまないぞ。


手元にあった名刺の束を探してみても太郎さんは1人だけだった。花子さんは0人

ここ10年のビジネスシーンを振り返ってみても、僕が太郎さんと仕事をしたのは一度きりだった。花子さんはゼロ。ポピュラーなイメージとは裏腹に、じっさいにはどちらかというと珍しい部類の名前だと思う。

にも関わらず、記入参考例に書かれているのは圧倒的に太郎さん花子さんなのだ。街で改めて調べてみたらほとんどそうだった。そんなんでいいのか?


ヒガシタロウ
ヒガシハナコ

タバコタロウ
八幡山の八幡太郎

「べつにいいか」という気もする。だが、疑問は深まるばかりだ。かつて「太郎」「花子」の名前がブームになり、そこから定着したんだろうか。でも、こちらの生まれ年別の名前調査を見ると、明治45年から現在まで「太郎」「花子」の名がベスト10にランクされたことは一度もないようだ。

なのになぜ、太郎と花子が文書の記入例にここまで使われるのか。少々合点がいかない。

ネット上にも僕と同じような疑問を抱いた人がいたようだが、かなり身も蓋もない返しをされていて、自分のことのようにげんなりした。

謎は深まるばかりである。


小田急花子さん
小田急太郎さん、おそらく花子さんの旦那

太郎と花子はベストカップル

家族構成を書く申込書の場合、太郎と花子は夫婦というシチュエーションが多いが、やはり花子の相手は太郎がしっくりくる。

もし僕が花子さんを好きになっても彼女に太郎さんという許嫁がいたら諦めるしかなさそう。それくらい太刀打ちできない感じがある2人だ。


湯沢花子さん、太郎さん夫妻。長女は美子、長男は直紀。幸せそうな家族像が浮かぶ

外国人向けの見本でも「Hanako」。ジョアンナとかじゃない

山田太郎も多いぞ

いっぽう、苗字では企業名や地名にちなんだもの以外だと「山田」が圧倒的だ。

「鈴木一郎」と同じくらいよくありそうな「山田太郎」という氏名。だが、これもよく考えたらリアルで出会ったことがない名前のひとつである。


ヤマダ電気の太郎さんは
当然「山田太郎」であるが、ここでなくても山田太郎さんはよく見かける

山田商事の山田太郎さん
住宅ローンを組みたい山田太郎さん

キャッシュカードを作った山田太郎

しかし、この「山田太郎」がよく採用されていることについてはもっともらしい説をいくつか見つけた。まとめると。

・それぞれの漢字が名前に使われる頻度が高い

・画数が少なく分かりやすい

・山田という苗字は全国的に偏りなくまんべんなく多いため、どこにでもいそうと誰もが思える

・「山」や「田」など日本の田園風景を連想させる漢字で親しみがもてる

といったところ。「山田」や「太郎」あるいは「花子」だとベスト10に入ってこないが、「山」は苗字に使われる漢字ランキング4位、「田」は1位。「太」「郎」「花」「子」も同様に上位にランクされる。なるほどな。


さて、山田以外にはどんな太郎がいるんだろう

苦労人ぽい太郎

浦島みたいな太郎

お金が貯まりそうな太郎
やはり嫁は花子

太郎の年収は500万円
つまりこういうことだ

郵貯太郎は○○商会の課長。美人の妻とかわいい息子がいて、年収は500万円である。これが日本サラリーマンの平均像というわけか。でも不思議なことにそんなやつまわりに一人もいない。

 

太郎の年収は500〜600万円

ローンや資産運用などの書類であれば、年収を書き込む項目がある。太郎の年収はいかほどが相場なんだろうか。


みずほ太郎(48歳)は従業員1000名の会社の課長
年収は600万円

ファミマ太郎(35歳)貿易商
年収583万円

サラリーマンの平均年収は533万円らしい。さすが太郎、平均をちゃんと踏まえる男だ。しかし平均とはいえ、僕のような庶民の感覚では「太郎かせいでるなー」という印象だ。

いや太郎って誰だ。


太郎イメージ

記入例から日本のサラリーマンの平均像が見えてくる

山田太郎という名前しかり記入例には、ある程度対象者のイメージを平均化したデータが記載されているはずである。

ということは、サラリーマン向けの申込書類の記入例に書かれたデータを総合していくと、それが日本のサラリーマンの平均像であるといえそうだ。まとめると。

山田太郎(35歳)

・サラリーマン(役職は課長)

・年収約600万円

・妻(花子)と2人の子供

・都内在住(マイホーム)

こんな絵に描いた幸せなやついるか、とお思いかもしれない。僕も思う。だが、どこにでもいそうでありながらじつは稀有な存在。それが山田太郎なのかもしれない。

今回いちばんかっこよかった名前

 
 

 

 
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