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フェティッシュの火曜日
 
カメムシはパクチーの代わりになるか


 

パクチー(香菜)はカメムシの匂いがするので苦手という人は多い。ひっくり返せば、パクチー好きな人の中にはカメムシの匂いが好きという人もいるかもしれない。
さすがにそんな事はないか、と思っていたら、なんと昆虫食界ではカメムシは美味ランクが上位という話をきいた。 パクチーの風味がくせになるそうだ。

それならば、カメムシはパクチーの代わりになるのだろうか。フォーに浮かべて試してみた。

ほそいあや



カメムシを食べたいと思ったきっかけ

昆虫料理家の内山昭一氏のブログに、庭でとれたカメムシがおいしいという記事があった。(注:虫の写真があります)

パクチー風味というのが気になり、後日お会いしたときにカメムシの食べ方について聞いてみると「茹でて食べればいいですよ。冷凍しておけばいくらでも持ちます」とアドバイスをいただいた。

カメムシは、東南アジアやアフリカで普通に食べられているらしい。
参考リンク:タイ・ラオスの食用昆虫(注:虫の写真があります)

 

友人に送ってもらった

ちょっと前に、山形に住む友人が「寝室にカメムシが大発生して困る」と言っていた。潰したり掃除機で吸ったりすると臭いので、空き瓶をかぶせて入れて外に放すという地味な作業をくりかえしたそうだ。

「そのカメムシ、ちょっと分けてくれないか」

友はそんなお願いに快く応じてくれた。


送られてきたカメムシ。

カメホーム。
ファンシーな瓶

可愛くデコレートされた薬瓶。中にカメムシが入っている事を忘れそうだ。添えられたタグには「おはやめにおめしあがりください」と書いてあった。変な事を頼んでしまったかと心配していたけれど、面白いものが届いてちょっと安心した。持つべきものは友ですね。

かわいい虫のシールがイノセントさを漂わせている。
中身のダークな色が対照的。

カメムシには色々な種類があるが、これは黒いタイプだった。瓶の蓋をあけて皿に出すと、ころんころんと六角形の虫たちが転げ出てきた。まだこれが食べ物とだという認識にシフトされず、あまり美味しそうだとは思えなかった。
カメムシ特有のにおいはまったくしない。

この時点では食欲ゼロ。(クリックで鮮明になります)

 

正しいフォー

まず、パクチーたっぷりのフォーを作る。
パクチーを切っている段階から家中に香りが広がり、東南アジアの旅情がよみがえる。


もうこれ食べて終わりにしちゃいたいですよね。

 

カメムシフォー

さっと茹でて麺に浮かべた。茹でればちょっと色が変わったりしてくれたらいいなと思っていたが、一ミリも変わることなく真っ黒のままのカメムシ。
ここで戦意を喪失してはだめだ。ビジュアルからくる先入観は、たびたび新しい世界への扉を閉ざしてしまうのだから。
かっこいい事言ってみたけど、目の前のコレは一体どういった事故かしら。


茹でると赤くなってくれたりすればハードルも下がるのだが。カメムシの一歩も譲らない、昆虫としてのアイデンティティーの強さを感じた。(クリックで鮮明になります)

 

いただきます

匂いはない。本当にパクチーの味なのか?
ひとつ口に入れる。食感はカワエビに似ている。ギュっと奥歯で噛むと、パクチーの香りが飛び出した。

本当にする!

しかも、それだけでない旨味がある。


カメムシはよく噛めムシ!だじゃれで気分を楽しい方向に持っていきつつ・・・(クリックで鮮明になります)
・・・あれ、おいしい。すごくおいしい。

 

パクチーにはないコクがある

カメムシの匂いの成分は油だそうだ。そのせいか、茹でているのに揚げた味がする。まず、これがおいしい。

噛みしめるとたんぱく質やアミノ酸の甘さが口の中にひろがり、そのあとにパクチーの香りが追いかけてくる。パクチーよりもずっと複雑な味で、一匹食べただけで舌の上で味が何層にも重なって訪れ、奥深い。珍重される食材になってもよい気がした。

パクチー味を味わいたかったらパクチー食えばいいじゃないかという言い分もわかるが、こういう体験はすごく面白い。


パクチーにはパクチーの、カメムシにはカメムシの良さがある。(クリックで鮮明になります)

タガメと近縁

あとで虫食に詳しい人から「カメムシはタガメ(昆虫食で最高級とされる)と近縁だからおいしいにきまっているよ」と言われた。香りがする虫は高級品なのだ。

フォーで一番おいしいと思った食べ方は、両方いれてしまう事。見慣れたせいか、メルヘンチックに見えてきた。


「草で眠る昆虫たちのフォー」(クリックで鮮明になります)

コリアンダー=カメムシ

あとでWikipediaをみてびっくりした。英名の「コリアンダー」は古典ギリシア語でカメムシを意味する「Koriannon」からきているそうだ。古代ギリシャからあのパクチーの香りはお墨付きだったのか…。食べていたとはどこにも書いていないのだけど。

残りは冷凍保存した。開けるたびに少しビビる。


 
 

 

 
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