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はっけんの水曜日
 
鶏のとさかを食べる


とさかを求めてさまよいました。

鶏のとさかはとてもおいしいという話をきいた。

フランス料理にはよく用いられ「そのおいしさは感動的」らしい。
本当なのだろうか。食べてみたい。 

ほそいあや



とさかの歴史は16世紀から

いきなりですが、ここで「世界寄食大全」という著書の引用をさせてください。

今の豪華なフランス料理の基礎が築かれたのは16世紀だと言われている。そのきっかけはイタリアのメディチ家のお姫様カトリーヌがフランスの公爵に嫁入りした事だった。それまでのフランス料理は手づかみで丸焼きの肉にむしゃぶりつく粗野なスタイルだったが、彼女がイタリアからお気に入りの料理人やデザート、食器類、テーブルマナーなどすべてを持ち込んだ事でフレンチに革命がおきた。

そんなカトリーヌがこよなく愛したのが「鶏のとさかのパテ」だった、というのだ。


そしてこれが、この本の著者が実際に食べた感想。この一文でとさか欲が高まる。食べたい!

どうやら日本にも食べられる所はあるらしい。しかしそれはフランス料理屋ではなく、ごく普通の焼き鳥屋だという。
インターネットでお店をさがし、行ってみることにした。

 

登坂さん

とさか体験には、知り合いの登坂さんに同行してもらう事にした。ダジャレだ。
実はあの本をくれた人でもある。だからと言って彼からとさかを食べたいなどとは一言も聞いていないが、「登坂さん」なら同行させねばならないでしょう。常識的な判断だと思う。


トサカさん(31)

 

ひっそりとたたずむとさか屋

そのお店は神楽坂に軒を構える焼き鳥屋さんだった。あまりに普通すぎて意外なほどだった。変な食べ物があるようには見えない。


小さなお店だが繁盛していた。

直営の鶏肉屋が併設されている。

とさかを注文すると、他の串と一緒に盛られてさりげなく出てきた。
一見同化しているが、遅れて飲み会に来た人が「あれっ?」と二度見するような違和感がそこにある。

今まで、こんなにどこの部位かわかりやすい焼き鳥があったでしょうか。

登坂さんに食べてもらう

感想をもらいました。

うまく例えられませんが、色以外見た目はかっこいいと言うか、想像の冠らしいかなと。
食感はクニュッとしてて触った感じの耳たぶに近いかなと思いました。
噛むとゼラチンとかコラーゲンを感じます。それに塩振って焼いたような。ヒアルロン酸とか肌に良いと言われれば良さそうな。
でも食べ物としてまた食べたいとか人に勧めたいとは思わないですかね。

最後の一文が、素直でよいと思いました。


感触は耳たぶです。

苦笑いにみえなくもない。

いただきます

今写真を見ても、奇妙な物を食べている人の顔だらけだ。わかりやすい。

食べてみると、ほぼ登坂さんの感想と同じだった。まずくはないけど、おいしいかといわれるとちょっと自信ない。食感は面白いけれど、それ自体に味がない。
ただ食物の魅力として、コラーゲンやヒアルロン酸が豊富というのは強い。まさにそれ自体を食べているようで、市販のサプリより効果絶大なのもわかる。

ちなみに、あの本には「ねっとりとした液体が、官能的に溢れだし、舌に絡みつく。それはほのかに甘く、シュークリームにも似ている。」と書いてあった。前半のエロティシズムも気になるが、シュークリームという例えに物申したい。こんなシュークリームないぞ。


ダジャレで借り出して申し訳ないという気持ちが高まるひととき。

「感動的なうまさ」を体験したい

きっと、もっとおいしいとさかがあるはずだ。あの本に書いてあった表現が嘘には思えないのだ。

日を改めて、とさかを扱う鶏肉屋に行くことにした。
すべてはうまいとさかのために。


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