僕が子供の頃だったら考えられないことだが、現在ではお茶は買って飲むのが当たり前だ。 ちゃんと葉っぱからいれた緑茶、一人暮らしのひとだったら、何年も飲んでいないということも珍しくないだろう。 それくらい一般的になった緑茶飲料のきっかけになったのは「おーいお茶」だろう。 このネーミングセンスで、日本人がペットボトルのお茶を飲むようになったといってもいいんじゃないだろうか。
(工藤 考浩)
では、「おーい」以外は
ペットボトルでお茶を飲むようになったのと同じくらい時代は変わって、夫が妻に「おーい、お茶」と言うのは、テレビのホームドラマなどの演出からは姿を消した。 お茶くらい自分で入れろということだろう。 このままだとお茶の名前だけが生き延びてしまう逆転現象になってしまいそうだ。
そのぐらいこの「おーいお茶」という製品名はすばらしいのだろう。 いまだにこれを超す名前のお茶は出てきていない。 「お茶」というシンプルな商品なので、名付けの許容範囲は広く、かなり自由なものが多く見られる。 今回はそのへんを見ていこう。
ネーミングが「良いか悪いか」なんていうのは主観に過ぎず、僕の独断で評価するのはさすがにはばかられるので、今回は商品名とパッケージからどれくらい「茶畑」を想像できるか、で表してみようと思う。
「バイオ茶」
のっけから決め球で勝負してしまった。 「バイオ茶」はやはり「おーいお茶」と掛けているにちがいないと僕は思うのだ。 ばーいお茶、ということだと思う。 ん?ちがう? もしそうでないとしても、バイオ茶という名前には光るものがある。 よって茶畑指数は2.0。
評価:2.0チャバタッケ
「静岡茶100% 緑茶」
お茶のパッケージにはポイントとして赤が多く使われている。 朱のはんこを押したイメージかはたまた茶室の毛氈か。 そんなお茶パッケージ事情のなかでBig-Aという、お店のロゴを赤で大胆に表示したこの商品は、そのせいでせっかく下にデザインされている茶葉から来る茶畑感を打ち消してしまっている。
評価:1.8チャバタッケ
「国産茶葉100%使用 緑茶」
これは格安自動販売機で売られていた緑茶。 一見シンプルだが、緑茶という字のまわりを茶の枝が囲んでいる。 これは新芽というよりは徒長した枝じゃないだろうか。 もしかしたらリアルな表現なのかもしれないが、ちがうアピールのしかたが他にあると思う。
評価:1.3チャバタッケ
「Green Tea 緑茶」
近所の100円ショップで2本100円だった緑茶は至ってシンプル。 茶葉からしたたる滴も気が利いているデザインだなあと思う。 でも実際こういう状況だとしたたっているのはお茶じゃなくて雨の滴なわけだけれども。 そこまで考えさせるというのはなかなかのテクニックなので茶畑指数は高い。
評価:2.3チャバタッケ
「葉の茶 朝摘み」
これは工夫がうまくいっている名前だと感心した。 うちのマンションの近くに売っているのでよく飲むのだが、こんなにいい名前だったのだ。 朝摘み、なんていわれると「おう、それはごくろうさん」と思ってしまう。 よく考えると「葉の茶」というのの意味がよくわからないんだけども、それはそのままにしておこう。
評価:2.8チャバタッケ
「香りさわやか 緑茶」
この紙パック、なんとなく寸胴だなと思ったら1.5リットルだった。 いままで見た紙パックでいちばんでかい。こんなのあるんだ、と感心した。 冷蔵庫に入るギリギリのサイズだった。 これにも葉っぱに滴が。昨日降った雨か、今朝降りた霜がとけたのか。
評価:2.5チャバタッケ
「桃翠園監修 緑茶」
あの桃翠園が監修した緑茶。 「あの」なんて知ってるみたいにいっているが、僕は桃翠園を知らない。 でも、きっと有名なお茶屋さんなんだろうな、と思ってしまうお上手さに一本とられた。 バリューローソンの作戦勝ちだ。
「濃い深み味 おおいたっ茶」
「〜っちゃ」というのは大分の方言だろう。 でもたぶん「おおいたっちゃ」という表現はしないだろうから、これはまごうことなく「おーいお茶」のパロディにちがいあるまい。 よく考えると「大分茶」にちいさい「っ」つまりltuやxtuやztuなどを入れただけなのだが、ぐぐっとお茶の魅力をアップさせているっちゃ。
評価:3.0チャバタッケ
自由なキャンバス
お茶というのは、もう充分に認知されている飲み物なので、ネーミングでの遊び幅が大きいのだろう。 自由な分だけ工夫も必要で、名店のブランドに頼ったり、突飛なダジャレに走ったりしがちだが、覚えてもらったらもう勝ちなのだろう。