――うわ、読みやすいですね。
「基本原理が紙と一緒なんです。パソコンだと後ろから光が出てるけど、これは出てない。タカラの『せんせい』っていうオモチャがあるでしょ?」
――あ、あの、お絵かきが出来るボードですね。
「そう、あれと同じ原理みたい。光ってない。だから目が疲れないんです。暗い所では読めないですけど。文字の大きさも変えられるし、これくらいの重さだ
と、寝っ転がって読めるんでラクですよ。長編小説も大丈夫。」
紙の本って、パッケージで値段決まってたんだな、って実感しました
――米光さんは、『文学フリマ』(同人誌即売イベント)で、『電子書籍部』として参加して、電子書籍を販売されていましたが、そちらのキッカケって何です
か。米光さんって、もともと出版を中心に活動されているワケではないですよね。
「面白そうだから! 僕は今、ゲーム制作、ライター、講師を1/3づつやっているんだけど、その3つが電子書籍で結びつくんですよ。
電子書籍って操作部分やインターフェイスはとてもゲーム的な要素だし、ライターの仕事はそのまま直結するし。
講師やってると『いいこと言ったなー』っていう時があるんですよ。受講生とかもバンバンすごいこと言う。でも、案外、忘れちゃうから、講義中に議事録を
打ってもらって、帰りに電子書籍にして配れると面白いなと思ったんですよ。帰りの電車の中で自分の発言とか読めちゃうとエキサイティングでしょ。
そんなこと考えてる時、講座の生徒が『文学フリマ』に紙の本を出すっていうから、『紙? キンドルで出しなよー、これからは電子書籍だよー!』とか一週間
前ぐらいに言って、キンドル用にして出させたんです。」
――それが今年ですか?
「去年の年末くらいですね。それでおもしろいなーって実感して、電子書籍部を講座内で作ったんです」
――『電子書籍部』って、どれくらいのボリュームのものを、いくらぐらいで売ってたんですか。
「やってみて思ったんですけど…、本って、パッケージで値段決まってたんだな、って実感しましたね。200ページでソフトカバーだからいくらで、ハードカ
バーだからいくらだとか。新人も村上春樹も同じ値段で、中身って関係ないじゃないですか。」
――そう言われればそうですね。
「電子書籍は、そういうのを気にせず、自分で値段決められる。いちばん文字数が多かった作品は、キンドルで800ページ以上ありましたね、200円。」
――や、安いですね。
「値段のほかに、早さっていうのもありますね。『いっくんとはいるちゃんのデート(ハート)』っていうマンガは、うめさんというマンガ家が、文学フリマの
前日に、たまたまワークショップをやっていて、80人の人に、ひとコマずつマンガを描いてもらっていたんです。それを翌日に販売したんですよ。」
――それはガーっとスキャンしたんでしょうか。すごいですね。
「もう値段も時間も関係ないわ、と思って。例えば今すぐ、鳩山前首相が今の気持ちを書いて電子書籍を出せばいいんですよ。3ページで1万円、200部限定。
そうすると200万円ですよ。まあ、鳩山さんは、200万円くらいじゃ、嬉しくないかもしれないけど(笑)。」
――電子書籍の対面販売って、どうやって、やってたんですか?
「いま、実際にやってみましょうか。」 |