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ひらめきの月曜日
 
ドッグフードが美味しそうで、つい


犬を飼ったことがない。
それはたんに、たまたま、最初に拾って飼った動物が猫で、それ以降ずっと猫派なせいだ。
人の家に行ってワンコに触らせてもらっても、どう接したらいいのか、とまどってしまう。どこを触ったら喜ぶのか、嫌がるのか、分からない。ドッグフードが どんなものかもイマイチ知らない。

大塚 幸代



猫めしについては詳しい。昔むかし、80年代、今では考えられないことだけれど、猫はおもに「残りごはん」を食べていたと思う。ウチのミーコも、ごはんに 味噌汁ぶっかけたやつが常食であった。時々、さしみのツマをしゃくしゃく食べていた。「刺身の味がしみていて、おいしいから」という理由らしかった。不憫 だった。
ミーコが他界し、その後、90年代にウチにやってきたチーコは、最初からキャットフードだった。残りものなど与えなかったし、毛づやも良かった。「ペット には、専用のフードを!」という考えは、意外と最近出来上がったものだと思う。

猫めしは、シーチキンのバリエーションのようだ。とにかく魚ベース。高級なものほど、ゼリー状になっているのが特徴。うちのチーコは、値段というよりも、 「毎回、同じやつ出すのはカンベンしてちょうだい」という感じであった。まあ、人間でも、毎食高級フレンチとかよりも、うどんや牛丼もローテーションで食 べたくなるわけだし、そういうことなんだろう。
そのチーコも3年前に他界。ペットフードコーナー自体から、離れて生活していたわけだが…。
新宿の、とある高級デパートのペット用品ショップに行って、ショックを受けた。

何これ、美味しそう……!!

おもにドッグフードだったが、どの製品も、見かけは人間用のものと変わらない、いや人間用のものより高級そうで美味しそうだった。
パッケージをあけて、匂いをかいでみたい。手にとってみたい。
それで、つい、
「買おうかな、食べてみちゃおっかな…」
と思ったのだった。
もちろん、自己責任で。

(「人間は食べないでください」という記述はなかったのだが、「犬用」と書いてあるので、ドコドコ社製というのは、とくに書かないことにした。)

 

紫いも味、豆乳クッキー

とにかく健康のため! シニア犬でも食べられる! というのが売りなのか、これでもか、と成分表示がしてある。「コエンザイムQ10、グルコサミン、コン ドロイチン配合、整腸作用のためのオリゴ糖、脱塩海洋深層水使用」なんだそうだ。100グラム230円。
匂いは普通のクッキーの味がする。すごく美味しそう。
…で、かじってみると、美味しいんだけど、味が、うすい。
砂糖を入れ忘れたクッキーのような、ぼーんやりした味。そして人間用のクッキーより固い。何というか、ソイジョイっぽい固さ。妙に食べごたえはある。
しかしこう…クッキーですよ、というよりは「健康食品」という味が全面に押し出された味だ。ダイエットフードを食べた時のような、健康のためとはいえど、 なんとなく納得いかない感じの後味…。ワンコは、「おいしいけど、何か違うワン」みたいには、感じないのだろうか?

 

チーズ入りソフトクッキー

さとう、バター不使用、ささみが練りこんであるクッキー。50グラム入り280円。
匂いは本当に普通のチーズケーキ風味で、めちゃめちゃ美味しそう。
でも口にいれると、チーズケーキの香りはするんだけど、ササミの味がじんわり広がる。遠く「肉」という文字が見える。少し塩気もする。
今回、買ってきた中でも、いちばんイケそうだったので、ガックリ感が大きかった。これで、人間用の味に作ったソフトクッキーがあったら、普通に飼うんだけ どなあ…。噛みごたえのあるチーズケーキクッキー、いいのになあ。

 

牛肉ソフトクッキー

グルコサミン、ギャバ配合。80グラム350円。
まず、固い。
そして…すいません、ひとかけらでギブアップしました。これはモロ、ドッグフード。周囲はクッキーなんだけど、中身が、カントリーマーム状態でドッグフー ド。鼻にどわーっとあがってくる、独特のあの匂い。普通のドッグフード、食べたことないけど。
水をごくごく、ごくごく飲みました。そしておなかすいてたのに、食欲がなくなりました…。

 

ラム干し肉(やわらか加工)

オーストラリア、クイーンズランド産の羊、部位は肺。無添加、肉オンリー。30グラム680円。結構いいお値段。
スモークされてるのか、なんかこう、めざしみたいな風味がした。
もくもく噛んでいくと、やっとラムの味がする。内臓肉の味もする。
でも、味付けが全くされてないので、人間的には「んー」という味。
ふやかしたり、味付けしたりして、特製カルボナーラなんか作ってみたら面白いかもしれない。
かみしめながら、「人間が肉に塩をかけて食べるようになったの、分かるなあ」と思った。それにしても犬には、塩っけは徹底的にNGらしい。

 

わんこ用ケーキ

ケーキである。犬の身体に悪い成分は入っていない、というのがウリだそう。
冷凍したものを「冷蔵庫で2時間、解凍してください」と言われて買って帰ったのだが、翌日開封したら、ばっくりヒビが入っていた。これが解凍の失敗なの か、私が袋をひっくり返しちゃってたのか、理由は分からなかった。
ワンコが食べる分には問題ないのだろうけど、ガックリきた。やっぱりケーキは味だけでなく「可愛さ」も込みでケーキだ。
食べてみる。う、濃厚。クリームチーズ味という表示だったと思うのだが、バターのような味。この濃厚さに、ワンコはやられてしまうんだろう。ケーキをなめ まくっている姿が頭に浮かんだ。
しかしスポンジが固い。ケーキというより、スコーンという感じだ。
やはり味が薄く、甘みが足りなかった。はちみつかメイプルソースをじゃばっとかけたら、美味しくなったかもしれない。
でも今までのクッキーよりは全然食べやすい、「アリ」な味であった。これなら人間でもイケそうだ。

 

わんこ用清涼飲料(ビール風、ノンアルコール)

果糖、オリゴ糖、酵母エキス、麦芽、カラメル、ビタミンCとE、そしてビーフエキスが入ったビール風飲料。
愛犬と晩酌がしたい! という方向けのものらしい。小瓶で500円。高級輸入ビール並み。
ついでみると、泡が少ない。というか、ほぼ、ない。そして色も薄め。
なめてみると…ものっすごい予想外の味だった。
なんか、うす甘い…。
人は何故、考えたのと全く違う味がすると、心臓がバクバクするんだろう。
なんというか、ビールとスプライトを割って、炭酸がぬけるまで待って、水…。
それにビーフジャーキーを突っこんだような味。
確かにワンコは、コレを喜んでペロペロするだろう。
でもこれを「ビール」風飲料、と呼ぶのは、厳しい気がした。
まあ実際のワンコには、アルコールを飲ませちゃいけないんでしょうけども。

犬が食べたほうがいいと思った

実は「わあ、食べてみたら、人間でも楽しめる味でした!」という結果を予想していたのだが、もう、全然違った。
ドッグフードは、犬の味覚に特化している…。
超当たり前だけども、どんなに美味しそうであっても、人間の口には合わない。
とにかく、ワンコは「肉味」が大好きらしい。ほぼ全部のものに、肉エキスが入っていた。まあ、オオカミの親戚だから仕方ない。

あと、「これはドッグフードだから」という気持ちを、捨て去ることは出来なかったのが、衝撃だった。フラットな気持ちで食べることが出来ないのだ。
どっかの家にお邪魔して、紫いもクッキーをお茶うけに出されたら、「なんか味のうすいクッキーだな〜」としか、思わないのかもしれない。でも、ドッグフー ドだと知っていると、「これ大丈夫かな?」と全力で考えながら食べてしまう。「美味しそう」って目で匂いで思っても、頭が邪魔をする。
ああ、偏見を捨て去れない人間なんだな、と妙に反省してしまった。

あと、今回、探したのに入手出来なかったのだが、「ケンヒカリ」(犬用米)が食べてみたかった…。

ひょっとしてキャットフードのほうが食べやすいのかなあ、基本ツナ缶だし、とふと思う。
でももう食べないと思います。すみません。犬ごはんはワンコに、ネコ缶はネコにやったほうがいいニャー!

(追記:食べきれなかったフードは、犬を飼ってる知人に譲りました。『どうしたのコレ』と訊かれましたが、なかなか答えられませんでした…)。


 
 

 

 
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