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はっけんの水曜日
 
葉っぱも食べられる柏餅を作りたい


これは市販の柏餅。何度試しても食べられません。

昔から子供の日に柏餅を食べるたびに思うのが、「この葉っぱ、実は食べられるんじゃないだろうか」ということである。

いままでの経験から、これが食べられるレベルの硬さではないということはわかっているのだが、とりあえず一口試してし まう。そしてやっぱりダメだなと納得するのが私の年中行事。

しかし、市販の柏餅で使われているような硬い葉っぱではなく、摘みたての若葉を使えば、無理なく丸ごと食べられる柏餅 ができるのではないだろうか。

玉置 豊

編集部注:柏餅の葉は本来食べるためのものではありませんので、みなさんは真似しないでください。



食べられるのかメーカーに聞いてみた

まず手作りの柏餅を作ってみる前にやることがある。柏餅を販売しているメーカーに、葉っぱは食べても大丈夫なもの なのかを確認しなくては。

電話で問い合わせをしたのは、たまたま食べた柏餅の製造元。教えていただいた内容を箇条書きにまとめてみた。

  • 葉っぱは蒸して冷凍保存しておいたものです。
  • 食べても害はないですが、おいしくありません。
  • 食べ物としていれていません。
  • あくまで包装なので、はがして食べてください。
  • 食べるのはおやめください。
  • 食べられるかどうかといわれたら、食べないでください。
  • 木の葉っぱは普通食べませんよね。
確かにおい しくないですね。

いろいろと言葉を変えて聞いてみたのだが、やはり柏餅の葉っぱは、食べるためのものではないらしい。あくまで新芽 が出るまで古い葉が落ちないことから子孫繁栄をイメージさせる縁起物。

どうやら桜餅の葉っぱとか、おにぎりの海苔の仲間ではなく、 チマキを包む笹とか、かまぼこの板に属しているようだ。

しかし、特に毒がある訳でもないようなので、ここから先は自己責任で試してみたいと思う。

 

柏の葉っぱをもらってくる

このミッションで一番難しかったのは、柏の葉っぱの入手である。柏餅用に売ら れているものはあったのだが、それだと市販の柏餅に使われているのとかわらないので、ぜひ柏の木から摘みたい。

そこで身近なところで何人かに聞いてみたところ、母親の知り合いの家に柏の木あるというので、もらいにいくことに した。


これが柏の木。イメージよりもモサモサしている。

やってきたのは専業農家の方の家。訳を話すと、「今が食べごろだから、食べら れるんじゃないかな」という心強い答えが返ってきた。「まあ俺は食べないけど」ともいっていたが。


これはちょっと育ちすぎ。無農薬なので虫がいる。虫は柏の葉っぱを食べるんだなと、味方を得た気分。
このくらいの大きさがちょうどいいかな。

摘ませていただいた柏の若葉は、市販の柏餅の葉っぱに比べれば全然やわらか い。ただ、そのまま食べるにはやはり硬そうだ。

しかし、これなら加熱をすれば十分食べられそうな気もする。食べられるものと食べられないものの境界線を50年く らい昔に戻せば、きっと食べられる側のはず。



「せっかくだからキャベツ持って行きなさい。あとエンドウマメも好きなだけ摘んでっていいぞ。」
「夏ミカン好き?なっているやつ全部 持っていって!」

 

柏餅を手作りする

柏の葉っぱが手に入ったところで、次は柏餅を作る番だ。インターネットで探したレシピ(これ)で作ってみたのだが、和菓子はまったく作ったことがなかったので、つくるための作業工程が予想外。

柏餅なんてこんな機会でもなければ作らないものだが、やってみれば予想よりも簡単で、粘土遊びみたいでおもしろ かった。



もち米の粉じゃなくて、うるち米の粉を練って蒸してから、水溶き片栗粉を加えて練って生地を作る。柏餅っていう名前だけど、餅じゃない。
はじめてにしてはそれっぽくできたような気がする。あんこは市販のものをそのまま使った。

普通はあんこを包んだ生地を蒸してから最後に葉っぱで巻くのだが、葉っぱに火 を通したかったので、巻いた状態で蒸してみる。蒸し器がないのでパスタ用鍋を使用。



ビフォー。
アフター。

蓋をあけると、柏のさわやかな香りがうっすらとした。

葉っぱは蒸し餃子に敷かれたレタスみたいにクタクタになっており、これなら食べられそうだ。

 

葉っぱも食べられる柏餅!

完成した手作りの柏餅、これは温かいまま食べるべきか、冷ましてから食べるべきかで迷ったが、せっかくなのでアツ アツをいただいてみることにした。


初めて作っ たにしては、おいしそうにできたのではないでしょうか。

まず手に持った感じが、市販のものとは葉っぱの硬さが全然違う。これなら大丈 夫だろうとガブリといってみると、葉脈部分はさすがに硬いが、それ以外は違和感なし。桜餅の葉が倍くらい硬くなった感じか。育ちすぎたシソとかエゴマの 葉っぱみたいな食感である。

味も別に苦味とかはなく、新鮮な木の香りが甘い餅のアクセントになっていて、この葉っぱを剥いて食べると、もう物 足りなく感じる自分がいた。でもやっぱり葉脈は硬い。


これなら普通に食べられる硬さだ。うまい。
珍しく苦労が報われてうれしい。

市販の柏餅の葉っぱは食べられないけれど、手作りの柏餅だったら食べられる場 合がある。

無人島へ流れ着いたとしても決して役に立つことのない食の知識だが、実体験で学べたので満足である。

おいしくできたので、葉っぱをくれた方に持っていこう。

蒸したての柏餅 はうまい

それにしてもできたての柏餅ってはじめて食べたけれど、これはうまいものだ。市販の冷たい柏餅もおいしい けれど、アツアツの柏餅は別物。市販の柏餅も食べるときに蒸しなおせば、よりおいしいのではないだろうか。蒸しても葉っぱを食べるのはやめた方がいいと思 うけど。

食べられないと思われていた柏の葉っぱが食べられたのもうれしいが、自分で作った柏餅がおいしいことの方 がうれしかったりする。

年に一回の子供の日くらいは、こういう手間をかけるのもいいかなと思った。


 
 

 

 
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