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ロマンの木曜日
 
人はどれだけ急にウソをつけるのか

人間、ウソをつく機会は決して少なくはない。というのもウソ=悪とは一概には言えないからだ。たとえば仕事で締め切りは5日後なのに前倒しで「3日後です!」と言ってみたり、子供が嫌いなタマネギが入ってるのに「入ってないから!」と言って食べさせてみたり。世の中を円滑にするためにウソが必要な時もある。

では急にウソをつく必要が生じた時、どれだけ人はウソを突き通せるのか?8人の人に3分間ウソチャレンジをしてみました。

(text by 大坪ケムタ



ウソだって本気を込めればホンモノ、ぽい

人はどれだけウソをつけるのか?ふとそう思ったのは今年のエイプリルフール。企業の公式HPはもちろん、ツイッターなんかでここぞとばかりで皆ウソをつく。正直「考えに考えたウソ」を「どうだ面白いだろう」とつく姿は若干ヒくものがあった。(注・ウソのためにインドに行ったりするサイトはこの件とは関係ございません)


気軽に書けるツイッターの登場もあって目につく機会も多かった、気がする。

考えに考えたウソが練られてるのは当たり前。ならば、突発的なウソはどこまでウソを突き通せるのか。そしてそんなウソには何か特徴があるのか。さらにリアルなウソとはどんな特徴があるのか。様々なものが見えてくるのではないか、ウソの真実が!

ということで、mixiやツイッターで「デイリーの取材を受けてくれる人募集。テーマは『子供の頃好きだった本』」とポストし、OKしてくれた人の中から8人の方に話を聞いた。もちろん本の話はどうでもよく、実際に会ったその場で「今から聞く質問に全部ウソで答えてください」とお願いして。サイワイにも怒った人は1人もいなかった。良かった…。


こんな感じで募ってみた。

ウソを話してもらうのは3分間。聞く質問はいくつか考えてきたのだけど、「1.昨日何してましたか」「2.今仕事は何をしてますか」「3.最近どこへデートに行きましたか」。随時こちらも細かくツッこんで質問するので、最初のテーマだけで3分行く人もいれば3つ目まで行く人もいる。

まず一人目のウソ・チャレンジャーはDJイオくん。その名の通りDJとしても活動しているが、最近はネット漫画「クラブDJストーム」の原作者として一部で有名になってきてる。


原作者だから話作るのは上手いぜ!たぶん。

本題を明かすと「僕はウソ得意ですよ!」と豪語するイオくん。とはいえ、質問内容は直前まで教えない。ストップウォッチのスタートと、ICレコーダーの録音ボタンを押してさっそく質問開始!

ちなみに、普段インタビューをまとめた時は必要な部分だけを抜き出して書くのだけど、今回は取材の特徴上細かく書くことにします。ライブ感重視で。


−−じゃあさっそくですが…昨日何してました?

「昨日は…ですね…。昨日…。昨日?(笑)昨日は…あれ昨日俺何してたんだろう。昨日は読書してましたよ!」

−−何の本ですか?

「昨日はですね。あのーー、昔好きだった漫画を読み返してました」

−−何の漫画です?

「『(ドラゴンクエスト)ダイの大冒険』です。小さいころは好きだったんで」

−−あー、その漫画僕あんまり知らないんですけど、その中で印象的なキャラは誰?

「やっぱりポップですね!ポップはあのー、戦士なんですよ。はい。すっげえ才能あるんですけど、性格がちょっと悪くて仲間についていけなくて落ちぶれちゃう感じで、ポップは」

−−では漫画以外は何を?

「えー…うーん…昨日は…うおー!(苦笑)あとは二日酔いで寝てました!そう、寝ながら漫画読んでて。昨日は日曜日でしたっけ?寝ながら漫画読んで一日が終わったって感じで」

−−何で二日酔いだったんですか?

「えーっと…誰にも花見に誘われなかったんですよ。それで家で『大五郎』を飲んで。割るの嫌いなんでガブ飲みして飲んで(笑)。つまみは特にいらないんで僕は」

−−どのくらい飲んだんですか?

「全部飲むとキツいんで、1リットルくらいですね。2リットルの大五郎なんで」

−−仕事は今日大丈夫でしたか?

「今日は仕事してる不利してたんですよ」

−−あれ、何の仕事してたっけ?

「実は漫画家を目指してまして。ワンピース的な漫画を」

−−今書いてる漫画のタイトルは?
「『ぶちゃむくれ八犬伝』という漫画を(笑)」


これで3分!「いやー、ウソつけないもんですね!圧迫面接みたいでしたよ」と言うイオくん。全ては昨日起きたことではないし、「ポップは魔法使い」「大五郎1リットルは超ハード」「『ぶちゃむくれ八犬伝』なんて漫画はない」といったウソを散りばめつつ、全体的には「ありそうな一日」だ。

おそらく「ウソをついて」とお願いすると「リアル系のウソ」か「ホラ吹き系のウソ」か、どちらかに分かれそうな気がする。やる前から何となく予想していたけれど、イオくんのはリアル系のウソ。

とはいえ、あらためて書き起こしても質問に対する動揺が伝わってくる。やはり「ウソで答えるぞ!」と分かっていても難しいもんなのか。

DJに続いて、今度はステージに立って喋ったりもする人にウソを聞いてみた。テクノ歌手のテクマ!さんだ。


日本のデビットボウイですよ!

15年ちかくソロアーティストとして活動しているテクマ!さん。当然ライブ中にはMCなどをやるわけだけども、バンドと違って他人に話を振るわけにもいかない。それだけに話術は自然と鍛えられるはず。もちろんウソも多少はあるに違いない。むしろスパイス!


−−昨日は何してました?

「昨日はですね。昨日はあれですね、女の子の家を。お昼と夜で違う所だったんですけどね」

−−おおー!何人くらいそういう女性いらっしゃるんですか?

「今は6,7人くらいいるのかな?すぐに(行ける所)っていうと」

−−では前半はどんな子と一緒だったんですか?

「前半は音楽関係で知り合ったんですけど、(椎名)林檎ちゃんチルドレンみたいな子いるじゃないですか。ちょっとアングラ的なのが好きで、さらに彼女はひどい目に遭いたいみたいな願望があるみたいで」

−−ハハハ!それでテクマ!さんと(笑)。

「けっこう強引なくらいの方が逆に喜ぶ、みたいな。僕はどこまでエスカレートしていいか分からないみたいな状態で怖いんですけどね」

−−では後半、夜に会った子は?

「後半はね…あのねえ、大学の時に若干知り合いだった子なんですけど、10年ぶりくらいに会ったら良い感じにOLになってて、OLってこんな感じだと喜ぶんじゃないかな?と思ってそのとおりに動いてみたら、うまくいっちゃったー!みたいな。大人しめの感じなんだけど、そうかそうか!と」

−−ちなみに定番のデートコースって?

「定番ねえ、意外と食べ物屋さん知ってるところあるんで行ったりしますけどね。この辺だと羊料理の『ひつじや』ってのが代々木にあるんでそことか、ギャップで面白がらせるなら大久保の方にいってカムジャタンとか」

−−若い女の子が行かないような所も

「そうそう。あとは横浜とか」

−−わりとベタな。

「ベタなね。横浜だと大桟橋とかいっちゃいますよ。普通に歩いて、(相手に)話をさせるように」

−−そういえばテクマ!さんって今お仕事は何してるんでしたっけ?

「あのー、お友達でアダルトサイト作ってる友達がいて、そのサクラみたいなのをやってたら儲かっちゃったみたいで、表向きまともな会社を作ろうと。それで着信メロディとかドンキホーテでかかってるような曲を作ったり、そういうお手伝いを」


おお〜、さすがそれっぽい!細かなディティールのリアリティもありつつ、一日に女の子と遊んだというのはある意味ロックスター風。もちろん昨日の話ではないけれど「6割くらい過去の事実かな(笑)」だそう。ちなみに終盤の曲を作る話というのも「実際にやりそうになった」のだとか。

ウソインタビューのあと、お茶を飲みながらテクマ!さんがこんな言葉をこぼした。

「ウソをつくっていうのは歌詞を作る作業にも似てますよね。歌詞の中に『気持ち』と『シチュエーション』を入れる場合、シチュエーションは架空でも、気持ちに本当のことを用意しておくと、自分がアガれるんですよ」

なるほど!たとえウソをつくのにしろ、気持ちが本物だと心情的なリアリティがそこにはある。今回は3分だけど長くウソをつかなければいけない人、ここがポイント!


嘘のテクニック、学ばせていただきました!

リアルな嘘の付き方・1

設定はウソでも気持ちが本気だと

ウソに説得力が!


さて、人は急にウソをつけと言われたらどんな事を言うのか?検証の旅は続きます。


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