ずっと気になっていたんだがや。 東海道新幹線で大阪方面から東京に向かうとき、名古屋に着くちょっと手前で、進行方向左側に一瞬だけ見える駅が。
一見ふつうのホームが2つ、そしてその両側に線路が4本。でも、ホームの上には屋根も階段も何もなくて、人が立っているのすら見たことない。
あの駅はなんなのか。営業しているのか。どうして屋根も何もなくて人もいないのか。それが知りたくて、行ってきました。
(萩原 雅紀)
気になる駅の名は西枇杷島
新幹線の窓から目撃した、だいたいの位置を元に地図で調べると、どうやら名鉄線の「西枇杷島駅」というらしい。営業してた!あまりの何もなさに、実は空襲で焼けたまま放置されてるのかも、というのも僕の予想の中にはありました。
そこで、実際に行ってみることにしたのですが、名鉄の名古屋駅で路線検索すると次の電車は30分後。目の前のホームからは各方面に行く電車が2、3分おきにバンバン発車しているのに、3つ先の駅に行く電車が30分来ないなんて!ドーナツだ、ドーナツ食べたい(ドーナツ化現象のことを考えるといつもドーナツ食べたくなります、というかこれはドーナツ化現象と関係あるのか)。
もし携帯で路線検索ができなかったら、もうどれに乗ったらいいのか分からなくて、きっとてきとうな電車に乗ってしまって、どこかドーナツの外側の駅まで運ばれてたと思います。名鉄名古屋駅、一見さんにはレベル高すぎ。
ベンチでうとうとしながら待って、ようやくやってきた各駅停車に乗車。30分待って、乗ったら5分で西枇杷島駅に到着。とうとう、あの気になっていた駅に降り立ちました!
これが西枇杷島駅だ
いやー、僕は新幹線から見るたびに気になっていた駅に来られて、この時点でもう大満足なのですが、皆さんどうですか?なんか不思議な感じしません?
一見、よくある通過待ちができる駅のルックスなのですが、ホームが短く、ホームが微妙に低く、ホーム両端がやけに細く、ホームに屋根がなく、ホームにベンチもなく、そしてホームに誰もいない。パッと見でもこれだけの不思議ポイントを見つけてしまいました。
駅を挟んで反対側にも踏切があるようなので、ぐるっと一周まわっていろいろ観察してみました。
写真を撮っていたら後ろをちょうど新幹線が通って、あーそうそう、あそこから見て気になっていたんだ、そしていまそこにいるのか、と、なんだか不思議な気分に。
駅の周りには特に商店街のようなものもなく、ここがあの名古屋からたった3駅の場所か、というような緩やかな時間が流れています。ここにいたら長生きできそう。
ただ線路の上だけは時間の流れが激しく、名古屋と岐阜を結ぶ特急などが頻繁に通過して行きます。
ホーム以外に見るものもないので、早々に帰ろうと切符を買って誰もいないホームに上がろうとしたら、「ホームに誰もいない」理由が分かってしまいました。
そうか、電車は30分に1本しか来ないし、ホームは狭いし、屋根もベンチもないので、停まる電車が来ない時間帯はホームを閉鎖しているようなのです。そりゃ新幹線から人が見えないはずだわー。
もっとよくこの駅の構造を見ると、すぐ西側は新幹線や東海道線が通っていて、東側は別々の方向に分かれているデルタ線になっているので、これ以上ホームを延ばすことも難しそう。幅も狭いので屋根もつけにくいだろうし、きっとこの先も、この不思議な雰囲気を持ったままここにありつづけるのでしょう。
というより、何とかこのままでいてほしい。
待合室でしばらく待っていると、名古屋に向かう各駅停車が到着するようで、改札の先の遮断機が上がりました。
こういったシステム上、この駅のホーム上を味わえる時間は限られているので、すぐさまホームへ。おお、これが貴重な西枇杷島駅ホームか!ひさびさに独房から運動場に出された囚人みたいな気分でホームを踏みしめます。
しかし、もはや駅の手前まで迫っていた各駅停車がすぐ到着。もしこれに乗らないと、発車したあとまたホームから降ろされて30分待つことになるので、後ろ髪引かれながらも乗り込みました。あっという間の西枇杷島駅体験でした。
気になる場所には行くべき
前から新幹線に乗るたびに気になっていた場所なので、単なる駅訪問とはいえ個人的な満足度はすごく高かったです。
これでもう名古屋駅前後でそわそわしなくて済むと思うと、こういう気になった場所には必ず行ってみなければと思います。日本中に無数にあるんですけどね。