東北の春は遅い。ほんとイライラするくらいやってこないのだ。おいそこの樹、いつまで枯れてんだ! こうなったら、無理やり緑を増やして春になった気分を味わってしまおうと、スーパーで春の素を買ってきました。
(櫻田 智也)
三寒四温
花見もとっくに済んだ地域の方にはなんともピンとこない話でしょうが、四月に入り、岩手でもやっと春の気配を感じるようになりました。
気配はすれども姿はみえず。 あーあ、こねーなー春!
考えた結果、爪楊枝を貼りつけて、それで土に挿してしまうことにした。 つまりこういうイメージである。
生い茂ってるよ! 雑草が!! 冬の間にずいぶん寂しい見た目になったアイビー(土に虫がわいたので寒さで全滅させてやろうと外にだしたら木のほうが枯れた)もずいぶんと嬉しそうだ。
内職
昼は会社、夜は内職と、暇のない日々がつづいた。
そんな不安をよぎらせつつ、黙々と作業をつづける。だんだんと肩や背中が張ってくるが、妻に「ちょっと揉んで」とは頼めない。なにしろバランに爪楊枝をつける作業は世間一般の分類では道楽なのだ。
何枚もテープを貼っていくうちに、なるほどバランにも裏表があるのかと、今まで知らなかったことに気づく。貼りやすいほうが裏だな、たぶん。 こうして世の中にまたひとり、とくに役に立たない職人が誕生した。
それにしても、働けど、働けど、だ。
植えます
久しぶりに瓶底メガネをかけたらものすごく気分が悪くなった。くらくらする。
そんなわけでコツコツつくった植葉キットをさっそく土に植え込み、春の気分にひたろう。
川の流れが太陽の光をうつして美しい。陽気は春のそれなのだが、いかんせん地味な風景だ。
よし、このあたりを春にしよう。
ピクニック日和
せっかくおにぎりを持ってきたので、緑に囲まれてぱくつきたい。 葉っぱのボリュームを増やすべく植え込みをつづける。
カメラマンが川の対岸にいってしまってちょっと心細いが、変なおじさん……じゃなかった春の使者は、その間もひとり黙々と緑を増やしていた。
家で準備してきたものに加え、その場で追加した分もすべて植え込み、その結果、
250枚を超えるバランを植え込んだわりには、ずいぶん小ぢんまりとした画に。
周りにスペースが際限なくあるため、いくら植えても「こじんまり」感が拭えない。花壇とかでやるべきだったろうか。
ボリューム的にこの5倍くらいほしいと感じたが、それこそキリがないので、ささやかな緑のなか、ひと足先に春の気分を味わおう。
春云々ではなく、単純に「身体を動かしたあと」ということで、おにぎりが美味しい。 そして緑云々ではなく、おもてで遊んでも寒くないという事実に、間違いのない春の接近を感じとったのだった。
いやあ、春ですよ。やっと。 曲がった背筋をピンと伸ばして、おひさまに、敬礼!
たしかな春 (みえないくらい遠くに春の使者)