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フェティッシュの火曜日
 
バランで春気分


東北の春は遅い。ほんとイライラするくらいやってこないのだ。おいそこの樹、いつまで枯れてんだ! 
こうなったら、無理やり緑を増やして春になった気分を味わってしまおうと、スーパーで春の素を買ってきました。

櫻田 智也



三寒四温

花見もとっくに済んだ地域の方にはなんともピンとこない話でしょうが、四月に入り、岩手でもやっと春の気配を感じるようになりました。


天気の良い日は岩手山が美しい

それでも、油断してると雪が降ったりして、なかなか冬はしつこいのです。

4月3日!

気配はすれども姿はみえず。
あーあ、こねーなー春!


4月9日のぼんやりした風景

オイ、いつまで寝てるんだ! そう叫びたくなるようなぼんやりした情景。これをきっぱり春にすべく、春の素を買ってきた。

春の素1号

春がぎっしり

春はおおよそ10枚で1円だった。むかし母がやっていた、ホタテ養殖用の網カゴをつくる内職の賃金がそういう単位だったとおもう。

立春

そう、このバランをおもてに植えて、春の気分を味わおうとおもうのだ。

でもペラペラなんです

だが、こんな薄くて軽いものをどうやって植えることができるだろう。

こうだな

考えた結果、爪楊枝を貼りつけて、それで土に挿してしまうことにした。
つまりこういうイメージである。


これが
こう!

生い茂ってるよ! 雑草が!!
冬の間にずいぶん寂しい見た目になったアイビー(土に虫がわいたので寒さで全滅させてやろうと外にだしたら木のほうが枯れた)もずいぶんと嬉しそうだ。


いえ、迷惑ですけど

内職

昼は会社、夜は内職と、暇のない日々がつづいた。


働けど、

働けど、

わが暮らし楽にならず

もしかしてワシ、騙されちょる?

そんな不安をよぎらせつつ、黙々と作業をつづける。だんだんと肩や背中が張ってくるが、妻に「ちょっと揉んで」とは頼めない。なにしろバランに爪楊枝をつける作業は世間一般の分類では道楽なのだ。


ずっと馬鹿にされて生きてきました

何枚もテープを貼っていくうちに、なるほどバランにも裏表があるのかと、今まで知らなかったことに気づく。貼りやすいほうが裏だな、たぶん。 こうして世の中にまたひとり、とくに役に立たない職人が誕生した。

それにしても、働けど、働けど、だ。


じっと手を見る

ぜんぜん見えない!

植えます

久しぶりに瓶底メガネをかけたらものすごく気分が悪くなった。くらくらする。

そんなわけでコツコツつくった植葉キットをさっそく土に植え込み、春の気分にひたろう。


天気は良いが緑はみえず

川の流れが太陽の光をうつして美しい。陽気は春のそれなのだが、いかんせん地味な風景だ。


まだ雪も残る

よし、このあたりを春にしよう。


小さな春、はじめました

準備したバランを1枚ずつ植え込んでいく。これがまた面白いように挿さるのだ。

こんにちは、春の使者です

雪の下から生える元気な葉っぱたち

この日、かなり強い風がふいていたのだが、大地にしっかりと根づいたバランの葉は1枚たりとも飛ばされることがない。

風に揺れる草原

ピクニック日和

せっかくおにぎりを持ってきたので、緑に囲まれてぱくつきたい。
葉っぱのボリュームを増やすべく植え込みをつづける。


向こう岸に春の使者

急げ、不法投棄と間違われるまえに!

カメラマンが川の対岸にいってしまってちょっと心細いが、変なおじさん……じゃなかった春の使者は、その間もひとり黙々と緑を増やしていた。

家で準備してきたものに加え、その場で追加した分もすべて植え込み、その結果、


超局地的な春到来

250枚を超えるバランを植え込んだわりには、ずいぶん小ぢんまりとした画に。


周りが広すぎた

周りにスペースが際限なくあるため、いくら植えても「こじんまり」感が拭えない。花壇とかでやるべきだったろうか。

ボリューム的にこの5倍くらいほしいと感じたが、それこそキリがないので、ささやかな緑のなか、ひと足先に春の気分を味わおう。


おにぎりを食べる

春云々ではなく、単純に「身体を動かしたあと」ということで、おにぎりが美味しい。
そして緑云々ではなく、おもてで遊んでも寒くないという事実に、間違いのない春の接近を感じとったのだった。


そして速やかに草むしりをして撤収

いやあ、春ですよ。やっと。
曲がった背筋をピンと伸ばして、おひさまに、敬礼!

たしかな春
(みえないくらい遠くに春の使者)


 

 
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